日本に暮らす外国人と防災の課題
日本には300万人以上の外国人が暮らしており、社会の大切な一員として活躍しています。しかし、日本は地震、台風、大雨、津波などの自然災害が多い国です。日本人でさえ災害時に適切な行動をとることが難しい状況の中、言語の壁や文化の違いによって外国人が正確な情報を得られず、適切な避難行動がとれないケースが多くあります。2024年の能登半島地震でも、多くの外国人が被災し、支援の必要性が浮き彫りになりました。
現在、各自治体や民間団体が外国人向けの防災対策を進めていますが、まだ課題も多く、さらなる改善が求められています。
災害時外国人支援情報コーディネーターの役割と育成
災害が発生すると、行政や自治体は日本語で情報を発信します。しかし、外国人の中には日本語が理解できない人も多く、必要な情報を得ることが難しい状況があります。そこで、総務省が進めているのが「災害時外国人支援情報コーディネーター」の養成です。このコーディネーターは、外国人被災者の状況を把握し、行政が提供する情報を整理して多言語で伝える役割を担います。
- 多言語での情報発信:避難所の場所や支援物資の配布状況を英語、中国語、スペイン語などで伝える。
- 外国人被災者のニーズ把握:食事のアレルギーや宗教上の食事制限などに対応できるようにする。
- 自治体や国際交流団体との連携:外国人の意見を行政に伝え、より適切な支援を行う。
この制度により、災害時の外国人支援がスムーズに行われることが期待されています。
災害時通訳ボランティアの重要性
災害時には、正確な情報が命を守るカギとなります。しかし、外国人が避難所や行政機関で適切な対応を受けるには、通訳が必要です。愛知県岡崎市では「災害時通訳ボランティア」を育成し、避難所での通訳や情報翻訳を担当する体制を整えています。
- 通訳ボランティアの役割:避難所での案内、行政手続きのサポート、医療機関での通訳など。
- 対応言語:英語、中国語、ポルトガル語、ベトナム語など、多くの外国人に対応できる体制。
- 平時の訓練の実施:実際の災害時に慌てず対応できるよう、防災訓練に参加し、通訳の練習を行う。
このような取り組みが広がることで、外国人も安心して避難できる環境が整っていきます。
多言語での防災情報提供
言葉が分からないと、避難指示や支援情報を得ることが難しくなります。そこで、多言語での防災情報提供の強化が求められています。
- 小樽市の取り組み:外国人観光客が多い北海道小樽市では、避難誘導を行うための多言語フリップボードを作成。英語、中国語、韓国語、ロシア語、タイ語に対応し、視覚的にも分かりやすく表示。
- アプリの活用:「Safety tips」という防災アプリを活用し、緊急地震速報や津波警報などを15言語で通知。
このような多言語対応の強化により、外国人がより安全に行動できる環境が整備されつつあります。
災害多言語支援センターの設置
大規模な災害が発生すると、被災地では混乱が生じ、情報が正しく伝わらないことがあります。そこで、多くの自治体や国際交流協会が連携し、「災害多言語支援センター」を設置しています。
- センターの役割:被災地の行政機関が発信する情報を翻訳し、外国人向けに提供。
- 避難所の巡回:外国人被災者が適切な支援を受けられているか確認し、必要なサポートを行う。
- SNSを活用した情報発信:リアルタイムで多言語情報を発信し、災害時の混乱を防ぐ。
このようなセンターの設置により、外国人も迅速に正しい情報を得ることができます。
やさしい日本語の活用
外国人の中には、日本語を少し理解できるが、難しい言葉は分からないという人も多くいます。そのため、「やさしい日本語」を活用した防災情報提供が進められています。
- 長崎県佐世保市の取り組み:防災行政無線で「避難」ではなく「安全なところへ逃げてください」と分かりやすい言葉で呼びかけ。
- 災害時ポスターやチラシ:「水が出ない」ではなく「トイレが使えません」など具体的な表現に。
やさしい日本語を活用することで、外国人だけでなく、日本人の高齢者や子どもにも分かりやすい防災情報を提供できます。
外国人向け防災ハンドブックの作成
沖縄県では、外国人向けに災害時の行動マニュアルをまとめた「防災ハンドブック」を作成し、多言語で提供しています。
- 主な内容:地震や台風が発生した際の避難方法、避難所でのルール、支援物資の受け取り方など。
- 多言語対応:英語、中国語、ポルトガル語など、県内に多い外国人の言語に対応。
このようなハンドブックが各自治体で整備されれば、外国人も安心して生活できる環境が整っていきます。
今後の課題と展望
外国人への防災対策を進めるために、以下のポイントが今後の課題として挙げられます。
- 多言語対応の強化:より多くの言語で防災情報を提供し、外国人が必要な情報を取得しやすくする。
- 地域コミュニティとの連携:普段から外国人と地域住民が交流し、災害時に助け合える関係を築く。
- 防災教育の推進:外国人向けの防災訓練を実施し、災害時の適切な行動を学ぶ機会を増やす。
このような取り組みを進めることで、外国人がより安心して生活できる日本の防災環境を整えていくことが求められています。
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