都会でタヌキが急増?シチズンラボが明かす生態の謎
近年、東京都内のさまざまな場所でタヌキの目撃情報が増えています。タヌキといえば、森や山などの自然環境に生息するイメージが強いですが、なぜ都会に適応できるのでしょうか?今回の「午後LIVE ニュースーン」では、都市部に生息するタヌキの謎に迫ります。
NHKでは、研究者と市民が協力して科学的に生態を解明する「NHKシチズンラボ」というプロジェクトを進めています。この3年間で約500件ものタヌキの目撃情報が寄せられ、都内のさまざまな場所で生息していることが確認されています。
タヌキが都会で生き延びるためにどのような工夫をしているのか、自然のタヌキとどのような違いがあるのか、最新の研究結果とともに詳しく見ていきます。
タヌキの生態と都会での適応戦略
東京農工大学の准教授・金子弥生さんによると、タヌキは本来、森や草むらなどの自然環境で暮らす動物です。一般的に、タヌキは自分で巣穴を掘ることはあまりなく、代わりにアナグマが作った巣穴を間借りして生活することが多いとされています。
アナグマとタヌキはお互いの活動時間をずらすことで共存しています。アナグマが活動する時間帯にはタヌキは巣穴で休み、タヌキが活動する時間帯にはアナグマが休む、という形でうまく住み分けています。
しかし、都会にはアナグマがほとんどいません。それでは、都会のタヌキはどこで寝泊まりしているのでしょうか?
東京農工大学大学院修士2年の藤田翔伍さんが、武蔵野市で調査を行いました。公園に設置されたカメラには、タヌキとネコが映り込んでいました。この映像を分析した結果、タヌキとネコが時間帯をずらしながら同じ場所を利用している可能性があることが分かりました。
さらに、都会のタヌキは側溝や排水溝などの人工物を巣穴代わりにしていることが判明しました。タヌキは、住みやすい場所を見つけると、その近くに「ためフン」(決まった場所で排泄する習性)を行うことが多いです。このためフンの場所は、タヌキにとっての「情報掲示板」のような役割を果たしていると考えられています。
このように、タヌキは都会の環境に適応しながら、限られた空間の中でうまく生き延びています。
タヌキのフンから分かる驚きの食生活
タヌキの食生活についても、研究が進んでいます。浦和商業高校の非常勤講師・小林邦夫さんは、タヌキの行動を調査するために自費で7台のカメラを設置し、タヌキの動きを追跡しています。また、大学教授と共同でタヌキのフンの解析も行っています。
その結果、都会のタヌキも基本的には自然のものを食べていることが分かりました。フンの中から発見されたのは、以下のような食べ物です。
- 果物(柿、イチジクなど)
- 木の実(どんぐり、クルミなど)
- 小型の動物(昆虫やカエルなど)
つまり、都会のタヌキも野生の食生活を維持していることが分かります。
しかし、一部のタヌキは人間の食べ物にも興味を示すことがあります。特に、ゴミ捨て場や飲食店周辺に現れるタヌキが確認されており、人間の生活圏に深く入り込んでいることが分かっています。
タヌキへの餌付けは絶対NG!
小林さんは「タヌキへの餌付けは絶対にしないでほしい」と注意を呼びかけています。
タヌキに餌付けをすると、次のような問題が発生します。
- 人間の食べ物を当てにするようになり、本来の狩猟・採集能力が低下する
- タヌキが人間の近くに頻繁に出没するようになり、交通事故の危険が増える
- 感染症のリスクが高まる
タヌキは本来、人間の手を借りずに自然の中で生きていく動物です。そのため、適切な距離を保つことが重要です。
もし都会でタヌキを見かけたら?
都会でタヌキを見かけた場合、以下の点に注意しましょう。
- 近づかない・触らない
タヌキは可愛らしい見た目をしていますが、感染症を持っている可能性があります。むやみに触るのはやめましょう。 - 餌を与えない
タヌキが人間の食べ物に依存するようになると、自然界での生存能力が低下してしまいます。 - 困った場合は自治体に相談
頻繁にタヌキが現れる、巣穴を見つけた、怪我をしているタヌキを見かけたなどの場合は、自治体や専門機関に相談しましょう。
都会のタヌキは、慎重に行動しながら人間の生活と共存しています。私たちも適切な対応を心掛け、タヌキとの良好な関係を築いていきましょう。
まとめ
近年、都会でのタヌキの目撃情報が増えています。研究者と市民が協力するNHKシチズンラボの調査によって、タヌキは人工物を利用しながら生き延びていることが明らかになってきました。
また、タヌキの食生活も自然のものが中心であることが分かりましたが、人間の食べ物に頼ることが増えると生態系に影響を及ぼす可能性があります。
タヌキは、都市部の環境にも適応しながら暮らしている野生動物です。人間ができることは、餌付けをせず、適切な距離を保ち、共存できる環境を整えていくことです。
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