誰一人取り残さない公教育を目指して〜玖珠町の新しい学校の挑戦〜
2025年2月9日(日)8:25~8:50にNHK総合で放送される「Dearにっぽん もういちど、学校 ~大分・玖珠町~」では、大分県玖珠町の山あいに開校した新しい公立小中一貫校が特集されます。ここは、従来の学校とは異なる教育モデルを採用し、不登校や登校しぶりを経験した子どもたちが安心して学べる場を提供しています。校則や宿題がなく、決まった行事もないこの学校では、「なぜ学ぶのか?」「どうすれば自分らしく生きられるのか?」といった根本的な問いに向き合いながら、新しい学校の在り方を模索しています。番組では、この学校に通う子どもたちの日常や、教育現場の挑戦を1年間にわたって取材。公教育の新しい形がどのように生まれ、どのような影響をもたらしているのかを深掘りします。
もういちど、学校 〜大分・玖珠町〜
大分県玖珠町にあるくす若草小中学校は、不登校や学校への行き渋りを経験した子どもたちが通う学校です。従来の学校とは異なり、校則や宿題、決まった行事がなく、生徒一人ひとりのペースを大切にしながら新しい学校の形を模索しているのが特徴です。
この学校の教育方針は、「無理に学校に行かせるのではなく、子どもたちが安心して過ごせる場所を提供すること」にあります。日々の授業や学校生活も、決まったカリキュラムがあるわけではなく、生徒の興味や意欲を尊重しながら柔軟に組み立てられるのが特徴です。
- 小学6年生の男子児童、学校に行きたい気持ちと不安の間で揺れる
ある日、小学6年生の男子児童が、登校することに対して不安を感じるようになりました。- 母親が車で学校まで送ったものの、車から降りることができなかった
- 教師と親、児童が一緒に面談を行い、本人の気持ちに寄り添う対応を模索
- 焦らず無理をさせない方針のもと、本人のペースで少しずつ学校と関わる機会を増やしていくことに
学校に行きたいという気持ちと、不安の間で揺れる子どもたち。くす若草小中学校では、無理に「学校に来させる」ことはせず、子どもが自分で一歩を踏み出せる環境を整えることに重点を置いています。
- 夏祭りの企画、学校に来られなかった子どもたちも参加
夏には、生徒たちが学校で夏祭りを企画し、流しそうめんなどを楽しみました。- 普段ほとんど登校しなかった子どもたちも、このイベントには参加
- 「勉強」ではなく「楽しいこと」から学校とのつながりを感じられる機会に
- 先生たちは、生徒たちがどんな形でも学校と関わることを大切にしている
「学校に来なければならない」という義務感ではなく、「ここに来ると楽しいことがある」「自分の居場所がある」と感じられることが、子どもたちの一歩につながるのかもしれません。
- 秋、不登校だった男子児童が再び通学するように
夏祭りをきっかけに、学校に足を運ぶようになった子どももいました。秋には、以前不登校だった男子児童が、少しずつ学校に通い始めるようになりました。- 教室に入るのではなく、まずは学校の敷地内に来ることからスタート
- 無理に授業に参加せず、自分の好きなことから学校生活に馴染んでいく
- 仲間と過ごす時間を増やしながら、少しずつ「学校にいること」が当たり前になっていく
学校に戻る過程は、一人ひとり異なるため、子どもの気持ちを尊重しながら、本人が「行きたい」と思える環境を作ることが何よりも大切です。
- 「学校は必要か?」生徒たちが議論
くす若草小中学校では、ある日、生徒たちが「学校は必要か?」というテーマで話し合いをしました。- 「学校はなくても生きていける」「でも、人と関わる場所は必要」など、さまざまな意見が飛び交う
- 「決められたカリキュラムがなくても、自分のやりたいことを学べる場はあってもいい」との声も
- 先生たちも「子どもが学びたいと思う環境を作ることが大切」と改めて感じた
「学校」という概念そのものを見つめ直し、子どもたちが自分らしく学べる環境を追求していくこと。それが、この学校のあり方なのかもしれません。
くす若草小中学校では、「学校に行くことがすべてではない」「それぞれのペースで成長できる場を作る」ことを大切にしながら、日々手探りで新しい学校づくりを続けています。
玖珠町立くす若草小中学校とは?
大分県玖珠町の山間部に位置する「玖珠町立くす若草小中学校」は、2024年4月に「玖珠町立学びの多様化学校」として開校しました。その後、子どもたちの意見を取り入れ、2024年12月に現在の校名に変更されました。全国的にも珍しいこの学校は、小学1年生から中学3年生までが通う義務教育学校で、従来の学校とは異なるユニークな教育スタイルを実践しています。
- 在籍する児童生徒数:22名(全員が不登校や登校しぶりを経験)
- 教員数:10名(一般の学校から赴任した先生が中心)
- 特徴的な点:校則なし、宿題なし、決まった行事なし
- 登校率:開校以来、平均8割(不登校経験者にとって高い数値)
この学校が設立された背景には、全国的に増加する不登校児童・生徒の課題があります。文部科学省の調査によると、日本の不登校児童生徒数は年々増加しており、従来の学校の枠組みでは対応しきれないケースも少なくありません。玖珠町は、この問題に対し、新たな学びの場を創設することで、子どもたち一人ひとりに合った教育を提供する道を選びました。
柔軟な学習環境と独自の教育スタイル
玖珠町立くす若草小中学校は、ドイツ発祥の「イエナプラン教育」を参考にしながら、日本の教育環境に合わせた独自のカリキュラムを構築しています。この学校では、以下のような教育方針が実践されています。
- 自由な通学スタイル
登校時間は9時半と比較的遅めに設定されており、子どもたちは自分のペースで通学できます。また、体調や心理的な負担を考慮し、オンラインでの授業参加も可能にしています。これにより、「毎日学校に行かなければならない」というプレッシャーを軽減し、無理のない学習環境を整えています。 - 個別の学びを重視
生徒一人ひとりの興味関心や学習の進度に応じた授業が行われます。デジタル教材「スタディサプリ」などを活用し、従来の一斉授業ではなく、個々のペースに合わせた学びを実践。教員はサポート役となり、子どもたちの学びをサポートします。 - 探究活動を中心にした授業
「マイ探究活動」では、生徒自身が関心のあるテーマを自由に研究し、それを深掘りしていきます。また、「ワールド探究活動」では、全員が共通のテーマに取り組み、協力しながら知識を深める仕組みを取り入れています。 - 異年齢学級による学びの多様化
1~9年生を3学年ごとのグループに分け、縦割り学級として運営しています。異年齢の子どもたちが一緒に学ぶことで、年下の子は年上の子から学び、年上の子は年下の子を助けることで成長します。 - 「対話」を重視した教育
朝と夕方には「サークル対話」の時間が設けられています。ここでは、子どもたちが自由に意見を述べ、自分の考えを深めるとともに、他者の意見を尊重する姿勢を学びます。この取り組みにより、自己表現力や対人関係のスキルが向上しているといいます。
子どもたちの変化と成果
この学校に通い始めた子どもたちには、さまざまな変化が見られています。
- 昨年まで100日以上欠席していた生徒が、現在は一度も欠席せずに通っている
- 以前は対人関係が苦手だった子どもが、サークル対話を通じて積極的にコミュニケーションをとるようになった
- 学校に行くこと自体がストレスだった子どもが、楽しそうに学習に取り組む姿が見られるようになった
また、開校からわずか1年で、全国からの入学希望の問い合わせが増加しており、この教育モデルが他地域にも広がる可能性を示しています。
番組の見どころ
「Dearにっぽん もういちど、学校」では、この学校の1年間を追い、不登校だった子どもたちがどのように変わっていくのかを記録しています。特に注目すべき点は、以下の通りです。
- 子どもたちが考える「学ぶ意味」
かけ算を覚える必要はあるのか?どうやって人間関係を作ればいいのか?そもそも学校に通う意味は何か?といった根本的な問いに、子どもたちがどのように向き合っているのかが描かれます。 - 先生たちの奮闘
従来の学校教育とはまったく異なる環境で、先生たちはどのように子どもたちを支えているのか?従来の「教える側」としての役割を超え、一緒に学びを作る姿が映し出されます。 - 新しい公教育の可能性
不登校という課題に対し、玖珠町が提示したこの新しい学校モデルが、今後どのように発展していくのか?公教育の未来を考えるきっかけとなる内容が期待されます。
まとめ
玖珠町立くす若草小中学校は、誰一人取り残さない教育を目指し、新たな学びの形を模索しています。この取り組みが今後どのように広がっていくのか、放送を通じてぜひ注目してください。
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