新ジャポニズム 第1集 MANGA わたしを解き放つ物語|2025年1月5日放送
日本のマンガはなぜ世界中で愛されているのでしょうか?日本独自の文化から生まれたマンガは、ただの娯楽ではなく、時に残酷であり、時に熱すぎるほどの情熱を持ち、さらにはタブーを超える表現によって多くの人々を魅了してきました。その影響は150年以上も前に起こった「ジャポニズム」と重なる部分があり、日本の芸術が世界に衝撃を与えた歴史ともつながっています。本番組では、現代における新たなジャポニズムとして、マンガがどのように世界中の人々を魅了し、それぞれの国でどのように受け入れられているのかを深掘りします。
「ダンダダン」の世界的ヒット
日本のマンガが世界で愛される例として、特に注目されたのが「ダンダダン」です。2020年に連載が始まり、2023年にアニメ化されると、190の国と地域で配信され、一気に世界第2位の視聴記録を達成しました。この作品の最大の特徴は、オカルト×SF×バトル×青春といった、一見つながりのない要素が絶妙に組み合わされていることです。
・妖怪や地縛霊といった日本独自の伝説を取り入れながらも、海外の視聴者にも響くストーリー展開
・アクションの迫力、キャラクターの個性、そして熱いドラマが組み合わさった作品づくり
・日本の伝統的なホラー要素と、現代的なバトル要素の融合
原作者の龍幸伸さんと編集者の林士平さんは、「海外を意識した打ち合わせをしたことは一度もない」と語ります。にもかかわらず、もともと原作の段階から海外での評価が高く、結果的に世界中のファンを魅了する作品となりました。
ウクライナで響いた「進撃の巨人」
戦争の続くウクライナでは、日本のアニメやマンガが人々に希望を与えています。首都キーウでは、日本のアニメソングのコンサートが開催され、多くの人々が集まりました。その中で特に印象的だったのが、「進撃の巨人」の影響です。
・ウクライナの人々にとって「進撃の巨人」のストーリーは戦争と重なる部分が多い
・主人公エレンが、自分の信念を問い直すシーンが、多くの人に深く刺さる
・現実の厳しさと向き合う中で、日本のマンガが心の支えとなっている
ある女性は、「進撃の巨人」のエレンが自らの正義を問い直す場面に強く共感したと語ります。戦争の中に生きる彼女にとって、物語の中の葛藤が自身の現実とも重なり、同じ苦しみを抱える人々と対話しているような気持ちになれるのです。
「ONE PIECE」がジンバブエの若者を救う
アフリカのジンバブエでも、日本のマンガが多くの若者に影響を与えています。特に「ONE PIECE」は、厳しい社会の中で生きる彼らにとって大きな希望の光となっています。
・ジンバブエはかつてイギリス領であり、独立後も経済的な困難が続く
・海外に出て仕事を探しても差別を受け、帰国せざるを得ない若者たちが多い
・そんな中、「ONE PIECE」のキャラクターたちの生き様が励みになる
ジンバブエの漫画家ビルさんが特に感銘を受けたのは、ニコ・ロビンが「生きたい」と叫ぶシーンです。2000年代後半、ジンバブエはハイパーインフレーションによって経済が混乱し、人々は食料を求めて長蛇の列を作っていました。その時、ロビンの言葉が強く心に響き、「どんなに苦しくても、生きることを諦めてはいけない」と感じたそうです。
浮世絵と手塚治虫のつながり
日本のマンガは、19世紀の浮世絵文化と深い関わりがあります。江戸時代の吉原では、多くの女性が借金を背負いながら生きていました。そんな中、庶民の本音を表現する「狂歌」が流行し、それをまとめた本を出版したのが蔦屋重三郎です。
・浮世絵と狂歌を組み合わせることで、新たな表現が生まれた
・身分を問わず、才能ある人々が創作の場を得た
・この文化が海外にも影響を与え、ジャポニズムとして広まった
このような独自の表現文化が、のちのマンガにもつながっていきます。戦後、日本のマンガの原点となったのが手塚治虫の「新宝島」です。GHQの検閲が厳しい中でも、自由な創作を貫いた手塚治虫は、「マンガを描くことは、自分自身を確かめること」と語っています。その意志を継ぐように、多くの漫画家がトキワ荘に集まり、日本を代表する名作が生まれていきました。
世界で生まれる新たなクリエイター
日本のマンガ文化に触発された新たなクリエイターが、世界各地で活躍し始めています。
・インドネシアでは、イスラム教の戒律がある中でもコスプレ文化が広がる
・ジャカルタのイベントでは、日本のマンガをもとにした同人誌が人気
・BL(ボーイズラブ)作品が注目を集め、若者の意識を変えつつある
また、ジンバブエでは、新たなマンガ雑誌を創刊し、9人の漫画家が作品を発表。ズバラセクワという地域の伝承をもとにしたマンガも生まれ、「自信を持てない人を励ましたい」という想いで描かれています。
マンガの未来とデジタル化
マンガは今、大きな転換期を迎えています。編集者の林士平さんは、6年前からデジタル版のマンガに注力し、「より多くの作家にチャンスを与えたい」と考えています。
・デジタル化によって、より多くの作家が作品を発表できる
・韓国ではスマホ向けの「縦読みマンガ(Webtoon)」が大ヒット
・日本では、京都精華大学などがマンガ専門の学部を設立し、次世代の育成に力を入れている
さらに林さんは、新人漫画家が創作に集中できるよう生活費を支援するアパートの運営を開始する予定です。マンガを描くことを仕事として続けられる環境づくりが、今後の課題となっています。
日本のマンガが未来をつくる
マンガは単なる娯楽ではなく、人生を変える力を持つコンテンツです。ウクライナ、ジンバブエ、インドネシアなど、さまざまな国でマンガが人々の支えとなっています。これからもマンガが世界にどんな影響を与えるのか、注目していきたいですね。
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