金沢の伝統美「加賀水引」~100年続く結びの芸術と新しい挑戦~|2025年4月3日(木)放送まとめ
2025年4月3日(木)のNHK「あさイチ」では、石川県金沢市で生まれ、100年以上の時を超えて受け継がれてきた伝統工芸「加賀水引(かがみずひき)」が紹介されました。この放送では、水引がどのように芸術的な工芸品として発展してきたのか、そして現代の暮らしの中でどのように活かされているのかが丁寧に取り上げられていました。
加賀水引とは?金沢で磨かれた美と心のかたち
水引は日本の伝統的な贈答文化の中で、和紙の紐を結んで飾るものとして古くから使われてきました。その水引に芸術性を吹き込んだのが「加賀水引」です。金沢の地で発展した加賀水引は、従来の平面的な飾り結びを、立体的な造形へと進化させたことで知られています。
この加賀水引を生み出したのが、初代・津田左右吉氏です。およそ100年前、和紙を使った贈り物の包装に独自の工夫を加え、見た目に美しく、意味のこもった水引の形を作り出しました。その立体的な結びは、ただ飾るだけでなく、贈る人の気持ちを「結び」の形で伝えるという、日本人の心の文化そのものです。
番組では、津田氏がどのように水引工芸を変えたのか、当時の貴重な資料や作品とともに紹介されました。
伝統を作り出した初代・津田左右吉氏の功績
初代・津田左右吉氏は、加賀藩の文化を受け継ぐ金沢の町に生まれ、贈答品の美しさと意味を大切にする心から水引の工芸化を目指しました。従来の水引は単に「封をするための紐」や「飾り」に過ぎませんでしたが、津田氏はそれを芸術的な表現へと昇華させたのです。
彼が創業した「津田水引折型」は、今も金沢市内に店を構え、加賀水引の中心的な存在として知られています。皇室への献上品にも選ばれた実績を持ち、その美しさと品格は全国でも評価されています。番組では、津田氏の思いを受け継いだ現代の職人たちの姿も紹介されており、その精神が今も大切に守られていることが伝えられていました。
加賀水引の美しさと意味ある造形
加賀水引の魅力は、その立体的な造形にあります。一つひとつの形には、人の想いや願いが込められているため、見た目の美しさだけでなく、意味のある贈り物になります。
特に番組で取り上げられていた代表的なモチーフは以下のとおりです。
-
鶴と亀:長寿と健康の象徴として、祝いの場にぴったり
-
松竹梅:お正月や慶事にふさわしい吉祥の組み合わせ
-
梅や桜の花:四季の移ろいを感じさせる、季節の贈り物に最適
-
鯛や金魚などの動物モチーフ:子ども向けのお祝いなどにも人気
これらのモチーフは、色の組み合わせや結び方によって印象が大きく変わります。同じ「鶴」でも使う水引の本数や角度によって表情が変わるという点も、加賀水引の奥深さを表しています。
また、加賀水引は「人と人をつなぐもの」として贈り物に添えられることが多く、「結び直せる=やり直せる関係性」や「ほどけにくい=強い絆」などの意味も持っています。
現代の加賀水引と暮らしへの広がり
加賀水引の技術は、現在5代目の津田水引折型代表が中心となって継承されており、伝統を守りながらも新しい挑戦が行われています。番組では、現代の生活スタイルに合わせた商品が紹介されていました。
-
水引を使ったアクセサリー(ピアス・ネックレスなど)
-
ヘアピンやかんざしなどの和小物
-
インテリアに使えるオブジェやリース
-
ウェディングギフトや内祝い用の装飾水引
これらの商品は、日本文化を感じさせながらも洋服や現代のインテリアにもマッチするデザインとなっており、特に若い世代からの人気も高まっているそうです。
また、工房では水引体験教室も開催されており、地元の小学生から観光客まで幅広い人々が参加しています。自分の手で結びを体験することで、手仕事の大変さと温かさ、そして文化の意味を学べる場となっています。
未来へつなぐ加賀水引の挑戦
放送の後半では、若い職人たちがベテランの指導を受けながら一つひとつの結びを習得する様子が紹介されていました。基本の形を丁寧に覚え、そこに自分のアイデアを加えて新しい作品を生み出していく姿に、視聴者からも関心が集まりました。
また、最近ではSNSやオンラインショップを通じた販売も盛んで、海外からの問い合わせも増えているとのことです。水引が持つ意味や美しさは言葉を超えて伝わり、多くの人に感動を与えています。
金沢という文化豊かな土地で生まれた加賀水引は、その土地の気候や人々の気質、そして歴史が育んだ宝物のような工芸品です。それを次世代にどう伝えていくかが、今の大きな課題であり、希望でもあります。
おわりに
加賀水引は、ただの「飾り」ではなく、人と人との心をつなぐ「結びの文化」です。金沢の風土と美意識、そして贈る側の想いを形にした加賀水引は、見た目の美しさ以上に深い意味を持つ工芸です。
100年続く技術を受け継ぎながらも、時代に合った形で進化し続けている加賀水引。それは、古いものを守るだけでなく、今を生きる私たちの暮らしにも寄り添ってくれる存在です。金沢を訪れた際には、ぜひその技と心に触れてみてはいかがでしょうか。
コメント