女性の年金が少ない理由とは?老後資金の不安を解消する方法
2025年2月3日放送のNHK「あさイチ」では、女性の年金が男性よりも少ない現状と、それに対する具体的な対策について特集しました。厚生労働省の最新データによると、今年度50歳の女性の年金平均額は9万8000円で、男性の14万1000円より4万3000円も少ないことが分かっています。
年金額に大きな差がある理由として、女性の賃金格差や非正規雇用の割合の高さ、育児や介護による離職などが挙げられます。さらに、離婚時の年金分割や、年金だけでは足りない老後資金をどのように確保するかなど、事前に知っておきたい情報も多くあります。
今回の放送では、年金の仕組み、老後の生活費、年金額の確認方法、年金を増やす方法、離婚時の年金分割制度について詳しく解説されました。この記事では、番組内容をもとに、女性が老後の不安を軽減するために知っておくべきポイントをまとめています。
女性の年金が男性より少ない理由とは?
女性の年金額が男性よりも少なくなる背景には、さまざまな要因が関係しています。特に、賃金格差や雇用形態の違い、育児・介護による離職、扶養制度の影響などが大きく影響しています。それぞれのポイントを詳しく見ていきます。
- 男女の賃金格差
日本では依然として男性に比べて女性の平均賃金が低い状況が続いています。厚生労働省の統計によると、女性の平均賃金は男性の約75%程度にとどまっています。給与が低いということは、厚生年金の保険料を支払う額も少なくなるため、結果として受給額も低くなってしまいます。- 例えば、40年間働いた場合、年収500万円の男性と年収350万円の女性では、厚生年金の支払額に大きな差が生じ、年金受給額にも差が出ることになります。
- 特に正社員の割合が多い業種(建設、製造業、ITなど)は男性が多く、女性が多く働く業種(販売、福祉、サービス業など)は賃金が低い傾向があります。
- 非正規雇用の割合が高い
女性はパート・アルバイト・派遣などの非正規雇用で働く割合が高く、これにより厚生年金に加入できないケースが増えています。厚生年金の加入対象になるには、一般的に週20時間以上の労働が必要とされていますが、短時間勤務や契約社員の増加によって、厚生年金に加入できない女性が多くなっています。- 厚生労働省のデータによると、女性の約55%が非正規雇用で働いているのに対し、男性の非正規雇用率は約22%程度にとどまっています。
- 非正規雇用では、国民年金しか加入できないケースが多く、厚生年金と比べて受給額が低くなるため、将来の年金額にも影響します。
- 育児や介護による離職
結婚・出産・育児・親の介護といったライフイベントの影響で、女性は仕事を辞めることが多いのも年金が少なくなる要因です。- 育児休業制度は整ってきていますが、出産後に復職できない女性も多く、結果的に数年間の年金納付期間が抜けることになります。
- 介護の負担も女性に偏る傾向があり、親の介護のために離職するケースも少なくありません。介護離職すると、その期間の収入減だけでなく、年金の納付額も減少し、将来の受給額に影響します。
また、仕事を続けながら育児や介護をする負担が大きく、フルタイムからパートタイムへ切り替える人も多いため、厚生年金から国民年金に移行することで、年金額が大幅に減ることになります。
- 配偶者の扶養に入ると将来の年金額が少なくなる
夫の扶養(第3号被保険者)に入ることで、年金の納付額が減り、将来の受給額も低くなるケースがあります。- 第3号被保険者は、扶養されている期間は保険料を支払わなくても年金が受け取れる仕組みになっていますが、あくまで「国民年金のみ」の加入となるため、厚生年金と比べて将来の受給額が大幅に少なくなるというデメリットがあります。
- 例えば、夫の扶養で10年間過ごした場合、その間の年金額は国民年金のみになるため、働き続けた場合に比べて受給額が数万円単位で少なくなる可能性があります。
また、第3号被保険者の制度が将来的に見直される可能性も指摘されています。そのため、「扶養内だから安心」と考えるのではなく、老後の年金額を考慮して働き方を見直すことも重要です。
女性の年金が少ない原因は、単に収入が低いことだけではなく、雇用形態やライフイベントによる影響が大きいことが分かります。将来の生活を安定させるためには、早めに年金額を確認し、必要な対策を講じることが大切です。
自分の年金額を知り、老後資金の見通しを立てる
老後の生活に備えるためには、まず自分がどれくらいの年金を受け取れるのかを知ることが重要です。現在の収入や働き方によって年金額は大きく変わるため、早めに把握し、必要に応じて対策を取ることが求められます。番組では、年金額を確認する方法として「ねんきん定期便」と「公的年金シミュレーター」の活用が紹介されました。
- ねんきん定期便を確認する
毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」をチェックすると、これまでの年金納付実績や将来の受給見込み額を確認できます。特に50歳以上の人は、受給開始年齢ごとの年金額が具体的に記載されるため、老後の計画を立てるのに役立ちます。- 40代以下の人は、「これまでに納めた年金額」と「年金加入期間」を確認できるため、今後の働き方や貯蓄計画の参考になります。
- 50歳以上の人は、「60歳・65歳・70歳まで働いた場合の受給額の試算」が掲載されるため、繰下げ受給(65歳以降に受給を開始することで増額)を含めた具体的な資金計画が可能になります。
- ねんきん定期便は郵送されるだけでなく、日本年金機構の「ねんきんネット」でも確認できるため、定期的にチェックするのが望ましいです。
- 公的年金シミュレーターを活用する
厚生労働省の公的年金シミュレーターを使うと、収入や働き方の変化が年金額にどのような影響を与えるかを簡単にシミュレーションできます。- 60歳まで働いた場合と65歳まで働いた場合、どれくらい年金額が変わるのかを比較できる。
- パートタイムやフルタイム、起業など、働き方を変えた場合の影響を試算できる。
- 繰下げ受給を選んだ場合、年金額がどれくらい増えるのかを計算できる(1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額され、最大42%アップ)。
年金の見込み額は「額面」で表示されるため、実際に受け取れる手取り額は85~90%程度になることを考慮しなければなりません。例えば、額面で15万円の年金が予定されていても、実際の受取額は約13万円程度になる可能性があります。
- 老後に必要な生活費を知る
総務省の「令和5年家計調査報告」によると、老後に必要な生活費は以下のようになっています。- 65歳以上の単身世帯:月約14.5万円
- 65歳以上の夫婦のみの世帯:月約25.1万円
この金額と自分の年金額を比較することで、不足する分をどう補うかを考える必要があります。
- 年金だけで不足する場合、どう対策するか?
- 貯蓄を増やす:退職までに必要な金額を計算し、計画的に貯蓄を進める。
- 資産運用を活用する:iDeCoやNISAを活用し、長期的に資産を増やす工夫をする。
- 収入を増やす:退職後も働ける環境を整え、年金以外の収入源を確保する。
- 生活費の見直しも重要
- 固定費を削減する:通信費、保険料、光熱費などを見直すことで、月数千円〜1万円以上の節約が可能。
- 住居費の負担を減らす:持ち家ならリバースモーゲージを活用する、賃貸なら家賃の安い物件に住み替えるなどの方法を検討する。
- 健康維持に努める:医療費の負担を抑えるため、予防医療や健康的な生活習慣を心がけることも大切。
年金だけで老後の生活をまかなうのが難しい場合は、早めに貯蓄や資産運用を検討し、不足分を補う対策を立てることが重要です。
離婚した場合、年金はどうなる?
離婚を考えている、またはすでに離婚した女性にとって、年金分割制度は老後の生活を支える重要な制度です。特に、長年専業主婦だった場合や、夫の扶養(第3号被保険者)として働いていた場合、離婚後の年金額が大幅に減る可能性があります。そのため、離婚前後でしっかりと年金の確認と手続きを行うことが大切です。
- 年金分割とは?
- 結婚期間中に夫が加入していた厚生年金を、最大50%まで妻に分割できる制度。
- 夫の年金を直接受け取るわけではなく、自分の年金として計算されるため、離婚後も安定した収入源になる。
- 離婚後2年以内に手続きを行わないと適用されないため注意が必要。
- 年金分割には2種類ある
- 合意分割(夫の同意が必要)
- 夫と話し合い、年金を分割する割合を決める。
- 分割割合は最大50%まで。
- 夫の合意が得られない場合、裁判所の調停が必要になる。
- 3号分割(夫の同意不要)
- 第3号被保険者(夫の扶養に入っていた期間)の厚生年金部分を、自動的に分割できる制度。
- 2008年4月1日以降の婚姻期間が対象で、夫の同意は不要。
- 離婚後に2年以内に手続きをすれば、自動的に適用される。
- 合意分割(夫の同意が必要)
- 年金分割を受けるための手続き
- 年金事務所や「街角の年金相談センター」で相談し、事前に夫の年金情報を確認する。
- 離婚後2年以内に申請を行う。
- 必要な書類として、戸籍謄本、年金手帳、離婚届受理証明書などを準備する。
- 年金分割を受けても、老後資金が不足する可能性がある
- 夫の年金額が少ない場合、分割を受けても十分な額にならないことがある。
- 専業主婦期間が長く、もともと納付額が少ないと、年金分割だけでは生活費をまかなえない可能性も。
そのため、国民年金のみの場合は「国民年金基金」や「iDeCo(個人型確定拠出年金)」を活用して、将来の年金額を増やすことが重要です。
- 国民年金基金:自営業者やフリーランス向けの制度で、掛け金に応じて将来の受給額を増やせる。
- iDeCo(個人型確定拠出年金):自分で積み立てる年金制度で、掛け金が全額所得控除の対象になるため節税効果も大きい。
離婚後の生活を安定させるためには、年金分割だけに頼らず、働き方を見直したり、資産運用を活用したりすることも重要です。離婚を考えている人は、早めに年金や老後資金について計画を立てることが安心につながります。
老後資金を増やすための具体的な対策
年金だけで老後の生活費をまかなうのが難しい場合、できるだけ早いうちに資金対策を考えることが重要です。現在の生活の中でできる工夫や、退職後の収入を増やす方法を知っておくことで、より安心した老後を迎えられます。番組では、収入を増やす方法、資産運用、節約・貯蓄の見直しといった対策が紹介されました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
- 収入を増やす
- 60歳以降も働くことで、年金受給開始を遅らせる(繰下げ受給)
- 年金の受給開始を65歳から70歳まで繰り下げると、1ヶ月遅らせるごとに0.7%増額されます。
- 最大42%年金額を増やせるため、健康で働ける間は収入を確保しながら受給を遅らせることが有効な手段になります。
- 例えば、65歳から月額15万円の年金を受け取る予定の人が70歳まで繰下げ受給すると、21.3万円(15万円×1.42)まで増額されます。
- 扶養を外れて働くことで、年金額を増やせる可能性
- 夫の扶養(第3号被保険者)に入っている場合、扶養のままでは厚生年金に加入できず、将来の年金額が低くなります。
- パートやフルタイムで厚生年金に加入することで、年金の受給額を増やせる可能性があります。
- 例えば、50歳から10年間パートで厚生年金に加入すると、国民年金だけよりも受給額が増加します。
- 60歳以降も働くことで、年金受給開始を遅らせる(繰下げ受給)
- 資産運用を活用する
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する
- iDeCoは、掛け金が全額所得控除の対象になるため、節税しながら老後資金を準備できます。
- 60歳まで積み立てが可能で、受け取る際には一括受取(退職所得控除)や年金受取(公的年金等控除)を活用できるため、税制優遇が大きい制度です。
- 例えば、月2万円を30年間積み立てると、運用利回り3%の場合、元本720万円が約1200万円まで増える可能性があります。
- NISA(少額投資非課税制度)を活用する
- NISAは、投資による運用益が非課税になるため、長期的な資産形成に適しています。
- 2024年から新しいNISA制度が始まり、生涯投資枠1800万円まで非課税で投資できるようになりました。
- 株式や投資信託に長期で資産を運用することで、年金以外の資産を形成できるメリットがあります。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する
- 節約と貯蓄を見直す
- 固定費を削減する
- 毎月の支出を見直すことで、長期的に大きな節約につながります。
- 通信費:格安スマホに変更することで、月5000円以上の節約が可能。
- 保険料:見直しを行い、不要な特約を削ることで、年間数万円の節約につながる。
- 光熱費:電力会社の見直しや、LED電球への切り替えでコスト削減できる。
- 退職金や企業年金の活用を事前に確認する
- 企業によっては退職金や企業年金の受取方法を選択できる場合があるため、どの方法が有利か事前に確認しておくことが重要です。
- 企業年金を一括受取にすると課税額が増えるため、年金形式で受け取る方が税負担を抑えられるケースもある。
- 固定費を削減する
老後の資金は、年金だけでは不足する可能性が高いため、働き方や資産運用、節約を組み合わせた計画的な準備が不可欠です。できることから少しずつ取り組み、老後の安心を確保しましょう。
まとめ
女性の年金が男性より少ない現状を踏まえ、早めに年金額を確認し、老後資金対策を進めることが重要です。年金分割制度の活用や、iDeCo・NISAなどの資産運用、繰下げ受給の検討など、自分に合った方法を選びながら準備を進めましょう。
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