ひとに言えない汗の悩み…多汗症・わきが・無汗症をどう解決?
2025年7月29日に放送されたNHK「クローズアップ現代」では、「ひとに言えない汗の悩み」をテーマに、多汗症・腋臭症(わきが)・無汗症という3つの症状を取り上げました。汗は体の自然な働きのひとつですが、その量やにおい、出ないことさえも、人によっては深刻な悩みとなります。この記事では、番組で紹介された実例や専門家の解説をもとに、それぞれの汗の悩みと向き合う方法を紹介します。
多汗症 ― 止まらない汗で日常に支障が出る人たち
10代の頃から汗に悩み、学校にも行けなくなった田中さん。冬以外はTシャツがびしょ濡れになるほどの発汗があり、誰にも相談できずに苦しんでいました。19歳のとき「多汗症」と診断され、病気として扱われることで初めて救われた気持ちになったそうです。
多汗症とは、特定の部位(手、足、脇など)に半年以上、過剰な汗が出続ける状態をいいます。10人に1人が発症しているとも言われ、遺伝や更年期、薬の副作用が原因になることもあります。
多汗症の診断基準と治療法
診断には6つのチェック項目のうち2つ以上に該当することが基準とされており、重要なのは「体質と困りごとのバランス」です。汗が多くても本人が困っていなければ治療は不要ですが、困っているなら治療を検討すべきです。
保険適用の塗り薬やボトックス注射などの治療が増えており、症状や部位に応じた対応が可能になっています。多くの人が「たかが汗」と見過ごされがちですが、放置すれば心身の負担が大きくなるため、周囲の理解と正しい知識が求められます。
腋臭症(わきが) ― においが気になり生活に支障が出る
わきがに悩む20代の男性も紹介されました。高校生のころから気にし続け、においを消すために多くのお金と時間をかけてきました。それでも職場では不安が消えず、仕事に集中できないこともあったといいます。
わきがの原因は、アポクリン腺という汗腺から出る汗が皮膚の細菌に分解されてにおいを発生させることにあります。この男性は腋臭症と診断され、大学病院の専門外来で治療を受けています。
わきがの治療法と新たな研究の進展
手術によってアポクリン腺を取り除く方法があり、保険適用で約5万円程度。再発リスクも低いですが、1か月近い安静期間が必要です。男性は仕事の都合で、短時間で済むボトックス注射を選択しました。半年ごとの施術が必要ですが、効果は実感できているとのことです。
さらに、大阪公立大学の研究では、わきのにおいに関わるスタフィロコッカス・ホミニスという菌を特定。この菌だけを抑える阻害剤の開発が進んでおり、今後は新たなデオドラント製品や治療薬の開発に期待が寄せられています。
無汗症 ― 汗をかけないことで熱中症のリスクも
一方で「汗をかけない」悩みを抱えている人もいます。野球一筋だった野口湊さんは、社会人チームで活動を始めた直後、軽い運動でも熱中症のような症状が出るようになり、外出も難しくなりました。検査の結果、体の80%が発汗していない無汗症と診断されました。
無汗症は特発性後天性全身性無汗症とも呼ばれ、日本では難病指定されているまれな病気で、患者は全国でも600人程度。10代〜30代の若者に多く、特に運動をしている人に多く見られます。
無汗症の原因と向き合い方
原因が特定できないことも多く、対処法としては汗をかく訓練や早期受診が勧められています。汗が出ないことで体温調節がうまくいかず、熱中症のリスクが非常に高くなるため、周囲の理解と配慮が必要です。
野口さんは、諦めずに汗を出すための訓練を続け、少しずつ改善の兆しが見えてきているといいます。
社会の偏見をなくす「汗はサイレントハンディキャップ」
番組では、汗の悩みを「サイレントハンディキャップ」と紹介。汗の悩みは見えにくく、周囲に伝えにくいため、当事者が孤立しやすいのです。「たかが汗」と軽視されがちな中で、理解と共感が求められています。
3年前に立ち上がった「NPO法人 多汗症サポートグループ」では、100人以上が参加。悩みを共有できる場があることで、「汗を隠さなくていいと思えるようになった」と感じる人も増えています。
まとめ:悩みは「特別」じゃない、声をあげることから始めよう
今回の「クローズアップ現代」では、多くの人が抱える汗の悩みが、病気としての理解と社会の変化によって少しずつ解消へ向かっている現状が描かれました。自分だけが悩んでいるわけではないということ、治療法があるということを知るだけでも、気持ちは大きく変わるかもしれません。
一人で抱えず、信頼できる人や専門機関に相談することで、生活はもっと楽になるはずです。今、汗のことで悩んでいるあなたも、その気持ちを否定せず、自分を大事にしてください。
制汗剤でのセルフケアも有効な選択肢に

ここからは、私からの提案です。汗の悩みを抱える多くの人にとって、日々のケアは欠かせません。とくに多汗症やわきがのように日常生活に影響するレベルの症状では、病院での治療とあわせて、市販の制汗剤やデオドラントを使ったセルフケアも効果的な手段となります。最近では、皮膚科医が推奨する成分を配合した「医薬部外品」の商品も増えており、敏感肌の人でも安心して使えるものが登場しています。
医薬部外品であることの意味
制汗剤の中でも「医薬部外品」と表示されているものは、厚生労働省が認可した有効成分が含まれていることを意味します。たとえば「クロルヒドロキシアルミニウム」や「焼ミョウバン」といった成分は、汗腺を引き締める働きがあり、汗の分泌量を物理的に抑えてくれます。また、「イソプロピルメチルフェノール」と呼ばれる殺菌成分は、においの原因となる雑菌の繁殖を防ぐのに効果的です。
以下の表は、実際に販売されているおすすめ商品を、成分や特徴とあわせて整理したものです。
商品名 | 有効成分 | 特徴 |
---|---|---|
GATSBY プレミアムロールオン | クロルヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノール | 無香料で敏感肌でも使いやすく、塗布が均一になりやすい |
デオナチュレ さらさらクリーム | 焼ミョウバン、イソプロピルメチルフェノール | クリームタイプで密着力が高く、さらっとした使用感 |
これらの商品は、制汗とにおい対策の両方に対応しているため、日常的に汗が多く出る人にとって非常に頼もしい存在です。また、無香料タイプや低刺激処方が選べることで、肌トラブルを避けつつ安心して続けられるのも大きなメリットです。
使用時の注意点と効果的なタイミング
効果的に使うためには、汗をかく前の清潔な肌に塗布することが基本です。朝の出勤・通学前や、運動の前後などに使うと効果を感じやすくなります。また、夜にお風呂あがりのタイミングで塗っておくことで、翌朝の汗の量が軽減されるという報告もあります。
ただし、症状があまりに強い場合は、市販品だけでは対応しきれないこともあるため、医師に相談することが安心な第一歩です。適切な組み合わせで生活の質を高めることができます。
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