岩手・西和賀町の「ホッケのすし漬け」に迫る
2025年4月17日(木)22時30分からNHK Eテレで放送される『小雪と発酵おばあちゃん』では、岩手県西和賀町で作られている伝統的な保存食「すし漬け」が紹介されます。冬になると一面が雪に覆われるこの地域では、昔から生活の知恵として発酵食品が大切にされてきました。番組では、すし漬けを現代風にアレンジしている地元のおばあちゃん・節子さんの取り組みに注目し、見た目が美しくて味もよい、しかも簡単に作れる「すし漬け」レシピが紹介される予定です。
西和賀町とは?雪深い町に息づく知恵
西和賀町は、岩手県の南西部に位置し、秋田県と接する山あいの町です。冬になると積雪は10メートルを超えることもあるほどの豪雪地帯で、長い冬の間、外部との行き来が難しくなります。そんな土地柄だからこそ、食料の保存や発酵の技術が発展し、受け継がれてきたのです。
この町で育まれてきた「すし漬け」は、雪国の暮らしを支える大切な保存食でした。冷蔵庫や物流が今ほど発達していない時代、冬の間に新鮮な魚を長くおいしく食べるための知恵として、すし漬けは多くの家庭で作られてきました。
「すし漬け」とは?見た目も味もやさしい発酵料理
すし漬けは、魚と野菜をご飯と米麹に漬け込んで発酵させる郷土料理です。発酵によって、ほんのりとした酸味と甘みが生まれ、独特のうまみが感じられます。日本各地にある「なれずし」や「飯ずし」と似ていますが、西和賀町ではこの「すし漬け」が地域に根ざした冬の味として作られています。
すし漬けに使う魚は時代とともに変化してきました。
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かつては秋田県から仕入れたハタハタが主流でした
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現在は、安くて手に入りやすいホッケがよく使われています
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ほかにも、サケ・サンマ・ニシン・イカなども使われます
魚と一緒に漬ける野菜にもバリエーションがあります。
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基本はカブや赤カブ、キャベツ、人参など
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見た目の色合いを工夫して、きれいに仕上げる人も増えています
節子さんのように、現代の家庭に合った工夫を取り入れながら作る人も多くなっています。
ホッケのすし漬けの作り方|西和賀町の発酵保存食
西和賀町で昔から親しまれてきた「ホッケのすし漬け」は、魚や野菜を麹と一緒に重ねて発酵させる冬の保存料理です。ここでは、材料と手順を分けて、実際の作業の流れを具体的に紹介します。ひとつひとつの工程に意味がある、手間ひまかけた郷土料理です。
【材料(つくりやすい分量)】
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ホッケ:1尾(3枚おろし・皮を除く)
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聖護院かぶ:1個(皮をむいて1.5cm幅にスライス)
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ニンジン:適量(花形にカット)
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青菜:適量(刻んで使用)
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ふのり:適量(戻しておく)
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塩:カブのスライスの重さの3.5%
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笹の葉:適量(香りづけと仕切り用)
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五倍酢:50ml(ホッケの下処理用)
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水:50ml(五倍酢と混ぜる)
<麹の準備>
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米麹:1kg
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ぬるま湯:3カップ
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炊いたご飯:茶碗1杯
【作り方】
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ホッケは大きめの削ぎ切りにし、五倍酢と水を合わせた液に一晩浸けて下味をつけることで、臭みがやわらぎます。1尾で約15切れほど取れます。
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米麹にぬるま湯を加えて混ぜ、さらに炊いたご飯を加えて炊飯器の保温モードで2時間発酵させます。これが旨みのベースになります。炊飯器から取り出したら、常温で一晩寝かせて落ち着かせます。
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カブは4等分して皮をむき、厚めのスライスにしてホッケと同じ枚数を準備。カブ全体の重さを測り、その3.5%の塩を麹に加えてしっかり混ぜます。
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漬物用のタルの底にカブを隙間なくぴったり敷き詰めることで、空気の侵入を防ぎ、安定した発酵を促します。
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カブ1枚に対してホッケ1切れを乗せ、その上から塩麹をまんべんなく塗り広げます。
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トッピングとして、花形に切ったニンジン、青菜、ふのりを彩りよく配置し、味だけでなく見た目の美しさも大切にします。
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1段完成したら、笹の葉を全体にしき、香りと通気を調える役割をもたせます。そこから再び同じ工程(カブ→ホッケ→麹→具材→笹)を繰り返して積み重ねます。
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すべての材料を重ね終えたら、最後にもう一度笹の葉で表面を覆い、落としぶたをのせて重石を置きます。
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仕上げに、ホッケを漬けていたお酢をタルの隙間からゆっくり注ぎ入れます。この酢が全体の調和をとりながら、防腐効果をもたらします。
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冷蔵庫や気温の低い場所で15日~20日間発酵させ、様子を見ます。発酵が進むと汁に濁りがなくなり、味がまろやかになった頃が食べごろです。
このように、ホッケのすし漬けは工程が多い分、完成時の達成感と味わいは格別です。西和賀の寒さが、この料理にぴったりの熟成環境を与えてくれます。食卓に並べたときの色合いも美しく、体にも優しい伝統の一品です。
現代におけるすし漬けの課題と未来
すし漬けは、昔ながらの家庭料理として受け継がれてきましたが、現代ではいくつかの課題もあります。
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作り手の高齢化
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発酵食品を扱う手間や時間が敬遠されがち
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若い世代の食習慣の変化
こうした背景もあり、すし漬け文化は今、次の世代にどう伝えていくかが大きなテーマとなっています。西和賀町では、食育や郷土料理教室、観光と連動した「発酵体験ツアー」など、地域を挙げた活動も始まっています。番組でも、そうした取り組みの一端が紹介されるかもしれません。
番組概要と放送案内
『小雪と発酵おばあちゃん 岩手・ホッケのすし漬け』は、次の内容で放送されます。
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放送日:2025年4月17日(木)
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放送時間:22:30~23:00(30分)
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放送局:NHK Eテレ(教育テレビ)
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出演者:小雪
放送では、節子さんのレシピや工夫、地元の風景や食文化も映し出される予定です。ホッケを使ったすし漬けが、どのようにして生まれ、どのように進化してきたのかを知ることができる30分間となるでしょう。
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