サンドウィッチマンが出会った“命の物語”|東京都立小児総合医療センター編
2025年4月29日放送の『病院ラジオ(19)』は、東京都府中市にある東京都立小児総合医療センターを舞台に、サンドウィッチマンが1日限りのラジオ局を開設し、病気と闘う子どもたちとその家族の“言葉にならない思い”を丁寧に受け止める1時間でした。からだの治療だけでなく、心にも寄り添うこの病院で交わされた声には、悲しみや不安だけでなく、前を向いて生きる勇気と優しさが詰まっていました。
1日だけ開設される病院ラジオとは
『病院ラジオ』は、病院内に即席のラジオブースを設け、そこに患者さんやスタッフたちが訪れて語り合う番組です。普段なかなか表に出ない入院生活の思いや、未来への希望、病気と闘う中で感じた小さな喜びを、リスナーに届けます。今回訪れる東京都立小児総合医療センターでは、重い病気を抱えながら前を向いて生きる子どもたちが、サンドウィッチマンのふたりに心を開きます。
番組の中では、子どもたちのリクエストによる音楽も紹介され、彼らの支えになった楽曲とともに物語が進んでいきます。
東京都立小児総合医療センターとは
(※画像はイメージです。)
東京都立小児総合医療センターは、2010年に開設された小児専門の総合病院です。東京都府中市に位置し、JR中央線・武蔵野線「西国分寺駅」から徒歩約15分の場所にあります。急性期医療から慢性期医療まで幅広く対応しており、白血病や脳腫瘍などの小児がん、心臓病、腎移植などの高度専門医療を提供しています。
さらに、365日24時間対応の小児救急を備え、PICU(小児集中治療室)やHCU(ハイケアユニット)を完備しています。緊急時にはドクターカーやドクターヘリによる搬送も可能で、重症患者の受け入れにも強みを持っています。
心のケアにも力を入れており、児童・思春期精神科では、発達障害、摂食障害、うつ病、統合失調症など心の病に対する専門的な診療を行っています。また、長期入院の子どもたちの学業を支える院内学級や、遊びを通じて療養生活を支えるプレイルームも完備しています。
施設内には、家族が付き添いやすいリフレッシュルームやマクドナルドハウスもあり、家族支援にも力を注いでいます。特に、専門訓練を受けたファシリティドッグ「アイビー」が在籍していることは大きな特徴で、医療の場に癒しを届ける存在となっています。
透析を選んだ9歳の男の子と、家族の想い
最初にラジオブースを訪れたのは、腎臓の病気を抱える9歳の男の子とお母さん。以前の病院では手術できなかったため、この病院で透析治療を受けています。腎臓が悪く、尿として老廃物を出せないため、体に管を入れて機械で体内を浄化する治療が行われています。移植という選択肢もありましたが、男の子自身が「他人の腎臓は嫌だ」と感じて透析を選択したそうです。お母さんは、透析はずっと続けられるものではないと心配しており、将来的には移植も考えているとのことです。
男の子は「楽しいことは必ずある」と明るく話し、ご飯が美味しいと笑顔を見せますが、月に1回の注射はとても苦手で、ものすごく痛いと語ります。制限のある生活の中でも、本人が前向きに生きる姿に、家族は逆に支えられていると感じているようです。お父さんには「遊んでくれてありがとう」「おもちゃを買ってきてくれてありがとう」と、感謝の気持ちを伝えました。リクエストは、母の好きな菅田将暉の「虹」でした。
ロビノウ症候群と向き合う13歳のイツキくん
次に登場したのは、中学1年生のイツキくん。彼はロビノウ症候群という遺伝子疾患で、顔立ちや歯並び、永久歯の生え方などに特徴が現れます。これまでに複数の手術を受け、通院も多く、お母さんがいつも付き添ってくれています。病院帰りには美味しい食事を楽しむのが、ふたりの大切な時間となっています。
小さいころから顔に違和感を感じ、遺伝子の変化が原因であることを知ったとき、最初は受け入れられなかったそうです。しかしお母さんから「それは個性だよ、普通って何だろう?」と励まされ、自分の顔を受け入れられるようになったとのこと。生活の中で不便なことはあるものの、「仕方がないこと」「これからも付き合っていく」と前向きな姿勢を見せました。「もっと苦しんでいる人もいる。自分がオドオドしていられない」という言葉が印象的でした。
ファシリティドッグ「アイビー」がくれた癒し
番組では、病院で活躍するファシリティドッグ「アイビー」に支えられた患者たちのメッセージも紹介されました。
・14歳のトミアキさんは、再生不良性貧血の治療中にアイビーと出会い、安心感を得られたといいます。感謝の気持ちから、毎日アイビーの絵を描くようになり、将来は絵を仕事にしたいという夢も生まれました。
・6歳のジュリさんは、痛い注射でもアイビーがそばにいてくれると頑張れると話しました。現在は急性リンパ性白血病の治療中です。
・40歳のユカリさんは、18トリソミーという染色体異常のある娘を出産し、不安が大きかったものの、娘の笑顔に救われたと振り返ります。リクエストは舟津真翔の「大切」でした。
小児がんと向き合うケンスケさんの音楽との出会い
続いてラジオに来たのは16歳のケンスケさん。中学1年のとき、横紋筋肉腫という小児がんの一種と診断され、最初は「なぜ自分が」とショックを受けて泣いたそうです。入院中に出会ったのが音楽でした。THE ALFEEの「星空のディスタンス」に魅せられ、エレキベースを独学で始めたといいます。入院しながらもライブに足を運び、音楽との出会いが大きな力になりました。
再発が分かったときには「今までの努力はなんだったのか」と絶望もしましたが、「病気になったらなったで、付き合うしかない」と切り替える力を身につけたと語りました。将来はバンドを組んだり、PA(音響)関係の仕事をしたいという夢も持っています。リクエストは、ライブで最後に演奏された「Pride」でした。
摂食障害の経験を語る16歳のマナミさん
摂食障害と向き合っているのが、16歳のマナミさん。小学6年生のとき、体型をからかわれたことがきっかけでダイエットを始め、やがて食事をほとんどとれなくなっていきました。体重は20kg台まで落ち、食べることへの恐怖が強まりました。
親に迷惑をかけたくないという気持ちから相談できず、苦しみを抱え込んでいたマナミさん。しかし、医師や看護師の助けを受けることで、少しずつ自分の気持ちを話せるようになりました。「入院は辛かったけど楽しかった」と振り返りながら、今も通院を続けています。リクエストはTWICEの「Feel Special -Japanese ver.-」。
子どもと家族のつながりを感じたメッセージたち
・リンゴさんは、心の病棟に入院している息子と手紙を交わすことで、言葉では伝えられない気持ちを知ることができたといいます。「一緒にいることだけが愛じゃない」と気づけたとのこと。リクエストはMISIAの「AMAZING LIFE」。
・ハルキママさんは、PICUに入院中の2歳の息子さんの話をしました。重い心疾患を持ち、何度も手術が必要ですが、医師や看護師が小さな喜びを一緒に喜んでくれることに励まされているそうです。リクエストは優里の「ビリミリオン」。
最後に
今回の『病院ラジオ』では、子どもたち一人ひとりの人生のストーリーが、ラジオというかたちで優しく、力強く語られました。病気や障害、心の悩みを抱えながらも、支えてくれる家族や医療スタッフ、音楽との出会いを通して、それぞれが前向きに歩もうとする姿が胸を打ちます。サンドウィッチマンのあたたかな進行が、その思いを丁寧に届けてくれました。
東京都立小児総合医療センターという場所で、生まれた“涙と笑顔”の物語。この放送は、命と向き合うすべての人にとって、大切なメッセージとなったはずです。
コメント