外国人旅行者が急増中!富士山・あしかが・佐賀まで人気スポット大調査
2025年6月14日放送のNHK「うなぎのぼりLAB」では、“人が集まる場所に何がある?”をテーマに、訪日外国人の動向を詳しく紹介しました。今回はインバウンド編として、外国人旅行者がどこへ向かい、なぜその場所が人気なのかを探る内容でした。スマートフォンの位置情報や現地取材をもとに、今注目の観光地が紹介され、地方再生のヒントとなる取り組みも紹介されました。
富士山が見えるコンビニが話題に
山梨県・河口湖エリアは、いま外国人旅行者の間で特に人気のスポットとなっています。このエリアは東京から直通バスでおよそ2時間で行けるため、日帰り観光も可能です。中でも注目されているのが、富士山を背景に撮れるコンビニ前の撮影スポットです。SNSでは「現代版・富嶽三十六景」と呼ばれ、日本的な風景と日常が交差する場所として外国人の心をつかんでいます。
イギリスから訪れたルーシーさんは、さらにその魅力を求めて新倉山浅間公園へ向かいました。ここでは、富士山と五重塔、そして慰霊塔を同時に望める絶景が広がり、展望デッキへ続く長い行列ができるほどの人気ぶりでした。ルーシーさんも列に並び、展望台からの景色をカメラに収めていました。
取材班が訪れたのは、富士山の麓にあるスキー場エリア。ここでも思わぬ風景が広がっていました。スキーシーズンが終わったにもかかわらず、オフシーズンにも関わらず大勢の外国人観光客が集まっていたのです。彼らの目的は、富士山と花火を組み合わせた特別イベント。このイベントは完全予約制で、チケットの価格は3万円から20万円と幅広く、宿泊や観覧場所のランクによって異なります。
以下の点がイベントの特徴です。
・打ち上げ花火は国内屈指の花火師たちによって演出されている
・富士山のシルエットと融合するように花火が打ち上がる演出が最大の魅力
・静かな山麓の夜空に迫力ある音と光が広がり、訪れた人々の記憶に残る体験となっている
このイベントについて、番組に出演していた綾小路翔さんは、サザンオールスターズ、Mr.Children、B’z、GLAYが一堂に会するような豪華さだと例えていました。あくまでも例えではありますが、それほど演出が豪華で、特別な空間が創り出されているということです。
このように、富士山の持つ圧倒的な存在感と、日本ならではの文化や自然との組み合わせが、訪日外国人の心を強く惹きつけていることがよくわかります。日常にあるコンビニや、公園、スキー場といった場所でも、視点が変われば世界に誇れる観光地になることを実感させる例となっています。
あしかがフラワーパークの奇跡と工夫
栃木県足利市にある「あしかがフラワーパーク」は、外国人旅行者にも高い人気を誇る花の名所です。特に注目を集めるのは、県指定天然記念物にもなっている大藤棚です。園内に広がるその藤棚は100メートル四方に広がるスケールで、訪れた人々を圧倒します。
藤の見頃は4月下旬から5月上旬のわずか2週間ほどですが、その短い期間に40万人以上の来園者が訪れるほどの賑わいを見せます。2014年にはアメリカのCNNから「世界の夢の旅行先10カ所」の一つとして選ばれ、海外からの注目も一気に高まりました。
園内の藤の花は、見た目の美しさを最大限引き出すために8万房以内に花数を調整しています。藤の幹全体に十分な栄養を届けるための制限であり、花が自然に美しく垂れる理想的な長さに成長するよう手入れされています。この細かな調整が、来園者にとって忘れられない景色を作り出しているのです。
さらに、10月から翌年2月にかけてはイルミネーションイベントが開催されます。冬の園内はLEDで幻想的に彩られた光の世界へと変貌し、藤の季節を知らなかった人々にもパークの存在を知ってもらう機会になっています。これにより「次は本物の藤を見たい」と再来園を促す循環が生まれています。
過去には人気の高まりとともに交通渋滞や混雑といった課題も生じました。そこで足利市は対策として、アクセス性の向上を目的に新駅を開業させました。この整備によって、国内外からの来園者がより快適に訪れることが可能となり、地域経済にも大きな波及効果をもたらしています。
このように、あしかがフラワーパークでは花の魅力を最大限に引き出す技術と工夫、そしてリピーターを生むための仕掛けが随所に散りばめられており、日本ならではの四季と文化を伝える場として大きな役割を果たしています。
佐賀で注目を集めるスポットと取り組み
訪日外国人旅行者の増加は都市部だけでなく、地方都市にも確実に広がりを見せています。その代表例として注目されているのが、佐賀県です。アクセスの要となっているのは九州佐賀国際空港で、韓国からの直行便の増加が背景にあります。特に韓国の人気YouTuberが「片道5000円で行ける日本の穴場」として紹介したことが大きな話題となり、韓国からの旅行者が急増しました。
観光客が到着後に訪れるのは、樹齢3000年以上のご神木で知られる武雄神社です。厳かな空気が漂う境内で、訪問者は静かに手を合わせ、写真を撮る姿が目立ちました。続いて足を運ぶのが武雄市図書館です。ここは単なる図書館ではなく、書籍だけでなく雑貨や漫画も購入できる複合型施設で、カフェスペースでは飲み物片手にリラックスする観光客の姿が見られました。
この図書館は以前の施設を大きく改修したもので、来館者を増やすためのリニューアルが行われています。館内のデザインやコンセプトは、韓国・ソウルにある大型図書館のモデルともされており、相互に注目を集める文化交流の場となっています。韓国で話題になったことで、武雄市図書館の来館者数も大きく増加しました。
さらに、有田町では陶芸体験ができる窯元が外国人旅行者に人気を集めています。特に注目されているのが、有田焼の“詰め放題サービス”です。価格は6000円と1万2000円の2種類で、指定のカゴに好きなだけ詰めて持ち帰ることができます。
このサービスは、あるブラジル人スタッフの一言から生まれました。在庫として倉庫に眠っていた大量の有田焼を見て、「どうしてこんなに美しいものを眠らせているのか」と疑問を持ったのがきっかけです。そこから“もったいない精神”と観光体験を組み合わせた企画が誕生し、現在では他の窯元からも「在庫を引き取ってほしい」との依頼が相次ぐほどの人気ぶりとなっています。
佐賀県ではこのように、空港・自然・文化施設・伝統工芸が連携し、外国人旅行者を呼び込む地域づくりが進んでいます。都市部にはない、静かでゆったりとした空気と体験型の観光資源が、海外からの注目を集めているのです。
旅行者が見つけた日本の日常の魅力
今回の番組では、日本人にとっては当たり前のように感じられる「日常の光景」が、外国人旅行者にとってはとても新鮮で魅力的に映ることが紹介されました。たとえば、ドライブインや地方の小さなスーパー、のどかな牧場の風景など、日本の生活文化に触れられる場所が、思わぬ観光資源として評価されているのです。
番組では、千葉県のマザー牧場で開催されている「歩け歩け大会」も取り上げられました。このイベントは地元の人々が健康のために参加する催しですが、広大な牧草地を歩くという体験そのものが外国人にとっては特別な観光体験になります。澄んだ空気や風の音、動物の姿など、都市では味わえない空間が旅行者を魅了しています。
さらに、福岡では「アンパンマンこどもミュージアム」も人気を集めていると紹介されました。特に韓国人旅行者の間で高い評価を得ており、家族連れを中心に多くの人が訪れています。日本のキャラクター文化が海外にも広がっていることを象徴する施設で、子ども向けの遊び場やグッズショップ、体験型の展示などが人気の理由とされています。
このように、今のインバウンド観光では、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンのような大型施設に加え、地域ならではの施設や取り組みにも光が当たるようになってきています。観光地として整備された場所だけでなく、「日常」の中にある本物の日本らしさが、海外の旅行者にとってはかけがえのない体験となっているのです。
地方空港が果たす新たな役割
外国人旅行者の入り口となる空港の話題も取り上げられました。これまで成田、羽田、関空など大都市圏が中心でしたが、地方空港の便数が増え、アクセスの選択肢が広がっています。特に熊本空港では、台湾の半導体企業の工場誘致が影響し、台湾との便が拡充されています。
今回の特集を通じて、日本各地に眠る魅力や、それを引き出そうとする人々の努力が浮き彫りになりました。今後のインバウンド需要に応えるヒントが詰まった回でした。地方の小さな工夫や日常の風景が、世界の旅行者の心を掴んでいることがわかる内容でした。
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