SNSと選挙情報の注意点を徹底整理
2025年6月13日放送のNHK総合『首都圏情報 ネタドリ!』では、SNSが身近になった今の時代における選挙情報の受け取り方や注意点について特集されました。東京都議会議員選挙の告示日に合わせて、SNSが選挙にどう影響しているのか、有権者として何を気をつけるべきかを番組で紹介しました。今回はその放送内容をわかりやすくまとめます。
SNS時代の選挙情報の受け止め方とは
番組の冒頭では、東京都議会議員選挙の告示日を迎えたことにあわせて、「SNS時代の選挙情報の受け止め方」がテーマとして取り上げられました。選挙に関する情報はこれまでテレビや新聞といったマスメディアが主な情報源とされてきましたが、近年では変化が起きています。特にSNSや動画サイトの影響力が高まっている点に注目が集まりました。
番組では、2023年に実施された兵庫県知事選挙の出口調査の結果をもとに、有権者が実際にどのような情報を参考にして投票行動を決めているのかが紹介されました。
-
「テレビや新聞」を参考にした人は全体の24%
-
「SNSや動画サイト」を参考にした人は全体の30%
この調査結果から、SNSがテレビ・新聞を上回る割合で選挙情報源になっているという実態が示されました。これは、情報収集の方法が個人の手元のスマホ中心にシフトしていることを意味しています。
また、スマホやSNSが選挙の情報収集に与える影響は、単なる便利さにとどまりません。多様な意見に触れやすくなる反面、誤情報や偏った内容にも出会いやすくなるという特徴があります。
-
SNSでは、候補者本人の投稿や支持者による応援メッセージ、街頭演説の一部を切り取った動画などが投稿される
-
その情報は「いいね」や「シェア」によって急速に広がる傾向がある
-
投稿される情報の中には、正確性の確認が不十分なものや感情的な意見も混じる
こうした現状をふまえ、番組ではSNSが選挙情報の主な入り口になってきている一方で、情報の真偽や発信元の確認がこれまで以上に重要であると指摘していました。マスメディアは公平性や正確性が強みであるのに対し、SNSはスピードや情報量では勝っている反面、信頼性に課題があるとされました。
視聴者にとっても、「どこから情報を得ているのか」「その情報は本当に信頼できるのか」を意識して行動することが、これからの選挙参加には欠かせない視点になってきています。情報に対して無防備になるのではなく、ひとつひとつを丁寧に見極める力が求められる時代です。
選挙候補者のSNS活用と変わる選挙戦略
番組では、候補者自身がSNSの特性を学ぶセミナーの様子が紹介されました。東京都内で行われたこのセミナーには、およそ30人の候補者や現職の政治家たちが参加し、選挙におけるSNSの役割や、どのように発信すれば効果的かを学んでいました。これは、従来の方法だけでは選挙戦に勝てない時代になっていることを示しています。
これまで選挙に必要とされてきたのは「地盤・看板・鞄」の三つの要素でした。
-
地盤:支援者や地域の後援組織
-
看板:知名度や肩書き
-
鞄:選挙資金や後援会の財政力
しかし、今ではこれに加えて「ネットの地盤」が新たな要素として加わっています。SNSの活用によって、特定地域に限らず全国に向けてメッセージを発信できるようになり、知名度の拡大だけでなく、資金の面でも大きな変化をもたらしています。
政治資金の話題では、政治家個人への寄付が年間150万円まで認められているという制度も紹介されました。SNSで自らの活動や理念を発信することで、多くの人の共感を得られれば、特定の地元以外からも寄付が集まる可能性があります。つまり、ネットが新たな「資金の入り口」として注目されているのです。
また、メディアの利用時間についても変化がありました。2022年の調査では、スマートフォンがテレビを初めて上回り、最も接触時間の長いメディアになったことが明らかになりました。
-
SNSや動画サイトは、誰でも情報発信ができる
-
スマホは常に手元にあり、アクセスのしやすさが高い
-
情報が即座に届き、拡散されるスピードが早い
一方で、誰でも投稿できるという自由さは、情報の質や正確性が保証されないという側面もあります。候補者側も有権者側も、発信や受け取りにおいて注意が必要だと番組では伝えていました。
このように、SNSは選挙戦の中心的なツールへと変化しており、使い方次第で結果を左右する大きな要素になりつつあります。今後の選挙では、ネット上での発信力や情報の扱い方が、当落に直結する時代になっていくことが予想されます。
切り抜き動画と選挙への影響
番組では、SNS上で選挙情報として拡散される**「切り抜き動画」**が大きな影響力を持つようになっていることが紹介されました。切り抜き動画とは、街頭演説や国会答弁の一部を短く編集し、印象的なシーンだけを抜き出して投稿する形式の動画です。情報のスピード感や視聴者の関心を引く構成が特徴で、多くの人に短時間で広まります。
-
こうした動画は、無許可での使用が著作権法に抵触する可能性がある
-
一部の投稿者は、収益目的で切り抜き動画を大量に作成・拡散している
-
政治的意図の有無にかかわらず、再生数や広告収入を得る目的で内容が選ばれることがある
番組で取り上げられた具体例として、2023年11月に行われた兵庫県知事選挙のケースがあります。選挙期間中、斎藤元彦氏を支持する切り抜き動画が告示直前から急増し、SNS上で多くの再生回数を記録しました。視聴者の印象に残りやすい内容がバズり、結果的に選挙結果に影響を与えた可能性があると指摘されました。
東京大学の鳥海不二夫教授が行った投稿の変化分析では、以下のような流れが明らかになっています。
-
選挙前は批判的な投稿がやや多かった
-
告示直前に斎藤氏を支持する切り抜き動画が複数バズを記録
-
それ以降は、支持的な投稿が急増し、肯定的な内容が多数派に
これは、投稿者が意図的に人気が出そうな候補を選び、再生数を狙って動画を量産している傾向を示しており、視聴者はそれに気づかないまま一方向の情報ばかりを見てしまうという危険性があるとされました。
このような情報環境の中で起こる現象として「フィルターバブル」も紹介されました。フィルターバブルとは、自分の好みや行動履歴に基づいて、同じ傾向の情報ばかりが表示される状態のことです。
-
SNSのアルゴリズムが、過去に見た動画や検索内容に基づいて情報を選別
-
意識しなくても偏った情報に囲まれる状況になる
-
他の視点や意見に触れる機会が減り、判断の幅が狭くなる
番組では、SNSを使う際には、こうした仕組みに注意して、情報の出どころや背景に目を向ける姿勢が必要だと呼びかけていました。特に選挙のように一票が重要な意味を持つ場面では、冷静に複数の視点を確認する意識がますます求められています。
一般市民の経験から学ぶ選挙情報との向き合い方
番組では、SNSを通じて広がる選挙情報の影響について、一般市民の実体験が紹介されました。会社員のゆいさんは、選挙期間中に見かけたある候補者に対する批判的な投稿を信じてしまったことがありました。その投稿は、「ある候補は政策の説明が他の候補より短い」という内容で、ゆいさんはそれを見て「この人は本気ではないのかもしれない」と感じ、すぐにその情報を友人にも伝えてしまったといいます。
しかし、投票日が近づいたある日、新聞記事でその情報が事実と異なっていたことに気づきました。実際には候補者本人の政策は詳細に説明されており、SNS上の投稿は一部の資料だけを取り上げたものだったことがわかったのです。ゆいさんはそのとき、「もっとよく調べてから行動すべきだった」と強く後悔したと語りました。
この経験は、「確証バイアス」という心理の影響を受けた一例と紹介されました。確証バイアスとは、以下のような心の動きです。
-
自分がすでに信じていることを支持する情報ばかりを集めてしまう
-
反対の意見や異なる事実には無意識に目を向けなくなる
-
結果的に偏った判断をしてしまう可能性が高くなる
ゆいさんのケースでは、「この候補は信頼できないかもしれない」という最初の印象が、SNSでの投稿によって強化され、その後の情報収集にも影響を与えてしまいました。
こうした事例は、SNS時代において誰にでも起こりうる問題です。特に選挙のように一つひとつの判断が重要な意味を持つ場面では、感情的な反応ではなく、冷静で多角的な視点が求められます。
番組ではこの体験を通じて、「情報は鵜呑みにせず、出典や裏付けを確認することの大切さ」を改めて呼びかけていました。自分の考えに合った情報だけに頼らず、広い視野を持って事実と向き合う姿勢が、信頼できる選択につながると締めくくられていました。
SNS時代における選挙報道の在り方
番組の最後では、今後の選挙報道の在り方についても触れられました。SNSは便利なツールである一方で、間違った情報も多く出回る場です。有権者一人ひとりが、情報の出どころや真偽を確認する意識を持つことが、よりよい選挙につながると伝えられました。
このように、2025年の東京都議選に合わせた今回の特集では、SNSとの上手な付き合い方を具体例を交えながら分かりやすく解説していました。SNSを活用する候補者の増加や、有権者の情報源の変化を踏まえて、選挙と情報リテラシーを考えるきっかけとなる放送でした。
コメント