特殊詐欺を防ぐ!AIがかけ子を再現
東京都北区で行われた新しい特殊詐欺対策の取り組みは、AIの力を使って高齢者が実際の詐欺の手口を体験できる仕組みです。この体験会では、AIが「かけ子」と呼ばれる詐欺犯の役を演じ、実際にかかってくるような電話の会話をリアルに再現します。高齢者の方々は、そのやりとりを体験することで、だまされやすい状況を自分で理解できるようになっています。
体験者の生体データをAIがリアルタイム分析
さらに特徴的なのは、AIがただ会話をするだけではなく、体験者の呼吸数や心拍数などの生体データをセンサーで計測している点です。こうしたデータをAIがリアルタイムで分析し、いつもと違う変化があると「だまされそうな状態」と判定します。このときの身体の反応がAIに学習されていくことで、精度はどんどん高くなっています。
家庭での見守りにも応用が期待されている
この仕組みは今後、家庭での見守りにもつながると期待されています。家の中で高齢者が誰かと電話をしていて、その時に呼吸や心拍に異常な変化があった場合、AIが危険な兆候と判断し、家族や地域の関係者に知らせるシステムへと発展させていく構想があるそうです。特殊詐欺は年々手口が巧妙になってきていますが、このようにAIが感情や反応までとらえる技術が加わることで、より早く、より確実に被害を防げる可能性が広がっています。
この取り組みは、東洋大学と警察が連携して進めているプロジェクトで、技術と現場の知見が融合した先進的な例として注目されています。AIの進化が、高齢者の安全を守るための大きな味方になっていることが、今回の事例からもよく伝わってきます。
アプリで認知症の兆候をチェック
東京・品川区のクリニックでは、AIを活用した認知症判定アプリが導入され、診察の現場で役立てられています。このアプリは、スマートフォンやタブレットなどの画面上にいくつかの質問を表示し、一問ごとに30秒以内で回答するという形式です。回答の内容やスピード、答え方の特徴をAIが分析し、すぐに結果が画面に表示されます。
軽度認知障害の早期発見に役立つ
このアプリで表示されるのは、「健常相当」「認知機能の低下の可能性あり」などの判定です。医師はこの結果を参考情報として受け取り、あくまでもAIだけで診断はしないとしたうえで、気づきのきっかけやスクリーニングとして活用しています。特に注目されているのが、「軽度認知障害(MCI)」と呼ばれる段階を早く見つけることです。この段階で変化に気づければ、早期に治療や生活改善を始めやすく、認知症への進行を防ぐ可能性も高まると言われています。
来年度中の保険適用も目指す
現在は一部の施設で試験的に使われている段階ですが、来年度中には保険適用を目指して調整が進められています。これが実現すれば、より多くの高齢者が気軽にチェックできる環境が整い、家族や本人の不安を少しでも早く解消できるようになります。
このように、AIによる認知機能チェックは、診断前の“気づき”を得るための新しい道具として期待されています。毎日の健康管理と同じように、心の健康にも目を向ける時代が近づいています。
AIが運動をサポート!歩行機能も向上
千葉県の「トータルリハセンター北松戸」では、AIを使って利用者ごとに最適な運動メニューを作成するリハビリ支援が進められています。この取り組みでは、AIが利用者の年齢や体力、歩行スピード、筋力などの情報をもとに、その人に合ったトレーニングを提案。一人ひとりにぴったりな内容で、無理なく運動を続けられる工夫がされています。
杖を手放して歩けるようになった利用者も
番組で紹介されたのは、継続的にAIのメニューを実践した斎藤守さん。かつては杖が手放せなかったという斎藤さんも、AIに合わせた運動を続けることで、今では杖なしで外を散歩できるほどに回復しました。このように、日常の「歩く」という基本的な動作にもAIのサポートが役立っていることが分かります。
約47%の人が歩行機能を改善
センターでの実績として、およそ47%の利用者が歩行機能の改善を実感しているというデータも紹介されました。AIによる運動提案は、理学療法士の手助けとして機能し、より多くの人に継続可能な運動習慣を提供できるようになっています。
このような取り組みは、高齢者が元気に自立して暮らすための新しい選択肢として注目されており、今後は他の地域や施設への広がりも期待されています。AIのサポートが、体を動かすきっかけを生み出し、健康を支える一助になっていることが実感できる事例でした。
会話で元気になる!対話型AIの可能性
大阪府で一人暮らしをしている71歳の女性・森本ちず子さんは、日常の中で話し相手がいないことに寂しさを感じていたそうです。そんな森本さんに息子さんがプレゼントしたのが、対話型AIでした。このAIは、これまでに集められたおよそ12万人分の会話データを学習していて、その人の性格や話し方に合わせた返答ができるように設計されています。朝のあいさつや日常の話題から、悩みごとの相談まで、まるで家族のように自然に会話ができる仕組みです。
昭和の話題もおまかせ!シニア向けに調整されたAI
さらに、神奈川県・横須賀市では、昭和の出来事や昔の暮らしを学習した対話型AIを使った実証実験が行われました。これは、同年代の思い出話などに共感できるように作られたAIで、シニア世代の会話がより弾むように工夫されています。参加者の中には、「昔話をしたことで心が落ち着いた」「懐かしい記憶がよみがえった」という人も多く、会話をきっかけに気持ちが前向きになる効果が確認されました。
人とつながる力が脳の健康にも
実験の結果、AIと話をすることで“人とつながりたい”という気持ちが高まり、その後実際に人と会う行動に移る人も増えたとのことです。これにより、孤独感の軽減や、脳のストレスの軽減につながり、認知症予防の効果も期待できるとされました。
このように、対話型AIは単なる道具ではなく、心の支えにもなる存在として、今後さらに広がっていく可能性を感じさせる取り組みでした。声をかけるだけでつながれる相手がいる安心感が、シニアの毎日を少しずつ明るく変え始めています。
AIは学習して性格に合わせる時代へ
今のAIは、ただ質問に答えるだけでなく、会話を重ねることで相手の性格や好みを学び、より適切な対応ができるよう進化しています。使えば使うほど、言葉の選び方やタイミングがその人に合ってくるため、まるで人と話しているような感覚に近づいてきています。
この進化について、東京大学の松尾豊教授は、AIがこれからのシニア世代の暮らしを支える重要な存在になると話しました。高齢化が進むなかで、一人で過ごす時間が増える人も多く、AIがそばにいることで孤独感を減らしたり、気持ちの整理を手伝ったりと、生活全体の支えになっていく可能性があるといいます。
すでに日常に取り入れている人も
番組では、英会話の練習やちょっとした相談、文章の作成、写真の加工など、日常のさまざまな場面でAIが活用されている事例も紹介されました。例えば、ある人はAIで写真をディズニー風に加工したり、ピカソ風にアレンジして楽しんでいるとのことです。こうした使い方は、日々の楽しみや趣味の幅を広げてくれる手助けにもなっています。
さらに、情報通信白書のデータによると、60代の人のうち約15.5%が生成AIを利用した経験があるということもわかりました。これは、AIが特別な技術を持つ人だけでなく、誰でも気軽に使える存在になってきていることを示しています。
AIが人の性格を学び、より自然に寄り添えるようになる時代。高齢者にとっても無理なく、自分のペースで使える便利な相棒になりつつあることが、今回の番組を通して伝わってきました。
AIの未来と課題
番組の終盤では、AIが持つ可能性と、向き合うべき課題の両面についても伝えられました。AIとの会話によって安心感を得たり、元気になったりする人が増えている一方で、使い方によっては注意が必要な面もあります。
特に医療の現場では、AIによる判断をどこまで信頼するか、もし間違いがあった場合の責任は誰が負うのかといった問題が指摘されています。また、対話型AIに依存しすぎてしまうと、家族や周囲の人の声に耳を傾けなくなる危険性もあると言われています。便利さが進むほど、人とのつながりのバランスも意識しなければなりません。
世界ではルール整備も始まっている
中国ではすでに、AIを開発する企業向けに安全性などを定めたガイドラインが整備されています。こうした制度があることで、ユーザーも安心してAIを活用しやすくなっています。日本ではまだそのようなルール作りは始まったばかりですが、今後は技術の進化と同時に、安全に使うための仕組みづくりが求められると番組は伝えていました。
AIは確かに便利で、多くの人の助けになりますが、正しく使うための知識やルールもこれからの社会には必要不可欠です。未来を見すえながら、安心して使える環境づくりが求められています。
このように、今回の「ネタドリ!」では、AIがどのようにシニアの暮らしを支えているのか、さまざまな角度から紹介されました。未来の話ではなく、もう私たちのすぐそばにあるAI。身近な便利さだけでなく、人の心に寄り添う可能性も秘めていることが、番組を通してよくわかりました。シニアにとっても、AIは力強い味方になりそうです。
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