100年続く“町のよろず屋”に密着
千葉県横芝光町にある「村田屋本店」は、1924年に創業した老舗の金物店です。地元に根ざした“町のよろず屋”として、工具や建材だけでなく、日用品や農業資材まで約2万種類もの商品をそろえています。今回の「ドキュメント72時間」では、そんな村田屋本店を舞台に、地域の人々がこの店にどのように関わり、どんな思いを抱いているのかを、3日間にわたってじっくりと見つめました。
次回のドキュメント72時間 名古屋 新幹線ホームのきしめん店
初日は防音工事の資材探しからスタート
千葉県横芝光町の村田屋本店での3日間の記録は、6月4日水曜日の朝から始まりました。開店直後に最初に訪れたのは、地元で工務店を営む男性。彼は近隣の空港施設に隣接する住宅の防音工事に使う「太鼓鋲(たいこびょう)」を探しに来ていました。棚には釘やネジ、ボルトなどの金物だけでなく、家庭用のフライパンや工具もぎっしりと並び、生活や仕事に役立つ商品がひと通りそろう環境が整っています。
鍵を求める人、農具を買う人、それぞれの事情
その後も店にはさまざまな人がやって来ました。コンビニを経営する男性は店舗用の鍵を探しており、また、お米を保管している倉庫の鍵が壊れたため新しいものを求めて来店した男性もいました。店内には住宅用から倉庫用まで豊富な鍵がそろっていて、利用者の多様なニーズに応えています。
農家の男性が畑で使うフォークを探しに来た場面もありました。農具も取り扱うこの金物店は、農作業を支える強い味方です。鎌やスコップ、有刺鉄線などが整然と並び、地域の農家にとって日常的に頼れる場所となっています。
夕方も続く来客、親子の職人や建築作業員の姿
夕方には、内装業を親子で営む男性たちが現れ、道具の補充などを目的に店を訪れていました。現場に向かう前の立ち寄り先として、日常の一部になっていることがうかがえます。さらに、住宅の基礎工事に従事している41歳の男性も来店し、必要なパーツを探していました。
店内は閉店時間の午後7時までにぎわいが続き、地域のさまざまな仕事を支える拠点としての姿がしっかり映し出されていました。村田屋本店は、道具を売るだけでなく、地域の暮らしや働く人々のリズムに寄り添いながら、今日も静かに支え続けています。
早朝から始まる金物店の一日
6月5日(木)の朝、村田屋本店の開店時間はまだ先にもかかわらず、すでに駐車場には車が止まっていました。車内にいたのは毎朝訪れるという常連の男性客。必要な資材を確実に手に入れるため、開店前からスタンバイするその姿が、この店の信頼の深さを物語っていました。
朝一番に集まる職人たちと活気あるスタート
7時半の開店と同時に、職人たちが次々と来店します。作業着姿の人々がカゴを片手に、釘や板金用の材料、手袋などを手際よく選んでいきます。電話注文も立て続けに入り、スタッフが次々と応対。朝の時間帯は、工事現場に向かう前の最後の仕込みのような時間帯で、金物店はまさに“現場の玄関口”としての役割を果たしています。
有刺鉄線や修理資材…農と暮らしを支える商品たち
午前中には、畑を守るための有刺鉄線を買いに来た農家の女性が来店。害獣対策や作物保護のために必要な道具が、ここにはしっかりとそろっています。続いて現れたのは、鶏小屋の修理を計画している男性。番組ではその男性に同行し、実際の養鶏場の様子も紹介されました。鶏舎の木製柵や金網の張替えには、釘・ドリル・金具といった複数の道具が必要で、金物店の商品の幅広さが役立っていることがよくわかります。
畑仕事を続ける女性や社長の姿も
夕方には、畑を耕しているという67歳の女性が来店し、必要な道具を買い足していました。農業を続けるために、こまめな道具のメンテナンスや買い替えは欠かせません。そしてこの日、村田屋本店の社長自身も登場。日々のお客さんとの交流や店への思いが語られ、この店が100年にわたり地域に根ざしてきた背景を感じさせる場面となりました。
朝の忙しさから夕方の落ち着いた時間まで、村田屋本店には一日を通じてさまざまな人の暮らしと仕事が交差していました。大工、農家、飼育業、職人、そして家庭の人たちまで、それぞれの目的と理由があってこの店を訪れ、頼りにしている姿が印象的でした。
実家の農業を考え始めた女性の来店
6月6日(金)の朝、村田屋本店に現れたのは、36歳の女性。彼女は農業を営む父とともに実家で暮らしており、これまでは東京や他県など、いくつもの場所で生活してきたといいます。しかし年齢を重ねる中で、地元や家のこと、そして家業である農業の将来について少しずつ意識するようになったと話していました。彼女の姿は、地域との関わりを見つめ直す世代の代表とも言えるものでした。
畑整備に励む高齢男性や現場監督の女性も
続いて店に訪れたのは、畑を整備しているという74歳の男性。体力的に大変な作業が増えてきているものの、道具を使いこなして今も現役で畑作業に取り組んでいるとのこと。彼が手にしていたのは、草刈り用の鎌や保管容器など、日々の農作業に必要なアイテムでした。
さらに午後には、解体現場の女性監督も登場。彼女は50人もの職人をまとめる立場で、現場で必要な道具を見極め、自ら足を運んで調達しているとのことでした。現場を管理する女性リーダーという存在が金物店に現れたことで、店の客層の幅広さがより一層明らかになりました。
この日は、農業・解体・家庭、それぞれの場面で必要とされる道具を求める人々の姿が映し出され、村田屋本店が単なる物販の場ではなく、地域社会を動かす力の裏側を支える重要な拠点であることが感じられました。どんな世代や立場の人にとっても、必要な道具がここにある——そんな安心感が伝わる1日でした。
土曜日は常連の大工が登場
6月7日(土)、番組の最終日には、この店に何十年も通い続けているという大工の男性が登場しました。手にしていたのは、長年使っている愛用の工具。金物店のスタッフにそのメンテナンス方法を確認したり、新しく買い替えるべきかを相談したりと、店との距離感の近さが印象的でした。
道具に込められた時間と信頼
店内では、古くなった道具を大切に扱う姿が見られ、単に「買う」場所ではなく、使い方や修理についても気軽に相談できる環境が整っていることが伝わってきました。村田屋本店のスタッフも、大工の用途や好みをよく理解していて、商品の選び方や扱い方について具体的にアドバイスをしていました。
この日の様子からは、100年の歴史を持つ金物店が、地域の職人たちにとって欠かせないパートナーであることが強く感じられました。道具を通して築かれた信頼関係は、今も変わらず受け継がれています。土曜日の店内は、静かに、しかし確かなつながりを映し出していました。
村田屋本店の魅力と地域のつながり
村田屋本店は、ただの金物店ではありません。STIHLの正規販売店として、チェーンソーや刈払機など専門的な機器の販売と修理も行い、プロの職人からも厚い信頼を得ています。約2万種類の商品を取りそろえ、どんな小さな相談にも丁寧に対応する姿勢が、地域の人たちにとって安心感を与えているのです。
営業時間は平日と土曜の7:30~19:00、日曜と祝日はお休み。最寄りのJR横芝駅からは徒歩で約17~25分とやや距離がありますが、車でのアクセスがしやすく、多くの常連客に支えられています。
今回の放送では、「道具を買う」という行動の奥にある、それぞれの暮らしや人生の背景が丁寧に描かれていました。100年続く金物店が、ただ物を売るだけでなく、人と人の信頼を築く場所であり続けていることがよく伝わる内容でした。
次回のドキュメント72時間 名古屋 新幹線ホームのきしめん店
参考情報
番組:ドキュメント72時間
放送日:2025年7月18日(金)22:00~22:30
放送局:NHK総合
取材店舗:村田屋本店(千葉県山武郡横芝光町)
アクセス:https://www.town.yokoshibahikari.chiba.jp/
店舗情報:https://www.stihl.co.jp/dealer-detail.aspx?dealerid=29158
ホームセンターと何が違う?個人金物店の魅力

ここからは、私からの提案です。地域の暮らしに根づいた個人金物店には、大型ホームセンターにはない魅力がたくさんあります。ただ道具を売るだけでなく、一人ひとりの悩みに応えてくれる対応力や、古い道具への知識、地域との深いつながりなど、行ってみて初めてわかる価値が詰まっています。この記事では、そんな金物店の魅力を、ホームセンターとの違いを交えながら具体的にご紹介します。
対応のきめ細かさがまったく違う
ホームセンターは広い売り場にたくさんの商品が並び、買いたいものがすぐに見つかるという便利さがあります。しかし個人の金物店では、商品をただ売るだけでなく、お客さん一人ひとりの目的や使い方に応じた提案をしてくれます。たとえば、「この道具が壊れた」と言えば、店主が状態を見て、修理ができるかどうか教えてくれるだけでなく、必要な部品や代用品まで一緒に考えてくれるのです。ホームセンターでは店員さんが担当している売り場が決まっていたり、専門知識を持たないことも多いため、そこまでの対応はなかなか期待できません。
昔の道具や特殊なパーツも見つかる
個人店では今では作られていない古い部品や、一般には流通していないような特殊なサイズの道具などがストックされていることもあります。長年店を続けてきた中で少しずつ集めてきた在庫の中には、「もう売っていないと思っていたけど、ここにあった!」というような掘り出し物が眠っていることも。とくに家族が長く使っていた道具や、職人さんが使い慣れた道具を修理したい時などには、この“在庫の深さ”が心強い味方になります。
会話なしでも安心感がある店の空気
お客さんの方から多くを語らなくても、「あ、これが欲しいのね」とすぐに理解して商品を出してくれるような空気が、個人金物店にはあります。それは、道具や作業をよく知っているからこそできる対応で、若い人にとっても「初めてでも安心して相談できる」と感じさせるポイントです。ホームセンターのように広くて人が多い場所では、何をどう探せばいいか迷ってしまうこともありますが、個人店は“小さいけれど頼れる場所”としての魅力があります。
“町の知恵袋”としての存在価値
地域の人たちの話を聞いてきた経験や、長年商売を続けてきた中で培われた知識が、金物店の店主の中にはぎっしり詰まっています。そのため、道具だけでなく、作業方法や材料の組み合わせなどについても、思いがけないアドバイスがもらえることも。こうした金物店は、道具を売るだけではなく、“暮らしの知恵袋”としての役割も果たしているのです。これはインターネットや大規模店舗では得られない、個人店ならではの大きな魅力です。
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