「追跡 マンション管理の闇」
大規模修繕工事はマンションに住むすべての人のお金と暮らしに直結します。このタイミングを狙って入り込む不正があるとしたら、その影響は計り知れません。今回の番組では、実際に工事会社の社員が住民になりすまし、委員会の議論を操作していた事案が明らかになりました。見えにくい仕組みの中で何が起きていたのか、そしてどう守ればよいのかをまとめます。
大規模修繕工事とはどんなものか
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マンションは築15年前後になると外壁や防水、共用部の老朽化が進みます。そのため12〜15年ごとに大規模修繕工事が行われ、費用はマンションの規模によって大きく変わり、数千万円から数十億円にのぼることがあります。
工事内容は外壁塗装、防水工事、給排水設備の更新など多岐にわたり、住民から積み立ててきた修繕積立金が使われます。住民の代表である修繕委員会は工事内容や業者選定の鍵を握る重要な組織であり、公正さが求められる場です。
神奈川県マンションで起きた“なりすまし事件”の実態
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番組が追ったのは、神奈川県内の大型マンションで起きた不正です。修繕委員会で主導的だった人物が、実は住民ではなく工事会社の現役社員でした。もう1人協力者がおり、どちらも住居侵入の疑いで逮捕されました。
男性住民のもとに「修繕委員会で不正がないか調べたい」と協力を求める連絡が来たことから、なりすましが長期間続いていたことが分かります。謝礼として20万円以上の商品券を受け取っていたことも明らかになりました。2人は処分保留で釈放されましたが、警察の捜査は続いています。
大阪の工事会社が関わったとされる複数の事案
番組が取材したところ、逮捕された社員が所属する大阪の工事会社には、同様のなりすまし疑惑が少なくとも7件あるとされています。会社は回答をしていません。
元従業員は「住民による管理は弱い」と語り、関連会社名義でマンションを所有して委員会に入り込むケースもあると指摘しました。この方法で利益誘導が行われ、工事費が割高になる可能性も示されました。
住民の間で広がる被害共有のネットワーク
複数のマンションで同じ手口が疑われる中、被害を受けた住民同士がつながり、情報共有を始めています。
「自分たちが気づかなかっただけで、同じことが別のマンションでも起きていたかもしれない」
そんな危機感から、コミュニティ内で証拠や体験談を共有し、不正の実態を明らかにしようとする動きが広がっています。
なりすましを防ぐには何が必要か
スタジオでは防止策についても紹介されました。
・顔写真付き身分証で本人確認を義務化する
・管理規約に『利益誘導禁止』を盛り込む
・委員になる条件を明確にする
なりすましを行う会社がマンションの一室を所有している場合、刑事責任を問うことが難しいこともあるため、規約で制限を設けることが重要とされています。
各地で始まった新しい取り組み
東京の足立区では、工事前だけでなく日常的に動く「常設型の修繕委員会」を作り、住民同士が普段から顔を合わせることで外部の介入を防ぐ仕組みが導入されています。
また、横浜市住宅供給公社では、修繕工事の入札を代行するサービスを開始。工事会社の選定プロセスを公的機関が行うことで、不正の入り込む余地を減らしています。
法整備は追いついているのか
大規模修繕工事をめぐる問題はなりすましだけではありません。2025年には公正取引委員会が談合の疑いで大手ゼネコン子会社を含む約30社に立ち入り検査を実施しています。
専門家は「大規模修繕業界は急速に成長したが、法整備が追いついていない」と指摘し、工事会社や設計監理業者の登録制度、違反時のペナルティの明確化など、具体的な制度改革の必要性が語られました。
まとめ
今回の放送では、マンションの大規模修繕工事の裏側で何が起きているのか、その深刻さが明らかになりました。
住民の無関心や仕組みの隙を突くなりすまし、企業による利益誘導の疑い、そして法整備の遅れ。
こうした課題に対しては、本人確認の徹底、管理規約の強化、地域での常設委員会や第三者機関の入札代行など、持続的な対策が求められています。
大規模修繕は住民全員の暮らしに影響する重要なテーマだからこそ、透明性と公正さを守る仕組みが欠かせません。
NHK【クローズアップ現代】止まらない“バッテリー火災” 粗悪品をどう防ぐ?リコール多発時代の新ルール・サイレントチェンジ・安全チェック完全版|2025年12月3日
管理組合で“早めに気づきたいトラブル予兆サイン”を紹介します

マンションでは、見過ごしてしまいがちな小さな変化が、あとで大きな問題につながることがあります。ここでは、実際に多くの建物で見られる“予兆サイン”をさらに詳しく紹介します。どれも、日常の中で住民が気づきやすいポイントです。気になる点が早めに共有されると、修繕費の負担増やトラブルの連鎖を防ぐ力になります。
生活環境・マナー関連のサイン
生活音のクレームが増えてくると、住民同士の信頼が揺らぎやすくなります。足音や家電の音、子どもの声、ペットの鳴き声など、普段は気にならない音が頻繁に話題にのぼるようになると、建物全体の雰囲気が少しずつ変わりやすく、その背景にはコミュニケーション不足やルールの理解不足がある場合もあります。さらに、ゴミ置き場やエントランスの清掃状態が悪化してくると、日常管理が追いついていないサインになります。チラシが散らかったまま残っていたり、ほこりが積もっていたりする状況が続くと、住民の“気づき”が減り、建物全体の質が下がりやすくなります。私物の置きっぱなしや不適切な駐輪が目立つと、ルールへの意識が薄れ、無意識のトラブルが起きやすくなる流れにつながります。
建物・管理状態の劣化サイン
共用廊下の手すりや階段の鉄部にサビや塗装の剥がれが増えてくると、建物の老朽化が進んでいる可能性があります。外壁タイルのひび割れやシーリングの痩せは、見た目には大きくなくても、内部では少しずつ雨水が入り込む危険につながります。こうした変化は放置されやすい場所から静かに始まることが多いため、住民が気づいたときに管理組合へ共有することが本当に重要です。水漏れや排水管の不具合も、初期は少量でも徐々に広がる傾向があり、雨漏りが発生すると修繕費が大きく膨らむケースが少なくありません。
会計・修繕・財政/管理運営のサイン
修繕積立金が十分に確保されていない、あるいは滞納が続いているマンションでは、将来の大規模修繕が予定どおり進まない可能性があります。過去の議事録を見たときに「修繕延期」や「管理組合役員のなり手不足」などが続いていると、意思決定のスピードや組織の体力が弱まっている状態といえます。設備老朽化の記録が複数残っている場合は、建物のどこかで対応が後手になっている可能性があり、さらに大きな費用につながることがあります。
管理運営や意思決定の“ズレ”のサイン
共用部のルールが曖昧、または住民のあいだで統一されていないと、トラブルが重なりやすくなります。床材変更やペット、バルコニーの使い方など、細かな規約が守られないケースが積み重なると、建物全体の秩序が緩みやすくなります。さらに、トラブル発生後に“誰が対応するのか”が不明確だと、記録が残らず、後から状況を追えない問題につながります。住民同士の意見がまとまらず、合意形成ができないまま時間だけが過ぎていくと、修繕のタイミングを逃し、負担が増えてしまうこともあります。
以上のように、小さな変化は大きなトラブルの入口になることがあります。日常の中で気づいたことを共有し、議事録や管理規約を見返す習慣があると、建物を守る力が強くなります。この予兆サインが役に立つと思い、紹介します。
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