止まらないバッテリー火災、その裏側で何が起きているのか
バッテリー火災がなぜ増えているのか。今回の『クローズアップ現代』では、知らない間に危険な製品を手にしてしまう現実と、その影に潜む“見えない落とし穴”を追いかけていました。リコールに気づかないまま使い続けてしまうケース、製造現場で起きる想定外の不正、そして対策の最前線。火災事故の実例をもとに、私たちがどこを見れば危険を避けられるのかを掘り下げていきます。
NHK【明日をまもるナビ】あなたのバッテリー大丈夫?リチウムイオン電池の疑問にお答え “膨らむ原因・自治体の廃棄方法・フェーズフリー事例”まで徹底解説|2025年11月16日
バッテリー火災が相次ぐ現場で見えた問題
番組の最初に取り上げられたのは、ことし7月に静岡県のマンションで起きた火災です。火元とみられているのはリチウムイオン電池を搭載したスピーカーでした。このスピーカーはすでにリコールが進められていたものの、購入者は通知メールを2度受け取っていたにもかかわらず、他のメールに埋もれて気付かなかったと説明しています。通知が届いても見逃してしまう、そんな現実がそのまま事故につながっていました。
同じく7月には、山手線での火災が起きています。原因はリコール対象だったモバイルバッテリー。しかも、同じ製品ではそれ以前に16件もの発火事故が起きていたことがわかりました。リコールは事故が相次いだ後にようやく実施された状況です。輸入販売を行った企業の代表は取材に対し、発火原因の調査を進めても、製造元から協力が得られず原因究明ができなかったと話していました。そのためリコールが遅れてしまったという現場の苦悩も浮かび上がります。
リコールが追いつかない現状と、消費者ができる備え
スタジオには製品安全の専門家である 越山健彦 さんが登場しました。番組の独自調査では、リチウムイオン電池を搭載した製品事故およそ400件のうち、リコールが実施されていたのは188件にとどまっていました。リコールは企業の自主対応が原則で、消費者は「消費者庁リコール情報サイトを見ること」「企業のメール会員登録をすること」が唯一の把握手段だと語られていました。
しかし、通知メールを見逃すケースが現実に起きていることを考えると、仕組み自体が十分とは言えない状況が伝わります。
“サイレントチェンジ”という見えない落とし穴
次に紹介されたのは、100万台を超える大規模リコールを実施した大手モバイル機器メーカーの事例です。ことし6月に主力モバイルバッテリーをリコールした際、電池部品の不備が発見されました。調査の結果、取引先工場が 事前の取り決めと違う材料に無断で変更していた ことが判明します。
このように、製造側が勝手に部品や仕様を変更する行為は“サイレントチェンジ“と呼ばれています。メーカー自身も気付かないまま不良品が市場に出回り、後から大量リコールに発展してしまう深刻な問題です。
番組では、複数のメーカーがサイレントチェンジの被害を受けたことが確認され、中国で組み立てを行う企業の担当者も「現地の部品工場にサイレントチェンジされた」と証言していました。
安全性を守るはずのPSEマークにも見逃し
国が安全基準として運用している PSEマーク。しかし、このマークは販売業者が自ら検査して付けられる仕組みのため、不具合が見逃されるケースもあるのが現実です。
経済産業省が行った試買テストでは、法律違反となる事例が3年間で53件確認されていました。制度があっても、完全に安全を担保できているわけではないという厳しいデータです。
新しい検査技術で粗悪品をふるい落とす
神戸大学発のベンチャー企業が開発した検査装置も紹介されました。この装置はリチウムイオン電池に電気を流し、内部の電流分布を可視化して異常を判別できます。自動車メーカーや電機メーカーなど複数企業が導入を進めており、サイレントチェンジや部品不良を早期に見抜く力が期待されています。
また、分業体制が複雑化する中で、製品のリスクをより早く特定しようとする業界の動きも紹介されていました。
海外製品の“直輸入”時代に向けた新ルール
今は海外企業から直接製品を購入するケースも増えています。こうした流れを受けて、2025年12月25日からは 海外事業者が日本で販売する場合は国内管理人の設置が義務化 され、PSE基準の順守も国内企業と同様に求められるようになります。
さらに、通販サイト側にも法律違反の出品に対し、取り消し要請ができる仕組みが導入されます。安全を守るための整備がようやく動き出している段階です。
まとめ
今回の番組では、静岡県や山手線での実際の火災から始まり、製造現場で起きるサイレントチェンジ、リコールが追いつかない現状、PSEマークの限界、そして検査技術の進展と新しい法制度まで、バッテリー火災の裏側にある問題を立体的に描いていました。
リチウムイオン電池は生活に欠かせない存在だからこそ、どんなメーカーの製品でも“絶対に安全”とは言いきれません。情報をつかみ、迷ったときは公式サイトでリコールを確認すること。安さだけで選ばないこと。番組を通して、日常の中でできる備えの重要性が強く感じられました。
安全なバッテリー製品を選ぶときに知っておきたいポイント

ここからは、私からの提案です。追加情報として「信頼できるメーカーはどんな取り組みをしているのか?」を紹介します。リチウムイオン電池は便利な一方で、扱いをまちがえると事故につながります。だからこそ、製品を選ぶ段階から十分に注意することが大切です。安全なメーカーの共通点を知っておくことで、日常のリスクを大きく減らせます。
安全認証がしっかり取られているか
安全性を考えるうえで、まず確認したいのは認証です。PSEマークは日本国内の電気製品に必要な証で、これがあることで「国が定めた基準を満たしている」と分かります。ただし、PSEだけでは十分ではありません。
世界的に使われている IEC 62133 や UL 1642 のような認証は、過熱や短絡に対してどれだけ強いかを厳しく調べる試験です。これらの認証が付いている製品は、内部の部品や構造にも一定の安全性が確保されています。複数の認証がそろっている製品ほど、事故のリスクを抑えるための仕組みが重ねて作られていると考えられます。
品質管理が安定して続けられているか
安全認証があることに加えて、メーカーの品質管理を知ることも大切です。信頼できるメーカーは、電池セルを使う前にさまざまな試験を行います。落下衝撃や過充電、内部の熱がどれだけこもるかなど、多くのチェックを続けています。
また、電池の中に使われる絶縁シート・保護回路・樹脂ケースは、ほんの少し質が変わるだけで安全性に差が出てしまう部分です。良いメーカーは、材料を変えるときも必ず「変更理由」「性能チェック」を公開し、勝手にコスト削減目的で劣化した素材に変更しない仕組みを整えています。
流通経路とサポート体制がはっきりしている
安全に使うためには、買ったあとのサポートがしっかりしていることも重要です。信頼できるメーカーや販売店は、国内正規ルートでの販売を明記しており、輸入品であれば輸入業者名も分かります。
不具合が起きたときに連絡先がすぐ分かること、製品情報が公式ページでしっかり説明されていること、そして必要に応じてリコール対応ができる体制が整っていることが、安全の大きな支えになります。
長い実績とユーザー評価も大事な判断材料
過去に安定して製品を作り続けてきたメーカーは、トラブルが少ない傾向があります。ネット上でも、発熱や膨張などの注意すべき報告が少なく、「安心して使えた」という声が多い製品は、長く安全を重視してきた証になります。
単に「レビュー数が多い」ではなく、トラブルの少なさがポイントになります。特にバッテリー製品は、ユーザーの声が安全性を判断する重要な材料になるからです。
使用条件や注意点が分かりやすく書かれている
安全な製品ほど、使い方の説明がていねいで具体的です。適した温度帯や充電の方法、安全回路の仕組み、廃棄方法などが明記されていれば、購入後のトラブルを避けやすくなります。
大容量だから良いとは限らず、保護機能の有無とバランスが取れていることの方が重要です。安全設計と性能を両立しているメーカーは、この点をはっきりと説明しています。
それでも“完璧に安全”とは言い切れない理由
安全認証があっても、流通中の衝撃や高温状態での放置など、使い方次第では電池が劣化することがあります。海外製の安価な電池には、PSE表示があっても実際の試験が十分でないものもあり、表示だけで安心するのは危険です。
だからこそ、認証・品質管理・正規流通・ユーザー評価・使用方法の理解のすべてを合わせて確認することが、事故を防ぐうえで大切になります。
このように、安全性の高いバッテリー製品にははっきりした共通点があります。普段からこれらのポイントを意識しておくことで、安心して使える製品を選びやすくなります。
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