「止まらない“バッテリー火災” 粗悪品をどう防ぐ?」
リチウムイオン電池はスマホ、モバイルバッテリー、掃除機、電動アシスト自転車など、生活のほぼすべてに入り込んでいる存在です。その電池で起きる火災が、今年は過去最多ペースで増えていると番組は伝えています。
表面上は何も変わっていないように見えるのに、内部で“危険な変更”が行われる。欠陥が見つかってもリコールが十分に機能しない。なぜそんなことが起きるのか、どこに構造的な問題が潜んでいるのか。そして、私たちはどう身を守ればいいのか。
この記事では、番組が掘り下げた4つの焦点をベースに、2025年の今起きている問題を深く読み解いていきます。
NHK【明日をまもるナビ】あなたのバッテリー大丈夫?リチウムイオン電池の疑問にお答え “膨らむ原因・自治体の廃棄方法・フェーズフリー事例”まで徹底解説|2025年11月16日
分業体制で生まれる“見えない落とし穴”
番組ではまず、電池の製造工程が抱える複雑な構造に注目していました。
リチウムイオン電池は、セルを作るメーカー、パックを組むメーカー、基板をつくる下請け業者、最終製品として組み立てるメーカーと、多くの工程に分かれています。製造する側はそれぞれの役割を果たしているだけですが、この“分業の連鎖”こそが安全管理を難しくしています。
たとえば、最終メーカーが「耐熱性樹脂を使う」と設計したとしても、その情報が下請けまで正確に届かないケースがあります。番組でも紹介されたように、途中で部品が安価な素材に差し替えられることがあり、その変更は外からでは分かりません。
外見は同じでも、中身は違う。
これが、粗悪品が紛れ込む大きな理由のひとつです。
「最終試験に合格した製品」でも、その後の工程で部品が勝手に変わってしまえば、安全性は全く保証されません。表面だけを見る限り問題はないため、消費者も企業も気づけないまま市場に流通してしまいます。
“サイレントチェンジ”はなぜ起きるのか
番組がさらに掘り下げていたのが“サイレントチェンジ”です。
これは「見た目と仕様書はそのままなのに、内部の部品が突然変わる」という現象です。安価な電源アダプターで知られていた問題ですが、現在はリチウムイオン電池でも同じことが起きています。
・絶縁シートの素材が薄いものに変わる
・安全回路の保護素子が低品質品に変わる
・内部の樹脂が難燃性でないものに変わる
・セルそのものが別メーカー品に置き換えられる
これらは一見すると全く分かりません。
商品説明ページを読んでも、検証動画を探しても判断は難しい領域です。
消費者側からは「安い」「レビューが多い」程度の情報で選ぶことも多く、そこにつけ込む形で粗悪電池が流通してしまう。番組が警鐘を鳴らしていた理由がよく分かります。
信頼できるメーカーか。
どの流通ルートで来た製品か。
安全情報を公開しているか。
こうしたチェックが欠かせない時代になっています。
リコール制度が追いつかない“危険な現実”
番組では、リコールの仕組みがうまく機能していない点にも光が当てられていました。
本来リコールは、欠陥が判明した製品を迅速に市場から回収し、被害を防ぐための制度です。しかし現実には、
・通知が届かずユーザーが気づかない
・購入場所がバラバラで販売元が追いきれない
・中古市場やフリマアプリで再流通してしまう
・海外メーカーが連絡を受けても対応しない
といった問題が重なり、リコール済みの製品がそのまま使われ続けているケースがあります。
番組でも、過去の火災事故の一部が「リコール対象品だった可能性がある」という内容が紹介されていました。
さらに、廃棄の場面でも深刻な問題があります。
リチウムイオン電池を普通ごみとして出すと、ごみ処理車の圧縮で発火する危険があります。全国でごみ処理場の火災が増えており、処理現場の負担が大きくなっています。
“回収されない”
“廃棄が適切に行われない”
この二つが重なることで、リコール制度の穴がより広がってしまう構造が生まれています。
毎日の暮らしでできる安全対策
番組では最後に、今日からできる具体的な対策にも触れていました。ここでは内容をさらに深めて整理します。
・信頼できるメーカーの製品を購入する
・PSEマークだけを頼りにしない(偽造例もある)
・異常発熱、膨張、変形、異臭はすぐ使用を中止する
・充電しっぱなしの放置は避ける
・寝ている間・外出中の充電は控える
・布団やカバンの中での充電は熱がこもるので避ける
・バッテリーの寿命が来ている製品は早めに交換する
・廃棄は自治体の専用回収へ
・中古品や激安バッテリーは避ける
“わかっているつもり”でも、実際には習慣になっていないことは多いものです。
火災は一度起きれば一瞬で大きな被害につながるため、小さな行動を積み重ねることが非常に重要です。
まとめ
番組が示したのは、単なる製品の不良問題ではありません。製造、流通、販売、回収、廃棄のすべてがつながった“構造的な課題”です。
分業体制の中で起きる見えない仕様変更。
消費者が気づけないサイレントチェンジ。
機能しきれないリコール制度。
廃棄時の火災リスク。
2025年の今、リチウムイオン電池の問題は生活全体に関係するテーマになっています。
この記事は放送前の情報をもとに構成しています。放送後、番組で新しく示された事例や専門家の説明があれば、内容を更新して反映します。
安全なバッテリー製品を選ぶときに知っておきたいポイント

ここからは、私からの提案です。追加情報として「信頼できるメーカーはどんな取り組みをしているのか?」を紹介します。リチウムイオン電池は便利な一方で、扱いをまちがえると事故につながります。だからこそ、製品を選ぶ段階から十分に注意することが大切です。安全なメーカーの共通点を知っておくことで、日常のリスクを大きく減らせます。
安全認証がしっかり取られているか
安全性を考えるうえで、まず確認したいのは認証です。PSEマークは日本国内の電気製品に必要な証で、これがあることで「国が定めた基準を満たしている」と分かります。ただし、PSEだけでは十分ではありません。
世界的に使われている IEC 62133 や UL 1642 のような認証は、過熱や短絡に対してどれだけ強いかを厳しく調べる試験です。これらの認証が付いている製品は、内部の部品や構造にも一定の安全性が確保されています。複数の認証がそろっている製品ほど、事故のリスクを抑えるための仕組みが重ねて作られていると考えられます。
品質管理が安定して続けられているか
安全認証があることに加えて、メーカーの品質管理を知ることも大切です。信頼できるメーカーは、電池セルを使う前にさまざまな試験を行います。落下衝撃や過充電、内部の熱がどれだけこもるかなど、多くのチェックを続けています。
また、電池の中に使われる絶縁シート・保護回路・樹脂ケースは、ほんの少し質が変わるだけで安全性に差が出てしまう部分です。良いメーカーは、材料を変えるときも必ず「変更理由」「性能チェック」を公開し、勝手にコスト削減目的で劣化した素材に変更しない仕組みを整えています。
流通経路とサポート体制がはっきりしている
安全に使うためには、買ったあとのサポートがしっかりしていることも重要です。信頼できるメーカーや販売店は、国内正規ルートでの販売を明記しており、輸入品であれば輸入業者名も分かります。
不具合が起きたときに連絡先がすぐ分かること、製品情報が公式ページでしっかり説明されていること、そして必要に応じてリコール対応ができる体制が整っていることが、安全の大きな支えになります。
長い実績とユーザー評価も大事な判断材料
過去に安定して製品を作り続けてきたメーカーは、トラブルが少ない傾向があります。ネット上でも、発熱や膨張などの注意すべき報告が少なく、「安心して使えた」という声が多い製品は、長く安全を重視してきた証になります。
単に「レビュー数が多い」ではなく、トラブルの少なさがポイントになります。特にバッテリー製品は、ユーザーの声が安全性を判断する重要な材料になるからです。
使用条件や注意点が分かりやすく書かれている
安全な製品ほど、使い方の説明がていねいで具体的です。適した温度帯や充電の方法、安全回路の仕組み、廃棄方法などが明記されていれば、購入後のトラブルを避けやすくなります。
大容量だから良いとは限らず、保護機能の有無とバランスが取れていることの方が重要です。安全設計と性能を両立しているメーカーは、この点をはっきりと説明しています。
それでも“完璧に安全”とは言い切れない理由
安全認証があっても、流通中の衝撃や高温状態での放置など、使い方次第では電池が劣化することがあります。海外製の安価な電池には、PSE表示があっても実際の試験が十分でないものもあり、表示だけで安心するのは危険です。
だからこそ、認証・品質管理・正規流通・ユーザー評価・使用方法の理解のすべてを合わせて確認することが、事故を防ぐうえで大切になります。
このように、安全性の高いバッテリー製品にははっきりした共通点があります。普段からこれらのポイントを意識しておくことで、安心して使える製品を選びやすくなります。
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