NHK【チコちゃんに叱られる！】なぜ牛たんは仙台名物？戦後の工夫と名物誕生の物語｜2025年6月20日放送

なぜ牛たんは仙台名物？名前の裏にあった驚きの歴史と人々の情熱

2025年6月20日放送のNHK総合『チコちゃんに叱られる！』では、「なぜ牛たんは仙台名物なのか？」というテーマが取り上げられました。全国的に知られる仙台牛たんですが、実はそのルーツは意外なところにありました。戦後の混乱期に始まり、ある人物のひとことから全国区へと成長した仙台牛たん。その背景には、創意工夫と人のつながり、そして熱い思いがありました。

【チコちゃんに叱られる！】サッカー日本代表の青ユニフォームの起源は東大だった！？｜2025年6月20日放送

【チコちゃんに叱られる！】なぜ夢は「寝る夢」と「将来の夢」両方を表すのか？世界を変えた言葉の歴史｜2025年6月20日

牛たんが仙台名物になったのは「ひとこと」がきっかけ

仙台といえば牛たんを思い浮かべる人が多いと思いますが、実は牛たんが仙台名物になった直接のきっかけは、とてもシンプルなものでした。それは、「仙台名物だ」と言い切ったことでした。この言葉を口にしたのは、大川原要さんという人物です。

佐野啓四郎さんが開発した牛たん焼きを初めて食べたとき、そのおいしさに感動した大川原さんは、すぐに「これは仙台名物だ」と言い切りました。もともとは地元の料理として特に有名ではなかったものが、このひとことによって「名物」としての道が開けていったのです。このエピソードは、息子である大川原潔さんの証言からも明らかになり、番組内では当時の様子が語られました。

牛たん焼きの生みの親・佐野啓四郎さんの挑戦

牛たんを仙台に根付かせた第一人者が、佐野啓四郎さんです。戦後の物資が不足していた時代、佐野さんはアメリカ軍が持ち込んだ牛の肉のうち、食べずに捨てられていた「たん」に注目しました。当時、日本では牛たんを食べる文化がなく、ほとんどの人が口にしたこともない食材でした。

佐野さんは、捨てられていた牛たんをなんとかおいしく食べられないかと考え、炭火で焼いて塩味をきかせた「牛たん焼き」を生み出しました。肉の厚みや焼き加減、味付けを試行錯誤しながら、独自のスタイルを完成させていきました。やがて店を開き、「太助（たすけ）」という名前で提供を始めると、次第に人気を集めるようになりました。

今でも「太助」の味は創業当時とほとんど変わっておらず、番組内ではこの味を求めて多くの人が訪れていることが紹介されていました。味を守り続けていることが、牛たんの価値と魅力を支えているのです。

感動から始まった弟子入りと広がる牛たん文化

佐野さんの牛たん焼きに心を動かされたのが、大川原要さんです。当時52歳だった要さんは、店で牛たんを食べてその味に驚き、「これを自分も作りたい」と強く思い、弟子入りを志願しました。年齢的には新しい挑戦をするには遅いとも言える時期でしたが、要さんは迷わず行動に移しました。

佐野さんのもとで修業を重ね、牛たんの切り方、味付け、焼き方すべてを学んだ要さんは、自分の店を持つと「仙台名物 牛たん焼き」と堂々と名乗りました。この「名物」と名乗る表現こそが、人々の記憶に残り、結果として「仙台＝牛たん」というイメージを作り上げていくきっかけとなりました。

また、息子の潔さんも番組内で語っていたように、要さんは何よりも牛たんの味と佐野さんの情熱に感銘を受けていました。それをより多くの人に伝えることを人生の後半の目標にしたのです。

東北新幹線の開通が後押しした全国展開

さらに、牛たんが本当に「仙台名物」として全国に知られるようになった大きな要因が、東北新幹線の開通です。1982年に新幹線が仙台まで延伸したことで、観光客が急増しました。その結果、仙台駅や周辺の飲食店で牛たんが目に触れる機会が格段に増えました。

駅弁としても「牛たん弁当」が販売されるようになり、車内で食べるグルメとして話題を集めました。また、旅行雑誌やテレビのグルメ特集でも「仙台名物＝牛たん」と紹介されるようになり、自然とその印象が定着していきました。

要さんの「名物」と言い切る姿勢と、新幹線による観光の流れが重なったことで、牛たんは地元グルメから一気に全国区の名物へと成長していったのです。

欧米では古くから親しまれていた牛たん文化

今回の放送では、食品研究家の小野博康さんも登場しました。小野さんの説明によると、実は牛たんは欧米では昔から一般的に食べられていた食材であり、フランスやアメリカでは煮込み料理やスモーク料理など、さまざまな形で楽しまれていたそうです。

ただし、日本に牛たん文化が根づいたのは戦後以降であり、しかもそのきっかけをつくったのが、仙台という一都市だったというのは、とてもユニークな文化的背景だと感じられます。西洋から入ってきた食材を、日本の土地で独自にアレンジし、人気料理に育てていった過程には、まさに日本人ならではの創意工夫が詰まっています。

今も変わらず受け継がれる味と精神

放送の最後には、今もなお創業当時の味を守り続けている店舗の様子が紹介されました。職人たちは、佐野さんや大川原さんの思いを大切にしながら、丁寧に牛たんを仕込んでいます。味だけでなく、接客や雰囲気づくりにもこだわり、「仙台に来たら必ず食べたい」と言われるまでに育ったこの文化を大切にしています。

名物というのは、自然に生まれるものではなく、人の工夫と努力、そして行動によって作られていくものだということが、今回の放送からはよく伝わってきました。

おわりに

今回の『チコちゃんに叱られる！』は、私たちが当たり前に思っている「仙台名物 牛たん」が、実はたった一言の宣言と、人々の熱い思いから始まったことを教えてくれました。今では全国の人が知っている仙台の顔とも言える牛たん。その背景には、知られざる物語と工夫、挑戦があったことがわかります。食の歴史は、人の歴史そのものです。番組を通して、その奥深さとおもしろさを再確認できた回でした。