小雪と出会う“泡のお茶”の物語
みなさんは「バタバタ茶」というお茶をご存じでしょうか?名前の響きからユニークな印象を受けるかもしれません。実はこれは、富山県朝日町でしか作られていないとても貴重な後発酵茶で、泡立てて飲むという全国的にも珍しいスタイルを持っています。今回NHKで放送される番組では、女優の小雪さんが“発酵おばあちゃん”と呼ばれる元気な女性たちを訪ね、彼女たちの暮らしとエネルギーの源を探ります。本記事では放送前に知っておきたいバタバタ茶の文化、作り方、楽しみ方を徹底的にご紹介します。
バタバタ茶とは?唯一無二の後発酵茶
バタバタ茶は、中国のプーアル茶や東南アジアの黒茶と同じ「後発酵茶」の一種です。一般的なお茶(緑茶・紅茶・ウーロン茶など)は茶葉自身の酵素による酸化で風味が変わりますが、後発酵茶は微生物の働きを借りて発酵させるのが大きな違いです。
富山県朝日町の蛭谷地区を中心に作られており、他の地域ではほとんど見られません。一度は生産が途絶えかけたものの、「集落の集まりに欠かせない」と住民の声で復活した歴史があり、地域の誇りとして守り続けられてきました。
Eテレ【小雪と発酵おばあちゃん】“ごど”とは?青森十和田の幻レシピに出会う旅|2025年7月24日放送
製造工程と重労働
バタバタ茶の特徴は、その手間のかかる製造工程にあります。
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摘採:茶葉を枝ごと刈り取ります。 
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蒸す(殺青):茶葉を蒸して酵素の働きを止め、不要な酸化を防ぎます。 
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発酵:室(むろ)に入れて菌の力で1か月以上発酵させます。この間、茶葉は内部で発熱し、温度は60度以上に。3日に1度は取り出してかき混ぜ、40度以下に冷ます作業が必要です。 
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乾燥:発酵が終わった茶葉を天日干しでしっかり乾燥させます。 
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保管・出荷:湿気を避けて保存し、地元で消費されるほか、お土産や体験施設でも提供されます。 
特に発酵工程は真夏に行われるため重労働で、茶葉を抱えて何度も切り返す作業が“発酵おばあちゃん”たちの体力の源とも言えるでしょう。
泡を立てて飲む楽しみ
バタバタ茶は「泡を立てて飲む」ことで完成します。専用の五郎八茶碗に煮出したお茶を注ぎ、2本組の夫婦茶筅をカタカタと動かして泡を作ります。泡が白くこんもり盛り上がったときが飲み頃で、ほんの少しの塩を加えると味に奥行きが生まれます。
この独特の飲み方は、単にお茶を楽しむだけでなく、会話のきっかけや集落の儀式として重要な役割を果たしてきました。泡立てる音やリズムも「バタバタ茶」の名前の由来であり、人々が心を通わせる時間を彩ってきたのです。
“発酵おばあちゃん”たちと集落の絆
蛭谷地区では昔から、月命日や冠婚葬祭、出産や結婚祝いなど、あらゆる場面で茶会が開かれました。かつては1日に3軒以上のお茶会を渡り歩く日もあり、年間では100回以上行われることもあったといいます。
その中心にいたのが“発酵おばあちゃん”たち。お茶を点て、食事を準備し、人をもてなしながら集落の交流を支えてきました。お茶会は近況報告や悩み相談の場でもあり、まさに地域の社交場でした。
一方で、現在は高齢化や過疎化によって継承が難しくなっています。核家族化で大きな家を整えてお茶会を開く負担も増えていますが、それでも伝統を絶やさぬよう努力を続けています。
健康効果と味わい
後発酵茶であるバタバタ茶には、乳酸菌や微生物の働きで独特の成分が生まれます。整腸作用やリラックス効果が期待され、渋みや苦味が抑えられて飲みやすいのも特徴。風味は漬物のような酸味を感じることもあり、塩を加えることでよりまろやかに楽しめます。
体験できる場所と観光資源
朝日町のバタバタ茶伝承館では、五郎八茶碗や夫婦茶筅を使った体験が可能で、地元の山菜や漬物と一緒に味わえます。また、乾燥茶葉やペットボトルタイプも販売されており、家庭で楽しむこともできます。夏場に冷やして飲むアレンジも人気です。
富山のべっこうレシピ
寒天を使った富山の郷土菓子「べっこう」は、シンプルながらも奥深い味わいが特徴です。特に今回は卵を使わないタイプで、おばあちゃんが地元で売っている甘味のある特製醤油を使うのが大きなポイントです。棒寒天1本を基準にしたレシピで、クルミを加えることで香ばしさと食感が引き立ちます。
材料(棒寒天1本分)
| 材料 | 分量・特徴 | 
|---|---|
| 棒寒天 | 1本(細かくちぎって使用) | 
| 水 | 500ml(寒天をやわらかく戻すために使用) | 
| 醤油 | 50ml(甘味のある地元醤油を使用) | 
| 砂糖 | 大さじ4(甘さの基本) | 
| 塩 | 適量(味を整えるため) | 
| クルミ | 適量(仕上げに散らす) | 
つくり方の手順
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鍋に500mlの水を入れ、棒寒天を細かくちぎって浸し、数十分置いてやわらかく戻す。 
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中火にかけ、寒天を混ぜながら煮溶かす。寒天が完全に溶けるまで、焦げないようにしっかり混ぜる。 
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醤油と砂糖を加えてよく混ぜ合わせ、味見をしながら塩でバランスを整える。甘みと醤油のコクが調和するように調整する。 
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タッパーやバットなどの容器を用意し、寒天液をザルで濾しながら注ぎ入れる。濾すことで口当たりがなめらかになる。 
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注ぎ入れた際にできた泡はすぐに取り除き、仕上がりを美しくする。 
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少し冷ましてから表面にクルミを散らす。香ばしさがアクセントになり、見た目も華やかに。 
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粗熱が取れたら冷蔵庫に入れて冷やし固める。固まったら食べやすい大きさに切り分けて完成。 
特徴とポイント
一般的なべっこうは溶き卵を加えて黄色く仕上げることが多いですが、今回紹介されたレシピでは卵を入れません。そのため、より寒天の透明感と醤油の風味が際立つ仕上がりになります。素朴ながらも、甘じょっぱさとクルミの香ばしさが合わさって後を引く美味しさです。
まとめ
この記事のポイントを整理します。
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バタバタ茶は富山県朝日町だけで作られる貴重な後発酵茶 
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泡立てて飲む独特のスタイルと塩を加える工夫が魅力 
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“発酵おばあちゃん”たちが地域の絆を守り続けている 
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小雪さんが番組で探るのは「暮らしの中の元気の源」 
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体験施設や商品化も進み、観光資源としても注目 
ただのお茶ではなく、人を結びつける文化そのものがここにあります。放送を通して、あなたも“泡立つひととき”の奥深さを感じてみてください。
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番組情報:
小雪と発酵おばあちゃん 富山・泡を楽しむバタバタ茶
NHK Eテレ(教育)
2025年9月18日(木)22:30〜23:00
出典:NHK番組表、富山県観光ナビ、朝日町公式情報
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