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【ドキュメント72時間】韓国・ソウル「日本居酒屋で乾杯を」人々の本音と交流に迫る|2025年5月1日放送

ドキュメント72時間

ソウル“日本居酒屋”に集う人々の本音と記憶の味

2025年5月1日、NHK総合『ドキュメント72時間』では、韓国・ソウルにある日本スタイルの居酒屋に密着した特集が放送されました。今回は45分の拡大版。カメラが追ったのは、日本の味を求めて店を訪れる韓国の人々の姿と、彼らが語る本音の言葉です。生ビールや枝豆、ホタテのバター焼きなど、日本ではおなじみのメニューが、ソウルの街角でどのように受け入れられているのか。そして、その居酒屋が、人と人とをつなぐ「心のよりどころ」になっている様子が丁寧に描かれました。

舞台は21年続く老舗の日本居酒屋

番組の舞台となったのは、ソウル・チョンドンにある日本居酒屋です。このお店は2003年に開店し、韓国の中でもいち早く本格的な日本居酒屋スタイルを取り入れました。料理に使われる食材や酒器の多くは日本から直接取り寄せており、皿ひとつに至るまで本場の味と雰囲気を大切にしています。
この店には1階と2階の席があり、開店と同時にお客さんが入り始めるほどの人気ぶりです。特に夜になると、会社帰りのサラリーマンや友人同士、夫婦やカップルが訪れ、活気に包まれます。

2月4日の取材初日、スタッフが店に入った18時にはすでに何組もの客が料理を楽しんでいました。2人組の女性は仕事について語り合いながらモツ鍋を囲み、別のグループは生ビールで乾杯をしていました。

この居酒屋には、韓国ではなかなか味わえないホタテのバター焼きや、焼きそば、餃子といった日本の家庭的なメニューが並び、それを目当てに訪れる人も多いのです。2階席ではゴルフ講師と生徒たちのグループが食事を楽しみ、「日本の居酒屋の味はお酒に合う」と笑顔を見せていました。

また、韓国には1万8000軒以上の日本食の店があるというデータも紹介され、日本食が現地でいかに浸透しているかが伝わってきました。

日本での思い出を語る常連たち

この居酒屋には、ただ食事を楽しみに来るだけでなく、人生の思い出や交流を大切にする常連たちも訪れています。21時ごろに来店していた男性2人組は、20年前に日本の高校で野球留学をしていた仲間同士。2人は京都国際高校の卒業生で、関西弁を使い、納豆や梅干しが好きだと語ります。まるで日本人と話しているかのような自然な雰囲気に、韓国での日本文化の根づきが感じられました。

彼らは、初対面のときに店主を「アジュンマ(おばちゃん)」と呼んでしまったことを今でも覚えており、店主の松本さんから「だれがおばちゃんやねん」と軽くツッコミを受けたエピソードも披露されました。

閉店時間の22時が近づくと、客たちが次々と会計を済ませ、店内の片づけが始まります。食器は日本から輸入しており、価格は韓国の3倍にもなると語られ、こだわりの裏にある苦労も垣間見えました。

昼営業のスタートとスタッフの奮闘

翌2月5日は朝9時前からスタッフが出勤。新型コロナの影響で2次会文化が減少したため、ランチ営業も開始したといいます。仕込み中に白菜の納品が遅れるトラブルがありましたが、なんとか営業に間に合いました。

11時半の営業開始とともに、店内はすぐ満席に。会社の同僚たちが訪れ、「ランダムランチ」という社内制度で、初対面の社員同士が交流を深めていました。

この日、厨房では5年目のスタッフ・ヒョンミンさんが松本さんに叱られる場面もありました。注文の確認にミスがありましたが、彼には夢があります。いつか自分の店を持ちたいという思いがあり、それを松本さんは応援しています。「だから厳しく接している」と話す松本さんの姿勢から、人を育てることの本気さが伝わってきました。

夜は再び常連たちの時間に

17時50分、夜の営業が始まると、10年来の常連であるミュージシャンが来店。この方は東方神起の「風船」を作曲した人物で、松本さんと親しい関係にあります。この日は息子夫婦を連れて来店し、笑顔が店にあふれていました。

店には、付き合って1か月のカップルや、高校の同級生グループなど、日常に溶け込んだ人たちが集まります。それぞれが思い思いの時間を過ごし、この店が「ただの飲食店ではない」ことがはっきりと伝わってきます。

厳しさの中にあるあたたかさ

2月6日は冷え込みが厳しく、ハンガンが凍るほどの朝。ヒョンミンさんたちは仕込みに追われながら、「アウトレイジ」という映画で日本語を覚えた話や、天ざるを食べて感動した話をしていました。

ヒョンミンさんは胃が弱く、優しい味を探している中で、日本食に出会いました。そんな彼を、松本さんは厳しくも温かく見守っています。自らも44歳で脱サラし、この店を始めた経験があり、その経験が今の指導に活かされているのです。

夜になると、仕事で疲れた夫を気遣って妻が連れてきた夫婦や、DMZ(非武装地帯)近くの中学校に勤務していた教師仲間のグループが来店します。さらに、日本人社長と韓国人理事による、日韓関係の変化を語る場面もありました。

かつては「日本の歌を歌っただけでいじめられた」という理事の話や、不買運動の実情など、政治の話とは異なる現場の声が語られたのも印象的でした。

夜9時を過ぎると、新入社員と先輩社員のグループが来店。元海軍将校だった男性は、転職して今の仕事に就いたというエピソードも紹介され、人生の再出発の場としての居酒屋の存在感が浮かび上がりました。

営業終了後、ヒョンミンさんは松本さんに「今日は大丈夫だった」と褒められ、少し誇らしげな表情を見せていました。

最終日、訪れたのは初来店の2人連れ

2月7日、夕方6時前に来店したのは初めての来店となる2人組。彼らはうなぎ丼を食べながら、静かにその時間を楽しんでいました。こうして、72時間の取材が終わりを迎えます。

この店には、記憶の味、日本への思い、そして日常の中のささやかな安らぎが集まっていました。
食べること、飲むこと、それを誰かと分かち合うことが、どれだけ人の心を支えるかを感じさせてくれる放送でした。

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