珠洲市の海辺の銭湯|震災後も人々を支え続ける薪焚きの湯【2025年2月28日放送】
2025年2月28日(金)22:00から放送された「ドキュメント72時間」では、石川県珠洲市にある海辺の銭湯を3日間にわたって取材しました。震災後、この銭湯は地元住民に無料開放され、多くの人々が訪れる場所となっています。
薪を焚いて湯を沸かす昔ながらの銭湯には、被災した人々、復興に携わる人々、遠方から支援に訪れる人々が集い、それぞれの思いを抱えながら湯に浸かります。単なる入浴施設ではなく、人と人がつながる温かな場所として、珠洲市の暮らしを支え続けていました。
奥能登・珠洲にある「海浜あみだ湯」とは?
「海浜あみだ湯」は、石川県珠洲市の海沿いにある公衆浴場です。昭和の雰囲気を色濃く残し、地元の人々に長年愛されてきました。温泉ではなく沸かし湯ですが、大きな窓からは日本海が広がり、まるで海に浸かっているような気分を味わえます。
浴場には、以下のような設備が整っています。
- バイブロ(気泡風呂):細かい気泡が体を包み込み、マッサージ効果があるお風呂です。
- ジェットバス:水流の刺激で血行を促し、筋肉の疲れを和らげます。
- 日替わりの薬湯:生薬やハーブを使用したお風呂で、その日の種類によって異なる効能が楽しめます。
- 水風呂:温まった体を引き締める冷水浴ができます。
- サウナ(追加料金150円):じっくり汗をかいてリフレッシュできます。専用のバスタオルも用意されています。
このように、多彩なお風呂が用意されているため、地元の人はもちろん、観光客からも人気があります。特に、夕暮れ時には湯船からオレンジ色に染まる日本海を眺めることができ、心まで温まるひとときを過ごせます。
震災後の営業再開と地域の支え合い
2024年の能登半島地震では、珠洲市全域が大きな被害を受けました。「海浜あみだ湯」も例外ではなく、建物の一部が被災しましたが、可能な限り早く営業を再開しました。
営業再開のために行われた取り組みは、まさに知恵と工夫の結晶でした。
- 断水の中でも営業できるよう、地下水を汲み上げて使用
- 倒壊した家屋の木材を燃やしてお湯を沸かす
- 銭湯を開放し、被災者が温まれる場所を提供
これにより、お風呂に入ることができなかった多くの人々が、「海浜あみだ湯」に集まりました。ここで再会し、お互いの無事を確認し合う姿も多く見られました。
震災から1年が経った今も、銭湯は地元住民、復興支援のボランティア、解体工事に携わる人々にとって大切な場所となっています。
1月10日(金)|震災後、無料開放された銭湯に集う人々
取材初日。珠洲市のこの銭湯では、震災後から地元住民は無料で入浴できるようになりました。訪れるのは、仮設住宅で暮らす人、仕事帰りの常連客、地域の復興に携わる人々など、さまざまです。
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風呂上がりにアイスを食べる男性
- 震災前からの習慣で、湯上がりにアイスを食べることが日課。何気ない日常のひとときを楽しんでいる。
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製塩業を営む男性
- 珠洲の海で塩作りを続けてきた。震災後も変わらず仕事を続けながら、銭湯で心と体を温めている。
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市役所職員の家族
- 復興支援の仕事をする一方で、家族との時間を大切にし、銭湯で安らぎの時間を過ごしている。
銭湯の湯は薪を焚いて沸かす昔ながらのスタイル。その薪は、震災で解体された家屋の廃材を再利用したもの。かつての家の一部が、今は人々の体を温める湯となっているのです。
夜になると、解体業で働く男性が仕事帰りに訪れました。震災後、珠洲市では多くの家屋が解体され、建物の撤去作業が続いています。彼にとって銭湯は、疲れた体を癒やす唯一の時間だといいます。
こうして、夜9時に銭湯の1日が終わりました。
1月11日(土)|銭湯を支える地元の人々と、新たな日常
2日目の朝、開店と同時に訪れたのは、震災前からの常連客だった男性。震災後は、銭湯の薪を焚くアルバイトをするようになりました。
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元漁師の男性
- かつては漁を生業にしていたが、震災後は漁業を続けられず、今は銭湯の準備スタッフとして働いている。
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銭湯の準備スタッフたち
- 多くが被災者でありながら、地域のために働くことを選んだ人々。誰かの役に立つことが、自分の生きる力になっている。
午後になると、いつもの常連客や学生、ボランティアで訪れた人々が集まりました。
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高校3年生
- 銭湯の休憩スペースで受験勉強をしている。家では落ち着かないため、ここが勉強の場になっているという。
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ボランティアで訪れた人
- 珠洲市の暮らしに寄り添うように、地元の人々と同じように銭湯を利用し、支援活動を続けている。
銭湯はただ体を洗う場所ではなく、人々がそれぞれのペースで過ごす「日常の場」になっていました。
1月12日(日)|炊き出しと、銭湯に集う人々の思い
取材3日目。この日はボランティアによる炊き出しが行われ、駐車場には大勢の人が集まりました。
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仮設住宅で暮らす夫婦
- 震災後、家を失いプレハブ暮らしが続いているが、「銭湯の温もりだけは変わらない」と語る。
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解体業の男性
- 震災後の復興作業を担いながらも、毎日この銭湯で疲れを癒やしている。
営業終了後には、銭湯のスタッフや常連客が集まり、鍋を囲んで温かい食事を共にしました。震災を経験した者同士が、日々の苦労を語り合いながら支え合う、そんなひとときがありました。
1月13日(月)|銭湯に魅せられた女性と、珠洲に生きる人々
取材最終日。この日、番台に立っていたのは、神奈川県から1年間通い続けた女性でした。
- 彼女は今年1月1日付で珠洲市に住民票を移し、ついにこの地での暮らしを始めた。
- 「この町の人々と、温かな湯に魅せられた」と語る彼女の言葉が印象的でした。
そして最後に、取材初日に出会った男性が登場。3日間の取材を通じて、震災後も変わらずに銭湯を守り続ける人々の姿が浮かび上がりました。
珠洲の銭湯がつなぐ、人々の暮らし
この銭湯は、ただ体を温めるだけの場所ではなく、地域の人々の心をつなぐ場所になっていました。
- 震災後も変わらずに湯を沸かし続ける銭湯
- ここで働くことを選んだ被災者たち
- 遠方からも訪れる、珠洲に魅せられた人々
薪で焚かれる湯の中には、震災を乗り越えた珠洲の人々の生きる力が込められていました。3日間の取材を通じて見えたのは、「人と人がつながる場所」としての銭湯の存在でした。
昭和レトロな雰囲気と人々が集う場
「海浜あみだ湯」の魅力は、お風呂だけではありません。昭和の香りが残るレトロな館内は、まるで時間が止まったかのような雰囲気です。
特に番台の前のスペースは、まるで家のリビングのようなアットホームな空間になっています。そこでは、地元の常連客や初めて訪れる人たちが自然と会話を交わし、笑顔が生まれています。
- 仕事帰りに立ち寄る地元の人々
- ボランティア活動の合間に訪れる支援者たち
- 被災した家の解体作業を終えた工事関係者
こうしたさまざまな人々が集まり、お風呂で疲れを癒し、番台前のスペースで語り合うことで、新たなつながりが生まれています。
また、館内には以下のような設備も整っています。
- ドライヤー・マッサージ機完備
- アイスやジュースなどの販売
- サウナ専用バスタオルの貸し出し(追加料金150円)
ただし、サウナ内にはマットがないため、利用時には汗が直接かからないよう注意が必要です。
訪れる際の基本情報
「海浜あみだ湯」へ訪れる際の情報は以下のとおりです。
- 住所:石川県珠洲市野々江町ナ部5番地3
- 電話番号:0768-82-6275
- 営業時間:14:00~21:00
- 定休日:水曜日・木曜日
- 駐車場:35台分のスペースあり
また、営業状況やイベント情報は公式Twitter(@amidayu_suzu)やInstagram(@amidayu.suzu)で随時更新されているため、訪問前にチェックするのがおすすめです。
まとめ
「海浜あみだ湯」は、被災しながらも営業を再開し、地域の人々にとって欠かせない存在となっています。お風呂だけでなく、ここに集う人々の交流が生まれ、被災地の復興を支える温かい空間が広がっています。
「ドキュメント72時間」では、そんな銭湯に訪れる人々の姿や、それぞれの思いが映し出されることでしょう。地域の人々がどのように支え合いながら生きているのかを知る機会として、ぜひ番組をご覧ください。
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