白川郷と五箇山の合掌造りが日本の歴史を動かした理由|2025年2月26日放送
NHK総合で放送された「歴史探偵」では、白川郷と五箇山の合掌造り集落が持つ歴史的な役割が詳しく紹介されました。岐阜県と富山県にまたがるこの地域は、三角形の屋根が特徴的な合掌造りの家が立ち並ぶことで知られています。伝統的な建築様式として有名ですが、実は日本の歴史を大きく動かした要素がいくつも隠されていました。今回の放送では、合掌造りの建築技術、生糸産業との関わり、地震によって失われた金の謎、さらには火薬の原料となった硝酸カリウムの生産まで、さまざまな視点からその影響を探りました。
合掌造りの三角屋根に隠された建築技術
白川郷と五箇山の合掌造りは、見た目だけでなく、構造的にも優れた技術が使われています。今回の放送では、レーザー測量を活用した調査により、屋根の仕組みが明らかになりました。
・合掌造りの屋根は、急な三角形をしている。これにより雪が積もっても滑り落ちやすく、雪の重みで家が潰れるのを防ぐ役割がある。
・屋根を支える木材(合掌材)は、梁のくぼみに置かれているだけという驚きの構造。固定されていないため、強風が吹いたときに木材が少し動き、屋根にかかる力が分散される仕組みになっている。
・強度を保つための対策も施されており、家全体が長く持つよう工夫されていた。
こうした工夫により、雪が多く降る地域でも安心して住める家が作られていたことがわかる。
養蚕と生糸産業が歴史を動かした
白川郷と五箇山では、合掌造りの屋根裏の広い空間を活用して養蚕が行われていた。この地域で育てられた蚕から作られる生糸は、江戸時代に重要な役割を果たした。
・当時、日本は生糸を海外から輸入しており、それによって大量の貨幣が流出していた。幕府は生糸の国産化を推進し、国内での生産を増やそうとした。
・白川郷で生産された生糸は、本願寺に送られていた。本願寺の僧侶たちは西陣織などの高級な絹織物を着用しており、白川郷の生糸は非常に質が高かったことがわかる。
・生糸の生産が増えたことで、日本は幕末には欧米へ輸出するようになり、明治の末期には世界最大の生糸輸出国となった。
もともとは小さな村で始まった養蚕が、日本全体の経済を支えるまでになったことがよくわかる。
天正地震で消えた「白川郷の金」の謎
白川郷にはかつて帰雲城という城があり、多くの金が蓄えられていたとされる。しかし、1586年の天正地震によって帰雲城は消滅し、城内の金の行方もわからなくなった。
・研究者の調査によると、白川郷では砂金が採れていたとされる。
・名古屋城の金の鯱(しゃちほこ)に使われた金は、白川郷から採れたものではないかという説がある。
・現在、名古屋城では金の鯱に使われた金の成分分析が計画されており、今後の調査で白川郷との関係が明らかになる可能性がある。
もし白川郷の金が名古屋城に使われていたとすれば、江戸時代の重要な建築物の一部に白川郷が関わっていたことになる。
五箇山で作られた硝酸カリウムと火薬
五箇山では、江戸時代に硝酸カリウム(火薬の原料)が作られていたことがわかった。今回の放送では、その製造方法についても紹介された。
・蚕糞(蚕のフン)にヨモギや藁を混ぜることで、3日ほどで硝酸カリウムが作られる。
・五箇山ではこの方法を使って大量生産に成功し、火薬の原料として利用された。
・織田信長と本願寺の戦い(石山合戦)では、五箇山で作られた硝酸カリウムが本願寺に送られた。このため、信長は苦戦を強いられたという。
戦国時代、火薬の供給は戦の勝敗を左右する重要な要素だった。五箇山の火薬生産が歴史を変える一因になったことがわかる。
江戸時代の加賀藩と硝酸カリウムの関係
戦国時代が終わり、江戸時代に入ると火薬の需要は減少したはずだが、加賀藩は硝酸カリウムの購入を続けていた。
・加賀藩は外様大名であり、幕府の監視が厳しかったため、戦の準備として火薬を確保していた可能性がある。
・幕末、ペリーが来航すると、たった6日間で硝酸カリウムの価格が8倍に高騰。五箇山では急いで生産量を増やしたとされる。
江戸時代を通して、五箇山の火薬生産が続けられていたのは、政治的な背景が関係していたのかもしれない。
まとめ
白川郷と五箇山の合掌造り集落は、単なる伝統的な建築物ではなく、日本の歴史に深く関わる場所であったことがわかった。
・合掌造りの屋根の構造には、強風や雪に耐えるための工夫があった。
・養蚕業が発展し、生糸の生産が日本の経済に大きな影響を与えた。
・天正地震で消えた帰雲城の金は、名古屋城の金の鯱に使われた可能性がある。
・五箇山では火薬の原料となる硝酸カリウムが生産され、戦国時代から江戸時代まで利用された。
今回の放送では、合掌造り集落がいかに日本の歴史を動かしてきたのかが詳しく紹介されていた。これからの研究や調査によって、さらに新たな事実が明らかになるかもしれない。
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