タイムスリップ!昭和・平成を生きた女性たちのホンネ|2025年3月24日放送まとめ
2025年3月24日放送の『あさイチ』では、「タイムスリップ!昭和・平成を生きた女性たちのホンネ」と題して、1966年に始まったNHKの朝の生活情報番組の歴史をたどりながら、これまでの約60年間にわたる女性たちの生き方や本音を振り返る特集が放送されました。専業主婦が当たり前だった時代から、働く女性が増え、社会と家庭のバランスに悩む現代まで、番組が取り上げてきたリアルな声が丁寧に紹介されました。懐かしい映像や視聴者の声も織り交ぜながら、今につながる暮らしのかたちをあらためて考えさせられる内容でした。
「こんにちは奥さん」から始まった朝の生活情報番組のルーツ
朝の情報番組の原点は、1966年にスタートした『こんにちは奥さん』です。家庭で暮らす女性たちに向けて、料理・掃除・育児・健康など、暮らしに役立つテーマを取り上げ、視聴者の生活に寄り添う内容で人気を集めました。視聴者からの投稿が放送に反映される仕組みもあり、いわば当時のSNSのような役割も果たしていました。番組の司会には鈴木健二アナウンサーも登場し、親しみやすく、けれど時に社会の本質を突くようなトークで、多くの家庭に影響を与えてきました。
1953年に日本でテレビ放送が始まってから、わずか10年ちょっとで朝の生活情報番組が誕生したことは、テレビがいかに急速に暮らしに入り込んでいったかを物語っています。当時はサラリーマンが急増し、核家族化が進み、主婦が家庭を一人で支える時代になりつつありました。
高度成長期と「憧れは専業主婦」という価値観
1960年代から70年代は、高度経済成長の影響で、多くの家庭が夫の収入だけで生活できるようになりました。その結果、専業主婦が理想の生き方とされ、1975年には既婚女性のうち専業主婦の割合が史上最高を記録しました。この時代の主婦は、子どものために季節ごとの洋服を手作りし、毎日の料理も手間を惜しまずこなしていました。家事を完璧にこなすことが「愛情の証」と考えられ、家庭内での役割を一生懸命に果たす姿が美徳とされていたのです。
テレビでは『きょうの料理』が人気を博し、中華やフランス料理などの本格的なレシピが紹介され、料理を学ぶ主婦たちのバイブルとなっていました。婦人雑誌には型紙が必ず付いており、裁縫をするのも当たり前。プロの主婦を目指す時代だったとも言えます。
一方で、番組内では「主婦しか選べなかった」といった声も紹介されていました。女性たちの中には、主婦という立場に喜びを感じながらも、自分自身の可能性にフタをしているような感覚を持っていた人も多くいたことがわかります。
働く女性が増えた1980年代の現実と葛藤
1980年代に入ると、男女雇用機会均等法の成立により、女性が社会に出る機会が増えました。街には原宿の歩行者天国で踊る若者たちがあふれ、活気のある時代でした。企業側も女性の雇用に積極的になり、接客や営業など、女性の視点が活かされる場面が多くなっていきました。
ただし、当時の社会にはまだ根強い偏見が残っていました。結婚を機に退職するのが当たり前とされ、家庭のサポート役としてしか女性が見られていない現実がありました。『おはようジャーナル』などでは、男性側の本音や企業の考え方が紹介され、「働きに出るには家族の理解が必要」といった価値観が存在していたことが分かります。
男女雇用機会均等法の施行により、総合職と一般職が制度として分かれ、女性にも責任ある仕事が任されるようになりましたが、それでも実際の職場では昇進の壁や評価の不公平さが残り、多くの女性が葛藤を抱えていたのが実情です。
当時の女性たちは、次のような課題に直面していました。
-
実績を上げても給与に反映されにくい
-
出産・育児と仕事の両立が難しい
-
家庭との役割分担が固定的だったため負担が大きい
1990年代以降の女性たちのリアルな選択とその代償
1990年代、バブルが崩壊し、経済の先行きが不透明になる中で、女性たちの働き方も多様化していきます。ある女性は、地元の証券会社で一般職として入社し、営業成績を上げて表彰もされましたが、給与は変わらず、職場の慣習で毎年着物で出勤する風習もありました。その後、よりやりがいを求めて他社の総合職に転職しましたが、結婚を機に夫に合わせて退職を余儀なくされ、派遣での転職を繰り返す日々に変わっていったという経験が紹介されました。
このように、女性たちは「結婚か仕事か」を選ばされる場面が多く、どちらを選んでも「モヤモヤ」が残る状況でした。視聴者からも、「母が父に仕事を辞めろと言われていた」「自分は専業主婦になりたかったが、経済的に無理で働き続けている」といった声が多数寄せられていました。
この時代には、料理研究家・小林カツ代さんが時短レシピを広め、「完璧じゃなくていい」「手を抜くことも愛情」という新しい考え方を提案しました。電子レンジの普及や家庭科の男女共修化なども進み、男性の家事参加や家庭内の役割分担にも少しずつ変化が見られるようになりました。
これからの女性の生き方と番組が果たす役割
今回の放送では、昭和から平成にかけて変化してきた女性の生き方を紹介しながら、専業主婦でも働く女性でも「自分らしく生きること」が大切というメッセージが込められていました。『あさイチ』が16年目を迎えようとしている今、女性たちの選択肢は確かに広がりましたが、その分、抱える悩みや責任も増えているという現実もあります。
番組の最後には、介護など家庭内の負担が今でも女性に偏りがちであることが語られ、これからも社会全体で意識を変えていく必要があるという話で締めくくられていました。
コメント