くるみとキャラメルが香ばしい!エンガディナー・ヌストルテの本格レシピ|2025年4月7日放送
2025年4月7日(月)放送のNHK『グレーテルのかまど』では、スイスの伝統菓子「エンガディナー・ヌストルテ」が紹介されました。案内役は俳優の瀬戸康史さん。今回取り上げられたのは、アルプスの大自然とともに生きる人々が愛してきたお菓子、くるみたっぷりのタルトです。サクサクの生地とカリッと香ばしいクルミ、そして濃厚なキャラメルのハーモニーが口いっぱいに広がる伝統の味。お菓子作りにかける想いと、山奥の静かな暮らしに寄り添うような素朴なお菓子の物語に、心がほっこり温まりました。
「アルプスの少女ハイジ」の舞台、グラウビュンデン州
スイス東部にあるグラウビュンデン州は、アルプスの山々に囲まれた自然豊かな場所です。この州にあるマイエンフェルトという町は、『アルプスの少女ハイジ』の原作に登場する舞台として知られています。現在もこの地域には「ハイジドルフ(ハイジの村)」と呼ばれる観光地があり、山小屋、学校、ヤギ小屋などが再現されています。訪れた人は19世紀当時の山村の暮らしを感じながら、ハイジの物語を身近に体験することができます。
また、映画版『ハイジ』の撮影地となったサン・モリッツ近郊のサラストレインや、ベルギュン・フィリズール地域のラッチ村やファライン・アルプも注目のスポットです。これらの場所では、映画のセットや展示もあり、ハイジの道(Heidiweg)と呼ばれるハイキングコースで物語の世界を巡ることができます。
くるみのタルト「エンガディナー・ヌストルテ」の物語
エンガディナー・ヌストルテは、スイス・エンガディン地方に古くから伝わるくるみのタルトです。サクサクの生地に包まれたキャラメルとクルミのフィリングは、香ばしく甘い味わいが特徴です。このタルトは、厳しい自然環境の中で生活していた人々が、自らの手で栽培した食材を使い、保存性の高いお菓子として作られました。
19世紀末から20世紀初頭、グラウビュンデン州の菓子職人たちはフランス南西部へ出稼ぎに行き、そこで出会ったナッツタルト「タルト・オ・ノワ」に影響を受けたと言われています。1926年、サメーダンの職人ファウスト・プルトがベーカリーでこのタルトを製造し始め、1934年にはバーゼルの見本市で紹介され、広く知られるようになりました。
このお菓子は、遠く離れた家族や友人へ贈る心のこもった手土産としても重宝され、スイス中に広がっていきました。
エンガディナー・ヌストルテの特徴と製法
材料(直径18cm・1台分)
※分量が細かく設定されているので、しっかり計量するのが成功のカギです。
●練り込みパイ生地
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無塩バター:150g
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グラニュー糖(製菓用):75g
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塩:1.5g
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バニラエッセンス:1g
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卵黄:10g(Mサイズ0.5個分)
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卵:30g(Mサイズ0.6個分)
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薄力粉:225g
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塗り卵:10g(Mサイズ0.2個分)
●フィリング
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水あめ:7g
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グラニュー糖:70g
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生クリーム(乳脂肪分45~47%):70g
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バター:30g
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はちみつ(百花蜜):30g
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くるみ:160g
作り方
●パイ生地の準備
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無塩バター・卵・卵黄はあらかじめ室温に戻しておきます
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小麦粉はふるっておきます
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バターにグラニュー糖、塩、バニラエッセンスを加えてよく混ぜます
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卵黄を加え、続いて卵を2回に分けて混ぜます
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小麦粉を加えたら、全体をひとまとめにします
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210g(下生地用)と残り(上生地+側面用)に分け、ラップで包み冷蔵庫で1時間以上冷やします
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生地はそれぞれ5mm厚にのばして冷やしておきます
●くるみキャラメルの準備
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くるみを160℃のオーブンで15分ほどローストし、中心まで色づけます
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生クリームは湯せんにかけて人肌程度に温めておきます
●フィリングの作成
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鍋に水あめを入れて中火で温め、沸いたらグラニュー糖を1/4ずつ3回に分けて加えながら溶かします
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全体が薄茶色のキャラメルになったら、生クリームを加えて沸騰させます
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バターを加えてさらに沸かし、氷水でスプーンに取ってキャラメルの固さを確認します
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はちみつを加えてもう一度沸騰させ、ローストしたくるみを加えて全体をからめます
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セルクル(直径16cm)にオーブンペーパーを敷き、キャラメルくるみを流し入れて冷まします
●タルトの成形と焼き上げ
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オーブンを200℃に予熱しておきます
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側面用に1.5cm幅の帯状の生地を切り出しておきます
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底用の生地をセルクルで抜き、オーブンペーパーの上にセット
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側面に生地を貼り付け、接着面には水を塗ります
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キャラメルくるみを入れて、上生地をかぶせます
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ふちをフォークでしっかり押さえ、塗り卵を塗ってフォークで模様をつけます
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お好みでヤギ型の生地飾りをのせ、こちらにも卵を塗ります
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200℃のオーブンで約40分焼き、網の上で冷まします
※焼き上がりはキャラメルが熱いため、型から外すのは冷めてからがおすすめです
保存と楽しみ方
冷めた直後が一番のおいしさですが、常温でも保存がきくため、作り置きにも向いています。日が経つごとに味がなじんで、より深い風味が楽しめるのもこのお菓子の魅力です。濃厚な甘さの中にあるくるみのカリッとした歯ごたえがクセになります。ティータイムのお供や、お世話になった方への手土産にもぴったりの一品です。
山奥で暮らすおじいさんの知られざる過去とタルトの意味
番組では、「アルプスの少女ハイジ」のおじいさんにまつわる知られざる過去にも触れられる予定です。人里離れた山にひとりで暮らすその背景には、時代や地域の変化、失われた人間関係、そして心の痛みがあったかもしれません。
エンガディナー・ヌストルテのように、甘くて香ばしいけれど、どこか切ない余韻を残す味は、まさにおじいさんの人生と重なるように感じられます。キャラメルのほろ苦さやクルミの力強さは、自然の中でひとり静かに生きる彼の心を象徴するような存在です。
スイスのアルプスで代々受け継がれてきたこのお菓子には、時代を越えて残される想いや、山に生きる人々の誇りと強さが込められています。
保存性が高く、贈り物にも喜ばれるエンガディナー・ヌストルテ。放送を見逃した方も、ぜひこのレシピを参考に、アルプスの香りを感じるスイーツ作りを楽しんでみてください。
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