葛飾北斎の大福|江戸の絵師が愛した甘味を再現したスイーツ物語
2025年4月21日放送のNHK Eテレ『グレーテルのかまど』では、江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎の好物「大福」にスポットを当て、瀬戸康史さん演じるヘンゼルが赤富士と大波をモチーフにした創作大福づくりに挑戦しました。江戸の菓子文化と北斎の生涯が甘味を通して浮かび上がる、味わい深い内容となっています。絵筆を片手に大福をほおばった北斎の姿に思いを馳せながら、現代の手で再現するお菓子作りが、文化と食の橋渡しとなっていたことがよくわかる回でした。
北斎と大福の意外な関係
葛飾北斎は「画狂人」と自称するほど、朝から晩まで筆を離さず絵を描き続けた人物でした。その一方で、食事にはあまりこだわりがなく、そばを1日2杯食べるだけのような簡素な食生活を送っていたことでも知られています。そんな北斎が唯一、絵を描きながら口にしていたのが甘い和菓子でした。中でも大福は、絵筆を持つ手を止めずに食べられるお気に入りだったようです。
当時の江戸には、手軽に楽しめる大福や団子など、庶民の暮らしを彩る甘味が多くありました。大福は、腹持ちもよく、日持ちもするため、創作に没頭する北斎にとってはぴったりのおやつだったのかもしれません。番組では、そんな北斎の生活や時代背景を描きながら、浮世絵と和菓子が交差する物語が丁寧に紐解かれていきました。
ヘンゼルが挑戦したのは“赤富士”と“大波”の大福
番組では、北斎の代表作『富嶽三十六景』から2つの作品――“凱風快晴(赤富士)”と“神奈川沖浪裏(大波)”をモチーフにした大福を制作。色や形、包み方に工夫をこらし、まるで絵画のような和菓子が誕生します。ここではその再現レシピを詳しくご紹介します。
材料(約12個分)
<基本の生地>
-
餅粉:105g
-
上新粉:20g
-
上白糖:125g
-
水:150ml
-
片栗粉(打ち粉用):適量
<色づけ用>
-
食用色素(赤・水色):各少量
-
シロップ(砂糖1:水2で煮溶かす):適量
<中あん>
【赤富士用】
-
小豆こしあん:60g(10g×6個)
-
白こしあん:90g(15g×6個)
【大波用】
-
白こしあん:150g(25g×6個)
-
水色の食用色素:ごく少量
作り方
生地の準備
-
ボウルに餅粉・上新粉・上白糖を入れて泡立て器で混ぜます
-
水を2回に分けて加えながら、ダマにならないようによく混ぜます
-
出来上がった生地を2つに分け、一方に赤の食用色素を加えます
-
湿らせたさらし布巾を敷いた蒸し器で、それぞれの生地を20分蒸します
-
蒸し上がったら、木べらでよく混ぜてなめらかにし、乾かないよう湯せんで保温します
あん作りと成形
【赤富士】
-
小豆こしあん(10g)を白あん(15g)で包み、2層のあん玉を6個作る
-
赤い生地を25gずつ取り平らにのばし、中心に白生地(3g)をのせて富士山の冠雪部分を表現
-
あんを包み込み、俵型に形を整え、上部を指でつまんで山頂の角度をつける
-
シロップを使って赤と白の生地を接着し、なじませる
【大波】
-
白こしあんに水色の色素を加えてよく混ぜ、25gずつのあん玉を6個作る
-
白い生地を25gずつ取り、のばして水色のあんを包む
-
ぬらして絞ったさらし布巾に包み、茶巾絞りのように絞って波の形を作る
-
絞り口を斜めに折り返して、波がうねるような形を表現する
出来上がりと食べごろのコツ
完成した大福は、見た目の美しさだけでなく、こしあんのやさしい甘さと求肥のもちもち食感がバランスよく口に広がります。保存は常温で、乾燥しないようラップなどで包んで管理します。できれば当日中に食べるのがおすすめです。
-
赤富士は見た目が華やかで、お祝いの席にもぴったり
-
大波は造形の面白さが際立ち、来客時にも話題になる
どちらも文化と味覚が融合した特別な一品となります。
おわりに
「グレーテルのかまど」らしい、物語性と手作りの温かさが詰まった回となった今回の放送。葛飾北斎が愛した甘味・大福を通して、絵にかけた情熱と人間らしい一面が浮き彫りになりました。また、赤富士と大波という象徴的な作品をモチーフにした創作和菓子は、見た目にも楽しく、家庭でもチャレンジしてみたくなる内容でした。
再放送や見逃し配信で視聴可能な方は、ぜひチェックしてみてください。手作りの和菓子で、江戸の空気と北斎の心に少しだけ触れてみる――そんな一日を過ごしてみるのも素敵ですね。次回の「グレーテルのかまど」も楽しみにしたいです。
コメント