魚のくさみを取るプロの技
NHK Eテレで放送される『明日から使える プロの食材術』第4回は、「魚のくさみを取る方法」に注目した回です。家庭でもすぐに取り入れられる驚きの下ごしらえテクニックを、食物学の専門家とフレンチシェフがわかりやすく紹介します。今回の放送では、刺身・焼き魚・洋風煮込みなど魚料理全般に応用できるくさみ対策が取り上げられる予定です。
料理人の食材術で紹介された注目の3品
まず紹介されたのは、フランス南部の郷土料理「たらのブランダード」です。干しだらを使うのが本場のスタイルですが、今回は生のたらを使用。たらにんにく、そして香り豊かなハーブを牛乳で煮ることで、臭みを抑えつつまろやかな味わいに仕上げます。
・たらは加熱後に丁寧に骨を取り除いてほぐします
・マッシュポテトとよく混ぜ合わせ、全体がなめらかになるまでしっかり練ると、ふわっとした食感になります
・オリーブオイルを加えるとコクが出て、バゲットにのせて食べるのがおすすめです
次に紹介されたのは、火を使わず簡単に作れる「かつおの即席マリネ」です。かつおの切り身に塩、こしょう、しょうゆをふり、たっぷりの香味野菜(ねぎ・みょうが・しょうがなど)をのせます。
・熱したオリーブオイルを香味野菜の上からジュッとかけることで、香りが立ち、魚の表面も軽く加熱されるため食べやすくなります
・オイルの熱で薬味の辛味がやわらぎ、全体がなじみやすくなります
・ごはんのおかずにも、パンにのせてもおいしくいただけます
最後に放送されたのは「いわしのおろし方」の実演です。家庭でいわしをさばくのは少し難しく感じるかもしれませんが、正しい手順を踏めばとてもシンプルです。
・最初に頭を落とし、腹に切れ目を入れて内臓を取り除きます
・流水で中を洗ったら、三枚おろしの要領で尾の近くから背側と腹側それぞれに包丁を入れていきます
・尾側を先に切った後、頭側の身を包丁で軽く押さえながら、皮を手でそっとめくるように外すのがポイントです
・この方法なら皮もきれいに取り除け、身が崩れにくくなります
どの工程も、魚の扱いに慣れていない方でも丁寧に行えば再現可能です。ほんのひと手間でプロの仕上がりに近づけるのが、今回の「食材術」の魅力です。
くさみさよなら魚 料理人のレシピ
さけのムニエル パリパリ皮をのせて
材料(2人分)
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皮をひいたさけ(切り身)…2枚
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焼いた皮(飾り用)…適量
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塩・こしょう・小麦粉…各適量
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バター(食塩不使用)…20g
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ケイパー(塩漬け)…10粒ほど
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にんにく(みじん切り)…3g
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パセリ(みじん切り)…3g
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エシャロット(またはたまねぎ/みじん切り)…10g
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オリーブ油…適量
作り方(2人分)
さけは皮を取り除き、塩、こしょう、小麦粉をまぶしておきます。表面がなめらかになる程度にまぶすことで、焼き目がきれいにつき、油も均一に回ります。
・フライパンにオリーブ油を入れ、さけは皮があった面から焼き始めます。
・蓋をして、弱火〜中火でじっくり蒸し焼きにすることで、中までふっくらと火が通り、パサつかずしっとりと仕上がります。
・表面に薄い焼き色がついたら裏返し、同じく蒸し焼きにします。
・両面が焼けたらバターを加え、フライパンを傾けながらバターをスプーンでさけにかけて香りを移します。
次にソース作りです。さけを取り出したあとのフライパンに、にんにく、エシャロット、ケイパー、パセリを加えて軽く炒めます。これがバターソースのベースになり、魚のくさみをやわらげながら深みを与えます。
・火を止めたあと、皿にさけを盛りつけてソースをかけ、あらかじめ焼いておいたパリパリの皮をトッピングとして添えます。
・皮はオーブントースターやフライパンでしっかり焼いておくと、見た目も食感もアクセントになります。
ポイント
・さけは弱火で蒸し焼きにするとふっくらし、旨みを逃がさずに仕上がります。
・オリーブ油で焼き始め、バターは最後に加えることで焦げつきを防ぎ、香りをしっかり活かせます。
魚の皮を捨てずに再利用し、香ばしいアクセントとして仕上げる発想が料理人ならではの工夫です。
香り・食感・彩りの三拍子が揃った、くさみのないごちそうムニエルが完成します。
刺身のサクは「水で洗う」ことでくさみを取る
刺身用のサクは新鮮であっても、表面にぬめりや血合いが残っていることがあり、これが魚特有のくさみの原因になります。家庭で使う場合でも、まず冷たい流水でやさしく洗うのが基本です。ゴシゴシとこする必要はありません。表面をなでるようにして、血やぬめりを流すようにします。
・使用する水は冷水を選び、魚の劣化を防ぎながら洗うのがコツです
・洗ったあとは清潔なキッチンペーパーで水分をしっかり拭き取ることで、臭いの元を残さないようにします
・ペーパーで包みながら軽く押さえるようにすると、余分な水分とともに表面の汚れもきれいに取り除けます
さらに、より効果的なくさみ取りの方法として塩を使った下処理があります。サクの表面全体にまんべんなく塩をふり、15〜20分ほど置いておきます。時間が経つと、魚の表面から水分がにじみ出てきます。この水分には臭み成分が含まれているため、浸透圧によってくさみが外へ引き出されるという仕組みです。
・塩をふったあとは必ずキッチンペーパーで出てきた水分をふき取ります
・塩気を気にする場合は、軽く水で洗い流してから再度水気を拭き取る方法もあります
・この工程を加えるだけで、魚の味が一段とさっぱりし、臭みがなくなります
青魚など、特ににおいが気になりやすい種類の魚には酢水での処理も効果的です。水180mlに対し酢小さじ1を加えた酢水に、サクを2〜3分ほど浸けます。これにより酢の酸性成分が臭みの原因物質を中和してくれるため、魚独特のにおいが軽減されます。
・酢水から取り出したあとは、表面の酢を水で軽く流してから水気を丁寧に拭き取ります
・長く浸けすぎると酢の風味が残りやすくなるため、時間を守るのがポイントです
・この方法は特にサバやイワシなど、青魚に適しています
これらの工程を踏むことで、家庭でもプロのように魚のくさみを取り除き、よりおいしく刺身を楽しむことができます。手間は少しかかりますが、その分味の変化ははっきりと感じられるため、一度試す価値は十分にあります。
焼き魚には「酢」を使って仕上がりを一段上に
焼き魚にする魚にも、くさみが残っていると仕上がりの味に影響します。ここで活躍するのが「酢」。酢に含まれる酢酸がトリメチルアミン(臭みの原因)を中和し、においを抑える働きがあるのです。
調理前の下処理としては、塩を振ってしばらく置いた切り身を、酢を加えた熱湯にサッとくぐらせる方法が効果的です。表面のぬめりや余分な脂が取れ、焼いたときの香ばしさが際立ちます。
また、酢水で表面をやさしく洗うだけでも十分に効果があります。青魚のような独特のにおいを持つ魚にはとくにおすすめです。
フランス流は「牛乳で煮る」でくさみをやわらげる
今回の番組に登場するのはフレンチシェフ・石井真介さん。フランスでは、魚の臭みを取るために牛乳で煮る方法が使われていると紹介されます。
牛乳には「カゼイン」というたんぱく質が含まれており、臭みの元となるトリメチルアミンを吸着する性質があります。さらに牛乳のまろやかさが魚の身に移り、より上品な仕上がりになります。
● 代表的な例は「ムニエル」
ムニエルでは、焼く前に魚を牛乳に10〜30分ほど漬けておくことがあります。こうすることで臭みが和らぎ、焼いたときの香りや焼き色がよくなります。
● 南仏の郷土料理「ブランダード」
干し鱈を牛乳で煮てやわらかくし、じゃがいもと混ぜてペースト状にする料理。牛乳で煮ることで、干物の強い臭いが消え、なめらかな風味に仕上がるのが特徴です。
● そのほかの応用例
タラや甘エビを牛乳で煮込んでクリーム煮にする料理や、魚介と牛乳を組み合わせた「海鮮ミルク粥」など、バリエーションは豊富です。どれも臭みが消えるだけでなく、味わいに深みが加わるのが魅力です。
家庭でも簡単に取り入れられる!
刺身、焼き魚、フレンチ、どの調理法にもそれぞれに適した臭み取りのプロ技がありますが、どれも特別な道具を使わず、家庭でも実践可能な内容ばかりです。今回の『明日から使える プロの食材術』では、それらを科学的な視点と調理の実例を交えて紹介してくれるため、初心者にも理解しやすく、すぐに役立つこと間違いなしです。
講師として登場する佐藤秀美さん(食物学の専門家)と石井真介さん(フレンチシェフ)のタッグによる説明は、魚の調理が苦手な方にもきっと新しい発見をもたらしてくれるはずです。
※この記事は、2025年4月21日放送予定のNHK番組『明日から使える プロの食材術(4)くさみさよなら魚』の事前情報をもとに構成しています。
※放送後、内容が異なる場合がありますので、ご了承ください。
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