どうする?子や孫のSNS利用 世界で進む“禁止法”反対も
子どもたちにとって、SNSは日常の一部となっています。友だちとの交流や情報収集、自己表現の場として欠かせない存在ですが、同時に犯罪やいじめ、メンタルヘルスの悪化といった深刻な問題も指摘されています。2025年4月23日放送の「クローズアップ現代」では、こうした現状を受けて世界で進む「子どものSNS利用禁止法案」と日本社会の対応、家庭でできる対策などが特集されます。放送前時点で明らかになっている情報をもとに、番組内容を整理しました。
海外で進む“SNS禁止法”の実態
オーストラリアでは、2024年11月に可決された「オンライン安全改正法」により、16歳未満のSNS利用を全面禁止する方針が打ち出されました。施行は2026年1月の予定で、FacebookやTikTok、Instagramなどが対象とされ、YouTubeやGoogle Classroomは除外されます。この法律では、保護者の同意があっても子どもの利用は許可されません。
さらに、SNS運営企業には、未成年の利用を防ぐための年齢確認と適切な対策が義務づけられ、違反には最大約49億円の罰金が科される可能性があります。背景には、SNSの過度な利用が子どもの精神的健康に及ぼす悪影響や、ネットいじめ、有害コンテンツへの曝露といった深刻な問題があります。
一方、アメリカ・フロリダ州では14歳未満のSNS利用を禁止する「House Bill 3」が成立し、2025年から施行予定です。こちらは、14歳と15歳には保護者の同意を条件にアカウント作成を認めています。精神的負担や犯罪被害の増加への対応として、保護者が管理しやすい制度設計が重視されました。
子どもを守る大人たちの危機感
これらの法案を後押ししたのは、保護者や教育関係者など、子どもの安全を願う大人たちの危機感です。オーストラリアでは、12~17歳の約4割がネット上で不快な体験をし、摂食障害やうつの傾向が高まっているとの報告もあります。SNSを通じた見知らぬ大人との接触や詐欺被害も多発しており、「家庭だけでは守れない」という思いが制度化の原動力になりました。
反対する声も根強く存在
しかし、テック業界や人権団体はこの動きに反発しています。アムネスティ・インターナショナルは、「SNSは表現の自由の場であり、特にLGBTQIA+の若者にとっては重要な居場所」であると主張。また、年齢確認のための本人確認書類の提出はプライバシーの侵害や監視強化につながるとして懸念が広がっています。
SNSは若者にとって、仲間とつながり、安心できる居場所をつくる手段でもあります。地方在住の若者や少数派にとって、リアルの世界では得られないつながりを提供してきた側面もあります。全面的な禁止が、逆に孤立を深める可能性も否定できません。
日本はどうする?社会と家庭の役割
日本では今のところ、法的な年齢制限を設けたSNS規制は存在していません。ただし、2008年に施行された「青少年インターネット環境整備法」により、18歳未満に対するフィルタリングの設定は義務づけられています。
こども家庭庁は現在、SNSの年齢制限や安全対策について検討会を進めており、今後の議論が注目されています。一方で、年齢確認の難しさや、規制をすり抜ける方法の存在も課題とされており、実効性ある対応が求められています。
家庭でできるSNS利用のルール作り
番組では、家庭でのルール作りの具体例も紹介される予定です。放送前時点で注目されているルールの一例は以下の通りです。
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リビングでのみ使用:スマホやタブレットの使用は共用スペースに限定し、見守りやすくする
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時間制限の導入:夜9時以降の使用を禁止する、利用時間を1日30分までと決める
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使用アプリの制限:ゲームやSNSは事前に親の確認を通す
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定期的な振り返り:週に1度、親子で利用内容を話し合う時間を持つ
こうしたルールは一方的に決めるのではなく、子どもと一緒に考えて納得感を持たせることが大切です。禁止や制限だけでなく、「どう使うか」を一緒に学ぶことで、信頼関係も育まれていきます。
健全なデジタル社会の実現に向けて
SNSの利用をめぐる課題に、正解は一つではありません。大切なのは、子どもたちが安全で健やかに成長できる環境を整えることです。そのためには、家庭だけでなく、学校、地域、そして社会全体での協力が不可欠です。
放送される「クローズアップ現代」では、こうした課題に向き合う大人たちの声、そして子どもたちの本音も紹介される予定です。番組を通じて、SNSとのつき合い方を家庭で改めて見直すきっかけになることが期待されます。
放送後には、番組で紹介された新たな情報や提案もふまえ、この記事を更新予定です。最新情報の反映まで、しばらくお待ちください。
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