ドクターヘリ赤ちゃんの砦を守れ
2025年6月14日(土)夜8時からNHK総合で放送される「新プロジェクトX~挑戦者たち~」では、2016年に発生した熊本地震でのドクターヘリによる救出劇が紹介されます。番組タイトルは「ドクターヘリ 赤ちゃんの砦を守れ 熊本地震18時間の救出劇」。都市と地方の医療格差に立ち向かい、小さな命をつなぐために命がけの奮闘を続けた人々の物語です。放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
熊本地震で機能を失った市民病院
2016年4月、熊本を襲った2度の震度7の揺れは、地域の医療にも深刻な影響を与えました。熊本市民病院では、地震によって建物のあちこちに亀裂が入り、倒壊の危険性が高まるという非常事態が発生しました。
・本震で受水槽が破損し、病院全体への水の供給が止まった
・電気やガスも一時的に使えなくなり、医療機器の使用が制限されました
・病院内の温度や湿度管理が難しくなり、入院患者の安全確保が急務になりました
病院内には当時約310人の入院患者がいて、安全を最優先に全員の避難が決定されました。スタッフたちは余震が続く中で、患者をストレッチャーや車椅子で運び出し、転院先の病院と連携をとりながら搬送作業を行いました。
中でも最も切迫していたのが、NICU(新生児集中治療室)の赤ちゃんたちの搬送でした。この病棟には重症の新生児が多数入院しており、中には人工呼吸器なしでは命をつなげない赤ちゃんもいました。
・NICUのベッドはすべて満床状態で、18人の赤ちゃんが入院
・酸素供給や電源が途絶えると、命にかかわる状況
・余震で保育器が揺れたり、機器の停止リスクも発生
熊本県内の他の医療施設も同様に被災しており、すぐに受け入れ可能な場所は限られていました。そこで、県外の病院に頼らざるを得ないという判断がなされ、鹿児島や福岡への搬送が検討されました。
このように、熊本市民病院のNICUでは、「今すぐにでも搬送しなければ助からない」赤ちゃんたちを抱えながら、地震と医療停止という二重のリスクと戦っていたのです。命をつなぐために時間との闘いが始まりました。
命の平等をめざして奮闘した人々
「新プロジェクトX」で描かれるのは、都会なら助かる命が、地方では救えないという医療格差の現実に向き合い、すべての命を平等に救いたいと願い、行動した人々の物語です。
主人公のひとりは、自身もかつて難病を患いながらも回復し、医師として現場に立つことを選んだ若手医師。自分がかつて救われた命であるからこそ、今度は誰かの命をつなぐ立場で恩返しがしたいと、NICUの現場で赤ちゃんたちを支え続けました。
搬送に使用されたドクターヘリも、ただの移動手段ではありませんでした。パイロットや整備士たちが5年の歳月をかけて改良を重ねた特殊仕様のヘリには、揺れを最小限に抑える機構や、機内でも新生児の処置ができる設備が整っていました。
・飛行中でも保育器内の温度・酸素・湿度を保つ設計
・機内でも処置・観察ができる新生児専門のモニター装備
・整備士が日常から1ミリ単位の調整を重ね、緊急出動に備えていた
また、パイロットは飛行技術だけでなく、“命を乗せている”という強い責任感を胸に、天候や地形、病院の着陸条件に細心の注意を払って飛行を成功させました。
こうした一人ひとりの想いと努力が結集し、熊本地震という非常事態の中でも赤ちゃんたちの命は守られました。彼らにとって搬送は“任務”ではなく、“誓い”でした。
日本の新生児医療は、昭和初期の高い乳児死亡率から脱し、保健制度の整備や医療機器の進化、現場の技術向上により世界トップレベルに発展してきました。しかし、その恩恵がすべての地域に均等に届いているとは限りません。
この救出劇は、「命の重さに差はない」という当たり前のことを再確認させてくれます。そしてその平等を実現するために、今日も医療現場の誰かが、見えないところで命のために闘っているのです。
今こそ知ってほしい、知られざる命の現場
今回の「新プロジェクトX」では、単なる災害ドキュメントではなく、命を守るためにどんな準備がされ、どんな信念のもとに行動がなされたのか、その裏にある“人間の物語”に光を当てています。
放送は6月14日(土)20時から。見逃した場合でもNHK+やNHKオンデマンドで視聴可能です。どこに生まれても命は平等であるべきだと信じて行動した人々の姿を、ぜひご覧ください。
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
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