高額療養費制度の引き上げが始まる
2025年2月13日放送のNHK【あさイチ】では、高額療養費制度の上限引き上げについて詳しく取り上げました。これは、医療費が高額になった際に、患者の自己負担額を抑えるために設けられた制度ですが、今年8月から段階的に上限が引き上げられる予定です。
今回の改正により、がん患者を中心に「負担が増え、治療を続けられなくなるかもしれない」といった懸念の声が広がっています。また、がんだけでなく、骨折や不妊治療などでこの制度を利用している人も影響を受けることになります。
高額療養費制度とは?今後の変更点
高額療養費制度は、1カ月あたりの医療費の自己負担に上限を設け、一定額以上の支払いを軽減する仕組みです。現在、年収550万円の人は、自己負担額が月8万100円程度に抑えられています。しかし、今年8月からは8万8200円に引き上げられ、2027年8月には11万3400円にまで上がる予定です。
・年収550万円の人:現在8万100円 → 2025年8月8万8200円 → 2027年8月11万3400円
・年収1040万円の人:現在16万7400円 → 2025年8月18万8400円 → 2027年8月25万2300円
政府はこの改正の理由について、「現役世代の保険料負担を減らすため」と説明しています。しかし、実際に治療を受ける患者側からは、「負担増により治療を諦めざるを得ない」との声が多く上がっています。
高額療養費制度の改正が患者に与える影響
この制度を利用している患者にとって、負担額の増加は生活に大きな影響を及ぼします。番組では、実際に制度を利用したことがある患者の体験談が紹介されました。
・30代の乳がん患者「そらさん」は、昨年の治療で20万円の医療費がかかったが、高額療養費制度のおかげで自己負担は8万4000円に抑えられた。現在の夫婦の手取り収入は25万円ほどで、「負担が増えれば、今後の生活に不安がある」と語る。
・肺がんが再発し、入院中の「いくらさん」は、1錠7000円の薬を1日4錠服用しており、10割負担なら月80万円の医療費がかかる。高額療養費制度を利用することで年間の自己負担は約20万円に抑えられていたが、制度改正後は負担額が増えるため、生活が厳しくなる可能性が高い。
特にがんの治療は長期間にわたることが多く、自己負担額の増加が、患者やその家族の生活に深刻な影響を及ぼすことが懸念されています。
患者が感じる不安の声
高額療養費制度の上限引き上げに関する調査では、自己負担額が増えれば46%の患者が治療を中断せざるを得ないと回答しています。
・子育て中のがん患者の約半数が「負担が増えれば治療を続けられない」と回答
・「現在でも月8万円を自己負担しているが、これ以上増えると生活が厳しくなる」という声が寄せられる
・「子どもの教育費を削らざるを得ない」「日々の生活費を切り詰めるしかない」という切実な訴えも
また、高額療養費制度はがん治療以外にも広く利用されています。
・骨折やリウマチなどの治療
・不妊治療
・妊娠高血圧症候群の治療
そのため、影響を受けるのはがん患者だけではなく、さまざまな病気や治療を受けている人々も負担増を懸念しています。
政府の対応と今後の見通し
厚生労働省は、「頻繁に高額療養費制度を利用する人に対しては、一定の軽減措置を設ける」としています。
・年に何度もこの制度を利用する患者には、負担額を軽減する方向で修正案を検討
・しかし、どの程度の負担軽減が行われるのか、詳細は未定
・患者団体は「すべての患者が一律に負担増となるのではなく、個々のケースに応じた柔軟な対応が必要」と主張
今後も議論が続く見通しですが、多くの患者にとっては負担増が確実であり、制度改正の影響を慎重に見守る必要があります。
まとめ
高額療養費制度は、多くの患者にとって命をつなぐための重要な制度です。しかし、今年8月からの上限引き上げによって、治療費の自己負担が増加し、生活の厳しさを感じる人が増えることが予想されます。特に、がんのように長期的な治療が必要な患者への影響は大きく、「治療を続けるかどうかの選択を迫られる人が増えるのではないか」と懸念されています。
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