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NHK【映像の世紀バタフライエフェクト】トランプ氏を動かす福音派とバイブルベルトの影響力とは|2025年4月21日

映像の世紀バタフライエフェクト

“神の国”アメリカに根づく福音派の力と政治との結びつき

2025年4月21日に放送される『映像の世紀バタフライエフェクト』では、「“神の国”アメリカ もうひとつの顔」と題して、アメリカに根づくキリスト教福音派の信仰と政治への影響力の歴史的背景が詳しく紹介されます。なぜ、かつては社会から取り残された存在だった福音派が、いまや大統領選挙を左右するような影響力を持つに至ったのか──その足跡をたどる内容となっています。

清教徒の理想と“神の国”アメリカのはじまり

アメリカの宗教史は、1620年にイギリスから移住してきた清教徒(プロテスタント)に始まります。彼らはイギリス国内での宗教弾圧から逃れ、アメリカの地に「理想の信仰社会」を築こうとしました。この「信仰に基づく建国の理念」は、その後のアメリカ社会に長く影響を与え続けます。

政府は建国後、先住民にキリスト教を広める同化政策を進めました。その手段として使われたのが寄宿学校制度です。子どもたちを家庭から引き離して教育し、信仰や生活習慣を「文明化」しようとしたのです。

やがて1920年代に入ると、都市化や科学の発展により、社会全体の信仰心は薄れていきました。この流れに危機感を持った熱心な信者たちは、禁酒法運動などの社会運動を通じて、再び宗教の価値を訴えかけようとします。こうした宗教的な活動が盛んなアメリカ南部の一帯を「バイブルベルト」と呼ぶようになりました。

冷戦下で再び高まる宗教の存在感

第二次世界大戦後、アメリカとソ連による冷戦体制が世界を覆う中、共産主義に対抗するために、アメリカでは「信仰」が国民的アイデンティティとして再評価されました。ソ連が原爆開発に成功し、アメリカ国内に不安が広がる中で、テレビやラジオで放送された伝道番組『決断の時』は、多くの人の心に届きました。

当時のドワイト・アイゼンハワー大統領は、宗教を共産主義に対する武器ととらえ、政治と宗教が結びつく構図を明確にしました。こうした方針により、キリスト教福音派は政治の後ろ盾として浮上します。

ところが、その後就任したジョン・F・ケネディ大統領は、カトリック出身であったこともあり、政教分離を積極的に進める姿勢をとりました。これにより、福音派の人々は「政治から排除された」と感じ、社会から孤立していくことになります。

“文化戦争”と信仰の反発

1970年代にはアメリカ社会に大きな変化が訪れます。女性の権利運動の広がりや中絶の合法化、学校での性教育の導入など、伝統的な価値観とは異なる社会の動きが加速しました。これに対して、福音派の家庭では強い拒否反応が起こり、子どもを学校に通わせない通学ボイコット運動が広がります。

このような状況の中、1976年には福音派出身のジミー・カーター大統領が誕生し、大きな期待が寄せられました。しかし、カーター大統領は女性の権利を支持し、中絶容認の立場を明確にしたことから、福音派からの信頼を失います。

そこで登場するのが、ジェリー・ファルウェル牧師によって設立された政治団体「モラル・マジョリティ」です。この団体は信仰を政治の場に持ち込み、テレビ伝道などを活用して全国規模の運動へと拡大していきます。

共和党との結束と保守の砦へ

1980年、ロナルド・レーガン大統領が福音派の集会に登場し、ジェリー・ファルウェルの支援を取りつけて当選。ここから共和党と福音派の結びつきが本格化し、以後の選挙戦では福音派が「宗教票」という確固たる力を持つようになります。

2001年には同時多発テロ事件を契機に、ジョージ・W・ブッシュ大統領が「正義の戦争」を掲げてイラク戦争を開始し、福音派の支持をさらに強化しました。教会から発信されるメッセージは国民の意識に影響を与え、宗教と国家が再び深く結びついていきました。

現在では、福音派の信者はアメリカ人口の約4分の1を占めるまでに成長しており、政治的発言力は無視できないものとなっています。

トランプ氏と福音派の再結束

そして2025年、ドナルド・トランプ氏が福音派の圧倒的な支持を受けて再び大統領に就任しました。就任初日から次々と大統領令に署名し、「我々は宗教を取り戻さなければならない」と語ったという報道もあります。

トランプ氏は中絶反対や同性婚への反対など、福音派の価値観に強く寄り添う政策を掲げており、彼の言動は「信仰を守るリーダー」として一部で受け入れられています。政治と宗教が再び結びついた今、アメリカ社会の価値観の分断はますます深まっているようにも見えます。

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