はじめに
NHK総合で放送された「あなたも絶対行きたくなる!日本最強の城」2025年新春スペシャルでは、冬の日本各地に点在する魅力的な城を紹介しました。今回は、「天空の城」備中松山城から始まり、雪化粧の国宝天守や温泉地の近くに位置する城など、冬ならではの絶景と歴史的背景に迫る内容でした。さらに、ゲストによる魅力解説やバーチャルリアリティ(VR)を活用したお城ツアーも展開され、多角的に城の魅力を伝える構成となっていました。
日本と外国の城の大きな違いは、城壁の有無です。 日本の城は、城のみが城壁に囲まれています。 一方で、外国の城は町全体を城壁で囲み、城郭都市を形成しています。 外国の場合は町全体が城になっているため、戦争の際にも逃げずに戦わなければなりません。
備中松山城:猫の城主「さんじゅーろー」との出会い
冒頭では、岡山県の備中松山城が登場。この城で暮らすオス猫「さんじゅーろー」が正式に城主に任命されているというエピソードが紹介されました。城主猫のユニークさと人懐っこい性格で観光客に大人気。天空の城と呼ばれる壮大な景観に、こうした癒しの存在が加わり、さらに注目を集めています。
黒が際立つ雪化粧 松江城
歴史と概要
松江城は江戸時代初期、1611年に建造された国宝天守を持つ貴重な城です。建設を指揮したのは堀尾忠晴で、完成した松江城はその後も幾多の変遷を経て現在の姿を保っています。天守は地上5階、地下1階の構造で、優れた耐久性を持つことが特徴です。冬の訪れとともに、松江城の周囲は雪に覆われ、その黒い板壁と白銀の雪の対比が息を呑むほどの美しさを生み出します。特に1月から2月が見頃で、雪景色を求める多くの観光客が訪れます。
絶景ポイントと観賞の楽しみ方
松江城の魅力を存分に楽しむには、大手門跡から入るのがおすすめです。大手門跡はその幅が14m以上もあり、壮大な雰囲気を感じられる入り口です。階段を上ると、見事な天守が現れます。特におすすめの観賞ポイントは「ななめ45度」からのアングルで、天守全体の調和と迫力を存分に味わえます。この視点から眺めると、黒い下見板に覆われた天守の美しさが際立ち、松江城ならではの魅力が強調されます。
黒い下見板の秘密
松江城の天守が黒い理由は、下見板と呼ばれる木の板で覆われているためです。この板は雨風から建物を守るための防御機能を果たし、耐久性を高めています。漆喰で覆われた白い城と異なり、下見板は湿気に強く、降雪や雨が多い冬でもその形を保つ利点があります。また、黒い板壁が雪景色に映えるため、冬季限定の美しさを楽しむことができます。
氷に映える漆黒の塔 松本城
冬が生み出す絶景の魅力
松本城は長野県松本市に位置し、現存する五層六階の天守を持つ国宝です。その独特な漆黒の外観と歴史的価値から「漆黒の塔」とも称されます。冬になると堀の水が凍り、氷面に映る逆さ天守が織り成す幻想的な景色が多くの観光客を惹きつけます。特に1月から2月前半は、厳しい寒さの中でしか見られないこの景観が最大の魅力です。
堀の秘密と湧き水の豊かさ
松本城の堀の水は湧き水によって満たされています。松本市は北アルプスからの地下水が豊富で、城が築かれる以前から「源智の井戸」をはじめとする古い井戸が地域住民に利用されてきました。この清らかな湧き水が堀の水質を保ち、凍った際の透明感を一層際立たせます。堆積物が溜まらないよう市が丁寧に管理しているため、美しい景観が守られています。
漆黒の外観を支える技術
松本城の特徴である黒い外観は、漆が塗られた下見板によるものです。この漆は毎年秋に地元の漆職人によって塗り直され、城の保護と美観を保っています。高さ約25mの天守は五層構造で、それぞれの階層が持つ異なるデザインが城の個性を際立たせています。この維持管理の努力が、松本城を四季を通じて美しい状態に保つ重要な要素となっています。
川霧にかすむ優美な楼閣 犬山城
犬山城の概要と歴史
犬山城は愛知県犬山市に位置し、現存する日本最古の木造天守を持つ国宝です。1537年、織田信長の叔父にあたる織田信康によって築城され、その後も城主の交代を経ながら保存されてきました。高さ19mの天守は小ぶりながらも優美な姿をしており、「白帝城」とも呼ばれています。その格式高い外観と歴史的価値から、多くの観光客を惹きつけています。
木曽川との絶景と霧に包まれる天守
犬山城の天守からは、木曽川の壮大な眺望を楽しむことができます。城は木曽川沿いの丘陵地に建てられており、その立地が自然との調和を生み出しています。特に冬の早朝、気象条件が整えば川霧が発生し、天守が霧に包まれる幻想的な光景を目にすることができます。この現象は冬の寒冷な時期に限られるため、特別な景観として訪問者に感動を与えます。
優美さを引き立てる花頭窓
天守の最上階に設けられている花頭窓(かとうまど)は、犬山城の特徴的な意匠の一つです。この窓はその名の通り、花のような形状をしており、格式高いデザインが天守の品格を高めています。このような装飾は、当時の城主の美意識や文化的背景を反映したものであり、犬山城が単なる防御施設ではなく、芸術性を兼ね備えた城であることを示しています。
桃瓦に隠された幸運のシンボル
犬山城には8つの桃瓦が設置されており、これらをすべて見つけると幸運が訪れると言われています。この桃瓦は天守や城の各所に散りばめられており、観光客が楽しみながら探すことができます。桃は長寿や繁栄の象徴とされ、日本の文化や歴史の中で特別な意味を持つ存在です。犬山城の散策に際しては、この桃瓦を見つけることが一つの楽しみとなるでしょう。
超巨大岩壁に圧倒!!岩殿城
岩殿城の歴史と地形の成り立ち
岩殿城は山梨県大月市に位置する、断崖絶壁の岩山に築かれた山城です。この地は約500万年前まで海であり、地殻変動により隆起して形成された岩山が城の基盤となっています。標高634mの岩殿山に築かれたこの城は、自然地形を最大限に利用した設計が特徴です。その険しい地形は、敵を寄せ付けない天然の要塞として戦国時代に重要な役割を果たしました。
富士山との四季折々のコントラスト
岩殿城からは、季節ごとに異なる富士山との絶景を楽しむことができます。春には桜の花と富士山、夏には青々とした緑と富士山、秋には紅葉、そして冬には雪化粧の富士山が岩殿山と調和し、訪れる人々に感動を与えます。特に晴れた日の朝や夕方には、太陽光が富士山に反射し、美しいシルエットを描き出します。この絶景はカメラ愛好家やハイキング愛好者にとって人気のスポットとなっています。
修験道の跡と威圧的なデザイン
岩殿城周辺には修験道の跡が点在しており、かつてこの地が精神的修行の場であったことを物語っています。また、岩殿城の設計には、敵を威圧するための戦略が見られます。断崖絶壁に築かれた天守や石垣は、敵軍に心理的な圧迫感を与え、防御を強化する役割を果たしていました。この設計は、単なる軍事拠点としてだけでなく、自然地形を生かした巧妙な城郭建築の一例です。
駿河湾を見下ろす水軍基地 伊豆長浜城
伊豆長浜城の歴史と役割
伊豆長浜城は静岡県伊豆半島の沼津市に位置し、戦国時代に北条氏の水軍基地として活躍した城です。この城は駿河湾に面し、その地理的条件を活かして戦国時代の海戦や防衛戦略において重要な役割を果たしました。北条氏はこの地を拠点にし、海上からの敵襲に備えつつ、自軍の水軍の活動を支える重要な拠点として使用していました。
絶景の眺望と富士山との調和
伊豆長浜城からは、駿河湾を一望できる素晴らしい眺望が広がります。特に晴れた日には、湾の向こうにそびえる富士山を望むことができ、その景観は訪れる者を魅了します。この地の絶景は、戦国時代には敵への威圧感を与えるとともに、現在では観光客にとっての大きな魅力となっています。
戦艦メンテナンス拠点としての機能
伊豆長浜城周辺は、戦国時代に北条氏の戦艦のメンテナンスや補給基地として機能していました。駿河湾の穏やかな湾内は、多くの船を停泊させるのに適しており、戦闘の準備や修理が行われていました。さらに、周囲には海上戦術の訓練場としての役割も果たしたと考えられています。このような背景から、伊豆長浜城は戦国時代の海軍拠点として非常に重要な地位を占めていました。
北条氏と駿河湾の争奪戦
駿河湾は北条氏、徳川氏、武田氏などの有力な大名が争った地域であり、伊豆長浜城はその中心的な拠点の一つでした。この城は、敵軍が駿河湾を通過しようとする際の牽制基地として機能し、特に徳川氏と武田氏との激しい戦いにおいて重要な役割を果たしました。この地域の支配権を巡る争いは、戦国時代の東海地方の歴史における重要なエピソードとなっています。
関東を守る土の要塞 山中城
山中城の歴史と役割
山中城は、静岡県と神奈川県の境界付近、箱根山の近くに築かれた土作りの城です。16世紀末、北条氏によって建設され、関東地方を防衛するための重要な拠点となりました。戦国時代には、東海道を通る豊臣秀吉の大軍に備えるため、防御ラインの一環として位置づけられていました。城の構造と地形を巧みに利用した設計が特徴で、当時の戦略的な思考が色濃く反映されています。
障子堀のデザインと機能
山中城の最も象徴的な特徴が、ワッフル状の形をした「障子堀」です。この独特な堀の構造は、防御機能を高めるために設計されたもので、深さ9メートル以上に達する部分もあります。敵が堀に落ちると、滑りやすい関東ローム層によって身動きが取れなくなり、城兵からの攻撃を受ける仕組みになっていました。この障子堀のデザインは、戦国時代の城郭建築の中でも特に優れた防御機構の一つとされています。
富士山と障子堀の写真映えスポット
障子堀越しに望む富士山の景観は、山中城を訪れる観光客にとって大きな魅力となっています。ワッフルのような堀の形状と雄大な富士山を組み合わせた写真は、SNSでも話題となり、多くのカメラ愛好家が訪れる理由の一つです。特に朝の柔らかな光の中で撮影すると、堀の陰影と富士山のシルエットが美しく映えます。
豊臣秀吉との戦い
山中城は、北条氏の関東防衛戦略の要として機能しましたが、1590年、豊臣秀吉の大軍による攻撃を受けました。この戦いでは、わずか半日で城は陥落し、多くの犠牲者が出たとされています。豊臣軍の圧倒的な兵力に対して、山中城の防御機構も通用しませんでしたが、北条氏の知略と防御の工夫が評価されています。
バーチャルお城ツアー
最新VR技術による城体験
今回のバーチャルお城ツアーでは、最新のVR技術を活用し、日本各地の城を訪れる体験が紹介されました。通常では行くことが難しい城の詳細な構造や景観を、リアルタイムで楽しむことができます。案内役として登場したKAORIさんが、千田先生と影山さんを歴史と技術が融合した新感覚の旅へ誘いました。
肥前名護屋城:金箔瓦の輝き
最初に訪れたのは、佐賀県唐津市にある肥前名護屋城です。この城は豊臣秀吉が築いたもので、朝鮮出兵の際の拠点として重要な役割を果たしました。VRでは城のそばまで瞬時に移動できる技術が披露され、天守方向へ向かうと、瓦に貼られた金箔の美しい輝きが再現されていました。現存していない部分も、VRによって当時の壮麗な姿を詳細に確認できる点が特徴です。
和歌山城:御殿の再現
次に訪れたのは和歌山県和歌山市にある和歌山城です。現在では天守のみが残されていますが、VRでは当時の御殿や城内施設が再現され、城全体の規模感や構造を体感することができます。この再現により、失われた歴史的建築物の復元がどれほど魅力的であるかが実感できます。和歌山城の広大な敷地とその豪華な造りは、歴史のロマンを感じさせます。
福山城:空中から見る水堀
最後に訪れたのは広島県福山市の福山城です。ここではVRによって、空中から水堀を見下ろす視点が体験でき、通常の訪問では味わえない視覚的な驚きが提供されました。水堀と石垣の配置が、どのように防御機能を果たしていたかを直感的に理解できる構造で、訪問者に新たな視点を提供します。また、福山城の歴史的背景や豊臣秀吉との関係性も解説されました。
温泉完備!諏訪の浮城 高島城
高島城の概要と立地
長野県諏訪市に位置する高島城は、諏訪湖のほとりに建てられた城で、「諏訪の浮城」とも称されます。この城は、諏訪地方を統治していた諏訪氏が築いたとされ、湖に面した独特の立地を活かした設計が特徴です。周囲には温泉地が点在し、地域の観光スポットとしても親しまれています。
御神渡りと冬の魅力
高島城がある諏訪湖は、厳冬期に氷点下10℃以下の日が続くと「御神渡り」と呼ばれる自然現象が発生します。湖面に現れる氷の亀裂が、神秘的な模様を描き出すこの現象は、地元の人々にとって冬の風物詩であり、多くの観光客を惹きつけます。城とこの自然現象を組み合わせた風景は、訪れる人々に特別な感動を与えます。
温泉との関わり
高島城の最大の特徴は、城内に温泉が完備されていることです。発見された導水管と石枡からは、当時温泉が生活に密接に関わっていたことがわかります。この温泉は非常に高温で、当時の人々にとって癒しと健康を提供する場であったと考えられています。また、城が温泉地に隣接していることで、訪問者が城と温泉の両方を楽しむことができる点も魅力的です。
天守と独自の建築技術
高島城の天守がある中心部は、水堀と石垣でしっかりと守られています。当時の屋根はこけら葺きで、建物を軽量化するために採用されたとされています。また、石垣の構築には丸太を基盤に用い、その上に石を積む独特の技術が使われました。この方法は、安定性を高めると同時に、建築資材を効率的に活用する工夫の一環でした。
名湯のそばに名城あり 湯築城
湯築城の概要と歴史
湯築城は愛媛県松山市に位置し、道後温泉の近くに築かれた城で、14世紀後半に南北朝時代の武将河野通盛によって建設されました。この城は、中世の日本における政治的・軍事的拠点であり、戦国時代には河野氏の居城として重要な役割を果たしました。現在、湯築城跡は公園として整備され、当時の城の構造や生活を体感できる観光スポットとなっています。
水堀と高井土塁の見どころ
湯築城跡では、水堀や高井土塁など、中世の城郭構造がよく保存されています。土塁は当時の防御機能を物語るもので、土塁の間を進むと堂々たる門が現れる設計になっています。さらに、土塁の断面を見ることができ、築造方法やその規模の大きさを直感的に理解できます。このような遺構は、戦国時代の城郭建築技術の一端を学ぶ貴重な機会を提供します。
武家屋敷と城主の屋敷
城内には、側近たちが居住していた武家屋敷が復元されています。このエリアは、中世の生活様式や建築技術を再現しており、当時の生活文化を感じることができます。さらに奥には、城主の屋敷が構えられていた場所があり、ここからは城の中心的な役割を担っていた部分がどのように機能していたかを想像することができます。
温泉の源泉を集める装置
湯築城の北側には、温泉の源泉を集めて分配する装置が設置されていた跡が見つかっています。この装置は、道後温泉と密接に関わる城の独自性を示すもので、温泉地としての湯築城の役割を強調しています。この発見は、城と地域の温泉文化が密接に結びついていたことを示す重要な資料です。
謎の穴とその解釈
城内の屋敷の庭には、謎の穴が存在します。この穴については、さまざまな解釈がされていますが、生活用水の確保や地下室として利用されていた可能性が指摘されています。このような不明点を含む遺構が、訪問者に歴史の謎解きの楽しさを提供しています。
まとめ
今回の特集では、冬ならではの城の魅力を余すことなく紹介しました。国宝天守を持つ城や富士山を望む絶景の城、温泉地に佇む癒しの城など、さまざまな城の姿が楽しめました。ゲストが選ぶ最強の城は松本城に決定。雪と漆黒の天守が織り成す美しさが評価されました。
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