鈴木砂羽 〜“自らの表現”を解き放て〜|2025年3月12日放送
2025年3月12日に放送されたNHK総合「ファミリーヒストリー」では、女優・鈴木砂羽さんの家族の歴史を深く掘り下げました。鈴木砂羽さんといえば、映画、ドラマ、舞台と幅広く活躍し、個性的で力強い演技が魅力の俳優です。彼女の表現力や独自の感性はどこから生まれたのでしょうか。番組では、画家として活躍した両親や祖父母、さらには戦争を生き抜いた曾祖父まで、鈴木砂羽さんのルーツをたどりました。そこには、表現者としての情熱と、それを支える家族の愛がありました。
画家の父から受け継いだ表現者の魂
鈴木砂羽さんは画家の両親のもとに生まれ、幼いころから芸術に囲まれた生活を送っていました。特に父・鈴木俊さんは、「西条俊生」の名前で活動する画家でありながら、絵画教室も運営し、多くの生徒に絵を教えていました。そんな俊さんが画家を志したのは、彼の父、つまり鈴木砂羽さんの祖父・貞夫さんの影響が大きかったといいます。
貞夫さんは、浜松を代表する画家のひとりで、内閣総理大臣賞を受賞するほどの才能を持っていました。特に中田島砂丘を描いた作品が多く、「砂丘画家」とも呼ばれていました。しかし、彼の人生は決して順調なものではありませんでした。
・昭和16年、太平洋戦争が勃発
・翌年、貞夫さんは海軍に召集される
・戦時中、軍事目的の絵を描くことを強制される
・駆逐艦「沖風」に乗船するが、アメリカ軍の潜水艦による魚雷攻撃で沈没
・冷たい海を泳ぎ続け、生還するものの爆撃の衝撃で聴力を失う
戦争から戻った貞夫さんは、一度は画家としての道を諦めそうになります。しかし、そんな彼を支えたのが、後に妻となる郁子さんでした。「あなたは絵を描き続けるべき」と励まされ、彼は再び筆をとる決意をします。こうして、貞夫さんの芸術の魂は息子の俊さん、そして孫の砂羽さんへと受け継がれていきました。
祖母・郁子の強さと支え
鈴木砂羽さんにとって、祖母・郁子さんはとても大切な存在でした。彼女のルーツをたどると、静岡県周智郡森町にたどり着きます。郁子さんの曾祖父・伏原藤吉さんは、茶商として成功を収め、一財を築いた実業家でした。しかし、時代の波に翻弄されることになります。
・藤吉さんの長男・貞三さんは、澱粉から糖を作る工場を経営し、順調に事業を拡大
・しかし、大正9年、工場でボイラーが爆発し、大惨事が発生
・多くの作業員が亡くなり、事業は解散
一度は没落したものの、貞三さんは大阪へ渡り、茶業を再び成功させます。しかし、昭和17年に54歳で他界。その3年後には、大阪大空襲で自宅が焼失。そんな中、郁子さんは静岡・森町に疎開し、そこで戦争を生き抜いた貞夫さんと出会いました。
郁子さんは、貞夫さんに対して「画家の夢を諦めないで」と強く励まし続けました。結果的に、彼の画家人生を支え、芸術の道を歩む大きな力となったのです。
母・和子もまた表現者だった
鈴木砂羽さんの母・和子さんもまた画家でした。しかし、彼女の家系はもともと医師の家系であり、代々医療に携わる家柄でした。
・和子さんの父・東條三郎さんは、秋田県東成瀬村で医師として地域医療に尽力
・さらに6代前の先祖・曽根元みんさんは、世界初の全身麻酔手術を成功させた華岡青洲に師事
このように、和子さんは医学と深い関わりを持つ家庭に生まれましたが、幼い頃から絵を描くことが大好きで、内気な性格ながらも絵を描くことで自分を表現していたといいます。
そんな和子さんが画家としての道を歩み始めたのは、夫・俊さんと出会ったことがきっかけでした。彼女にとって俊さんは、内に秘めた才能を開花させる存在だったのでしょう。
8ミリフィルムに刻まれた家族の時間
番組では、父・俊さんが撮影した8ミリフィルムの映像も紹介されました。そこには、家族の幸せな時間が映されていました。しかし、家族の形は次第に変わっていきます。
・両親の関係が次第にすれ違うようになる
・鈴木砂羽さんが13歳のときに両親が離婚
・母と娘、二人三脚の生活が始まる
母と過ごす時間が増える一方で、砂羽さんは息苦しさを感じることもあったようです。そんな彼女を支え続けたのが、祖母・郁子さんでした。そして、この時期に夢中になったのがモダンバレエでした。
・踊ることで感情を表現できる楽しさを知る
・高校卒業後、俳優を志して上京
・劇団「文学座」の門を叩き、演技の道へ
こうして、砂羽さんは表現者としての新たな道を歩み始めました。
“表現一家”のDNAを持つ女優
鈴木砂羽さんは、映画やドラマ、舞台で多くの作品に出演し、その存在感ある演技で人々を魅了してきました。
・映画「愛の新世界」では、大胆な演技で注目を集める
・ドラマ「相棒」シリーズでは、強い個性を持つ役柄を好演
・NHK連続テレビ小説「あぐり」にも出演
その活躍を、誰よりも楽しみにしていたのが祖母・郁子さんでした。幼い頃から表現することを大切にしてきた鈴木砂羽さん。その才能の背景には、祖父や両親、祖母の支えがあったことが、この番組を通じて明らかになりました。これからも彼女の演技には、家族の歴史と受け継がれた表現者の魂が刻まれ続けていくでしょう。
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