はじめに
2025年1月12日(日)19:30からNHK総合で放送される「ダーウィンが来た!」では、日本有数の名峰・槍ヶ岳の山頂を目指して2か月以上も登山を続けるニホンザル集団の謎に迫ります。長野県の上高地で暮らすサルたちが、標高差1500mを超える過酷な山岳地帯へ向かう理由とは一体何なのでしょうか?番組の密着取材を通して、サルたちの驚くべき行動の秘密が明かされます。今回は放送内容の詳細や槍ヶ岳の特徴、サルの生態などを徹底解説します。
登山難易度は? 「信州 山のグレーディング」では、上高地経由の槍ヶ岳のルートは体力レベルが8(2〜3泊以上が適当)、技術レベルがCとされています。 切れたった稜線や足元の悪いガレ場などがありますが、クサリ場やハシゴなども整備されており、登山中級者以上であれば登頂も可能です。
番組概要
「ダーウィンが来た!」は、NHKが放送する自然ドキュメンタリー番組で、動物や自然界の神秘に迫る人気番組です。今回は、標高3180mの槍ヶ岳を目指して2か月以上も登り続ける謎のニホンザル集団に密着。彼らはなぜ危険を冒してまで山頂を目指すのか、その理由が徹底的に解明されます。
第1章 森から消えたサル
長野県の上高地は標高1500m、冬はマイナス20℃にも達する厳しい環境です。この地に生息するニホンザルは、知恵を駆使しながら厳しい自然に適応して生きています。冬を越えた春、5月になるとサルたちは芽吹いたばかりの若葉を主食とし、春の恵みを満喫します。この時期は森の食料が豊富で、サルたちにとって最も穏やかな季節です。また、春は出産シーズンでもあり、群れに新たな命が生まれる重要な時期でもあります。
しかし夏が近づくと状況は一変します。春には柔らかく食べやすかった若葉は、成長するにつれて硬くなり、食べにくくなります。同時に、木の実はまだ熟しておらず、麓の森では十分な食料を確保できなくなります。その結果、サルたちは食料を求めて新たな行動に出るのです。
夏が始まる頃、群れの一つがいつもの場所から突然姿を消しました。その行動は取材班の目に留まりました。登山客への取材から、サルたちは槍ヶ岳の方向へ向かっていることがわかりました。この行動はサルたちが「芽吹き前線」を追いかけていることを意味しています。標高が高い場所ほど春の訪れが遅れるため、高山帯ではまだ若葉が食料として適しているのです。
8月、取材班は標高2500mの槍ヶ岳中腹でサルたちを発見しました。彼らは厳しい環境を乗り越えながら食料を求め、山を登っていたのです。この行動はただの移動ではなく、サルたちが自然環境に適応するための戦略であると考えられます。
一方、こうした高山地帯での行動は、他の生物にも見られます。
キリマンジャロの標高4500m付近では、牛の仲間であるエランドがエサを求めて登山を行います。乾季でも雨が多い山頂付近は植物が豊富で、サバンナダイカーやアフリカゾウも同様に登山を行います。
また、御在所岳の山頂では、多くのアキアカネ(トンボ)が生息しています。暑さに弱いアキアカネは、夏を涼しい山頂で過ごすことで暑さを回避しています。さらに、宝満山では、麓の池に生息するニホンヒキガエルの子どもたちが2か月以上かけて山頂まで登り、新しい水辺を探すための「登山」を行います。
これらの行動は、生物が過酷な環境に適応し、生存を確保するための本能的な選択です。ニホンザルを含め、多くの動物がそれぞれの理由で山を登る姿には、自然界の力強さと神秘が詰まっています。
第2章 どこまで登る!?サルを大追跡
高山帯にやってきたニホンザルたちは、標高2500m地点に到達しました。ここから先は植物がほとんど生えず、厳しい環境が続くエリアです。にもかかわらず、サルたちはさらに山頂を目指し、登るスピードを一気に上げました。
驚くべきことに、サルたちは整備された登山道を離れ、岩肌が露出する危険な崖を登り始めました。この急斜面では、取材スタッフも追跡を断念せざるを得ないほどの難所です。そんな過酷なルートにもかかわらず、サルたちは器用に岩場を登っていきました。
この不可解な行動の理由を探るため、スタッフは槍ヶ岳山頂直下の山小屋を訪れました。そこで山小屋の男性は「見ない年はない。毎年夏の終わり頃にはサルが山頂付近に集まり、まるで“サル山”のようになっている」と証言しました。標高3180mの山頂付近には森もなく、食料となる若葉が少ないにもかかわらず、なぜサルたちは山頂を目指すのでしょうか?
その謎を解く手がかりとなったのは、8月中旬の山頂で目撃されたサルたちの行動です。槍ヶ岳山頂でサルたちは「ハイマツの実」を食べていました。ハイマツは標高の高い場所に生育する針葉樹で、その実が熟すのは8月中旬頃。高山帯では限られた食料のひとつです。
さらに、ハイマツの実以外にもコケモモ、クロマメノキ、ベニバナイチゴなどの高山植物がこの時期に実をつけることがわかりました。これらの実は山頂付近でしか得られないため、サルたちはあえて厳しい山頂を目指していたのです。
山頂にたどり着いたサルたちは、これらの木の実を食べながら約2週間山頂付近で過ごしました。厳しい環境の中でも、サルたちは食料を見つけ、群れの生存を確保していたのです。
やがて山頂の木の実を食べ尽くすと、サルたちは山を下り始めました。山を降りる頃には麓の森も秋を迎え、果実が実る時期となっています。こうしてサルたちは再び豊富な食料を求めて元の森へと戻っていきました。
この一連の行動は、サルたちが厳しい自然環境の中で生存戦略として食料を求めて山を移動する「高度な適応行動」であることを示しています。高山帯で食料を確保し、秋の実りが始まるタイミングに合わせて下山する姿からは、サルたちの知恵と自然界の厳しさを感じさせます。
まとめ
2025年1月12日放送の「ダーウィンが来た!」は、槍ヶ岳の厳しい自然環境に立ち向かうニホンザルたちの驚くべき行動を徹底解説しています。なぜサルたちは過酷な山頂を目指すのか、その理由や生態の秘密をぜひご覧ください。
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