卒業の日に届けたいありがとう|千葉・いすみ鉄道と高校生たちの思い出バスツアー|2025年4月3日放送回まとめ
2025年4月3日放送のNHK総合『ひむバス!』第19回は、千葉県のローカル鉄道「いすみ鉄道」をテーマにした感動の回でした。通学に利用していた列車が事故で運休し、最後の半年間は列車に乗れなかった高校生たち。そんな彼らの「思い出を残したい」という願いを叶えるため、番組が用意したのは卒業記念の特別なバスツアーです。番組ではバナナマン日村勇紀さんが運転手となり、生徒たちを乗せていすみ鉄道沿線を巡りながら、笑顔と涙の時間が描かれました。
通学の足だった「いすみ鉄道」への想い
千葉県いすみ市と大多喜町を結ぶ「いすみ鉄道」は、全長約26.8キロの地域密着型のローカル線です。特に春になると沿線に菜の花が咲き誇り、「菜の花列車」の愛称で親しまれてきました。列車の黄色い車体と菜の花の風景が重なり、SNSでも人気の風景スポットとして知られています。
この路線は、地域の高校である千葉県立大多喜高校の通学手段としても長年使われてきました。実際、いすみ鉄道の乗客の7割を大多喜高校の生徒が占めるともいわれています。しかし2024年10月、脱線事故が発生し、それ以降は運休が続いています。生徒たちはバス通学に切り替えざるを得なくなり、列車に乗れないまま卒業を迎えることになりました。
そんななか、日村さんのバスに乗り込んできたのは、高校を卒業したばかりの男女2人。彼らは「もう一度、いすみ鉄道に触れたい」という気持ちを持っていました。この出会いが、感動のバスツアーのきっかけになったのです。
大多喜高校生たちの「やり残したこと」
日村さんは、まず大多喜高校を訪問。そこで生徒たちが集まり、いすみ鉄道でやりたかったことを話し合っている様子が紹介されました。思い出の駅での記念撮影、いつも通っていた焼き鳥屋さんへの再訪、列車と一緒に写真を撮ることなど、一人ひとりの思いが詰まった「やり残しリスト」が自然と集まっていきました。
番組ではその声をもとに、思い出巡りのルートを作成。いすみ鉄道の主要駅を中心に、バスで巡ることになりました。
思い出バスツアーが出発!感謝と懐かしさが広がる一日
バスツアー当日、卒業生たちは大原駅に集合。ここから、懐かしの風景をたどる旅が始まりました。
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大原駅:通学の始点だったこの駅で制服姿の記念撮影を実施。列車は止まっていても、雰囲気は当時のまま。ホームに立つだけで、毎日の通学を思い出せる場所です
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上総東駅:静かな住宅地にある駅で、菜の花に囲まれたのどかな風景が特徴です。ここではじっくりと駅舎を見て歩き、生徒たちは写真や動画に風景を収めていました
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国吉駅:途中で友人たちと合流。ここでは笑顔と再会のシーンが映し出され、青春の時間がいきいきと感じられました
その後、一行が向かったのは、いすみ鉄道沿線にある地元の焼き鳥屋さん。実はここ、お笑い芸人・渡辺正行さんの実家として知られるお店です。生徒たちはここで思い出の味「ぼんじり」の串焼きを食べながら、懐かしい日々を思い返していました。味覚が記憶を引き出してくれる時間は、どんな言葉よりも心に響くものでした。
さらにバスは、大多喜駅へ。ここでは卒業生たちが駅舎の清掃活動を行いました。休止中の駅舎に感謝の気持ちを込めて、ほうきや雑巾を使って隅々まで掃除。さらに驚きの展開もありました。いすみ鉄道の協力により、車両が特別に開放されたのです。
普段は入ることのできない車両の中に入り、生徒たちは手作りのフォトパネルとともに記念撮影を行いました。停まったままの列車と一緒に撮ったその写真には、「ありがとう、いすみ鉄道」の思いが込められていました。
心に刻まれる、列車のない卒業式
今回のバスツアーは、列車には乗れなかったけれど、心ではしっかりとつながっていたことを感じさせる一日でした。日村さんが静かにバスを運転しながら、高校生たちの思いに寄り添っていく姿勢も印象的でした。
ナレーションを担当したのは山下美月さん(元乃木坂46)。優しく包み込むような声で、シーンの一つひとつに温かみを与えていました。日村さんと森田茉里恵アナウンサーが見守るなか、地域と高校生、そして鉄道のつながりが丁寧に描かれた放送回となりました。
いすみ鉄道は現在も運休が続いていますが、卒業生たちのこの一日が、再び列車が走る日への希望となることでしょう。
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