宮崎の南国リゾートを俳句とともに巡る旅
NHK教育テレビで放送される「夏井いつきのよみ旅!」。俳句の先生としておなじみの夏井いつきさんと、実業家でタレントのROLANDさんが全国を旅し、地域の俳句を通じて人々の人生や思いを読み解いていく番組です。今回の舞台は、青い海と緑の自然に囲まれた宮崎県です。2025年7月4日放送の前編では、南国ならではのリゾートの雰囲気とともに、宮崎の人々の温かい人生エピソードや、そこに込められた俳句の世界を紹介します。
旅を通して、観光スポットやグルメ、地域の歴史、そして人々の暮らしが見えてきます。俳句という短い言葉の中に、その人の思いや人生の背景が詰まっているのがこの番組の魅力です。
新婚旅行の聖地・青島神社の秘話
宮崎県の人気観光地である青島神社は、昭和30年代後半から50年代にかけて全国の新婚カップルが憧れる場所として知られていました。なかでも、昭和天皇の第5皇女である貴子妃殿下と、島津家出身の島津久永さんが新婚旅行で訪れたことがきっかけとなり、一気にその人気が広がりました。
当時は、日本全国から多くの新婚夫婦が宮崎に訪れ、青島神社もその中心的な存在となりました。ピーク時には年間37万組もの新婚カップルがこの地に足を運んだといわれています。新婚旅行の行き先といえば「宮崎」と言われるほど、特別な場所として注目を集めていたのです。
青島神社が建つ青島は、周囲約1.5kmの小さな島で、島全体が亜熱帯植物に包まれています。島へは、白い欄干が美しい弥生橋を歩いて渡ります。この橋を渡る間も、南国ならではのヤシの木や青い海の景色が続き、まるで海外のリゾート地を訪れたかのような気分になります。
島の中心に位置する青島神社は、縁結びや夫婦円満のご利益で有名です。境内には、象徴的な存在である「夫婦蒲葵(びろう)」と呼ばれるヤシの木があり、これも観光客や参拝者にとって大切な見どころのひとつです。
・夫婦蒲葵は樹齢約350年
・ヤシの木の周りは緑が広がり、南国の自然を感じられる
・昔は幹にお賽銭を埋める風習があったが、現在は禁止
以前は、参拝者がこのヤシの木の幹にお賽銭を埋め込み、「二人の愛が実りますように」と願いを込める姿が多く見られました。しかし、木の寿命や自然保護の観点から、現在はその行為は禁止されています。それでも多くの人がこの場所を訪れ、手を合わせる光景は今も変わりません。
島内には他にも珍しい植物が多く、ビロウ樹林を中心とした独特の風景が広がっています。青い海と白い砂浜、亜熱帯の木々に囲まれた島は、写真映えするスポットとしても人気があります。
番組では、そんな青島神社の秘話や、かつて新婚旅行のブームで賑わった時代の思い出を、地元の方々から聞きながら、俳句を通してその歴史やロマンが丁寧に紹介されます。南国宮崎の風とともに、昔も今も変わらぬ青島神社の魅力を感じることができる内容になっています。
宮崎の夏の季語・ライチと生産者の思い
宮崎の夏を語るうえで欠かせない果物のひとつがライチです。南国ならではの温暖な気候と豊かな自然を生かし、宮崎県新富町ではライチの栽培が盛んに行われています。特にこの地域で栽培されるライチは、糖度が15%以上、果実の重さが50g以上という厳しい基準をクリアしたものだけが「新富ライチ」として出荷されています。これほどの基準を満たすライチは非常に希少で、国内流通量はわずか1%未満とも言われています。
新富町のライチ栽培は、約10年前から本格的にスタートしました。当初はノウハウも少なく、試行錯誤を繰り返す日々が続きました。しかし、地元の生産者たちは諦めず、日々の努力と工夫を重ねながら、ようやく高品質な国産ライチの栽培に成功しました。
・糖度15%以上で濃厚な甘み
・果実50g以上の大玉が特徴
・国産ライチはほとんどが新富町産
番組では、このライチ栽培に情熱を注ぐ生産者が登場します。ライチ作りには想像以上の手間と時間がかかり、収穫までに4年以上かかる場合もあります。その間、温度管理や水やり、病害虫の対策など細かな管理が求められますが、生産者は「おいしいライチを届けたい」という一心で、手間を惜しまずに育て続けています。
この新富ライチを全国に広めるために、地域商社であるこゆ財団が中心となってブランド化を推進しました。現在では、宮崎空港や都内の有名店、高級果物店などでも販売されるようになり、ふるさと納税の返礼品としても非常に人気があります。
ライチは宮崎の夏を象徴する果物であり、その背景には生産者たちの挑戦や努力が詰まっています。番組では、そんな生産者が詠んだ俳句を通じて、ライチへの思いや人生の歩みが紹介され、果物だけではない、地域の誇りや絆が感じられる内容になっています。俳句という短い言葉に、生産者の熱意や宮崎の自然の豊かさが、やさしく、そして力強く表現されます。
愛されキャラ「海ゴリラ」と渚の交番
宮崎の青い海が広がる青島海岸には、地域の安全と観光客の安心を守る拠点として知られる「渚の交番」があります。この施設は、単なる監視や取り締まりの場ではなく、地域住民や観光客が安心して海を楽しむための情報発信やサポートの場として、多くの人に親しまれています。
この渚の交番で交番長を務めるのが、地元で「海ゴリラ」の愛称で知られる小玉順規さんです。海ゴリラというユニークな呼び名は、そのがっしりとした体格と頼もしさ、そして人懐っこい性格から自然と定着しました。
小玉さんは、サーフィンやマリンスポーツを楽しむ人たち、観光で訪れる家族連れや若者たちに、親しみやすく声をかけ、必要なときには的確な指導やサポートを行っています。その活動は、ただの安全確保にとどまらず、地元と観光客の架け橋のような存在として、地域の雰囲気づくりにも一役買っています。
・海水浴シーズンの見守りや注意喚起
・初心者へのマリンスポーツ指導
・地域の子どもたちへの海の安全教室
・観光客への案内やトラブル対応
これらの活動を通じて、海ゴリラさんは「頼れる存在」「話しかけやすい海の守り人」として、地元でも観光客からも愛されています。
番組では、海ゴリラさんの日々の活動や、海への思い、地域の人たちとの交流を、俳句を通じて紹介します。俳句の短い言葉の中には、海の自然、そこに暮らす人々、訪れる人たちの思いが込められ、海と人とのつながりの大切さが伝えられます。
宮崎の美しい海辺の景色だけでなく、そこを守る人々の温かさや誇りが感じられる、心に残るエピソードが展開されます。海を愛する人と地域が一緒に作る、安心で楽しい宮崎の海辺の魅力を、番組を通じて知ることができます。
かから団子に込められた母との思い出
宮崎や鹿児島の家庭で昔から親しまれている素朴な郷土菓子「かから団子(かからん団子)」。これは、サルトリイバラの葉で包んだもちもちとした団子で、見た目もどこか懐かしさを感じさせるおやつです。
この団子の名前には、二つの意味が込められています。一つは、サルトリイバラの葉の特性から来た「触るな」という意味。そしてもう一つは、「病気にかからんように」という願いです。地域の人々はこのお菓子に、家族の健康と無事を祈ってきたのです。
かから団子は、節句やお祝いのときに家族で作られる伝統の味。とくに、母と子が一緒に葉を摘みに行く時間や、台所で並んで団子を包む様子は、多くの人にとって大切な思い出になっています。
・サルトリイバラの葉は防腐効果があり、昔から保存食として重宝
・葉の香りがほんのり団子に移り、素朴な甘さと香ばしさが特徴
・中に餡(あん)を入れる家庭も多く、地域ごとに味や形もさまざま
番組では、そんなかから団子にまつわる家族の物語が紹介されます。母が子どもに教えながら作る工程、できた団子を一緒に食べた楽しい時間、季節の行事とともに思い出される団子の味。それらすべてが俳句の中に込められ、一句一句が家族のつながりや地域の温かさを伝えています。
素朴だけれど、どこか心に残るかから団子。その裏には、母の愛情や地域の知恵、家族の絆がしっかりと息づいています。番組を通して、そんな日常の中の大切な記憶や思いが、俳句とともに優しく描かれる内容になっています。
60歳を過ぎて妻のために始めたマンゴー栽培
人生の後半、新しい挑戦を決意した男性の物語が宮崎から届きます。宮崎県でマンゴー栽培に取り組む緒方廣秋さんは、60歳を過ぎてからまったく新しい世界に飛び込みました。そのきっかけは、亡き妻が生前に残した「やってみて」という一言でした。
元々は建設業に長年携わってきた緒方さん。しかし、妻の願いと、自分自身の新しい人生を切り拓くため、宮崎の特産品であるマンゴー栽培に挑戦することを決めたのです。宮崎は温暖な気候と日照時間の長さを生かして、全国有数のマンゴーの産地として知られていますが、栽培には高い技術と手間が求められます。
緒方さんが育てるのは、特に高品質なレッドキーツマンゴー。この品種は繊維質が少なく、まるでプリンのようなとろける食感と、濃厚な甘さが特徴です。美しい赤い果皮と、ジューシーでなめらかな果肉が魅力で、多くの人に「また食べたい」と思わせる特別な味わいです。
最初は不安が大きく、自信が持てなかった緒方さんは、地域の約60軒の家庭に無償でマンゴーを配りました。その結果、「こんなにおいしいのに、なぜ売らないの?」という声が多く寄せられ、そこから本格的に出荷を始める決意を固めたそうです。
・レッドキーツマンゴーは甘さと食感が絶品
・出荷前の品質管理や手入れも細かく徹底
・「妻への思い」を込めて一つ一つ丁寧に栽培
番組では、緒方さんが詠んだ俳句とともに、この新たな挑戦の日々や、亡き妻への深い愛情が紹介されます。俳句の短い言葉の中に、夫婦の絆や人生の苦労、そして新しい喜びが詰まっており、見る人の心に優しく響きます。
宮崎の太陽の恵みを受けて育つ真っ赤なマンゴー。そのひとつひとつに込められた人生の物語と、緒方さんの歩みを、俳句を通じて感じられる心温まる内容となっています。
まとめ
宮崎の豊かな自然や人々の温かさ、地域に息づく歴史や文化を、俳句という言葉で描き出す「夏井いつきのよみ旅!」。青島神社、ライチ、渚の交番、かから団子、マンゴー栽培と、宮崎ならではの魅力が詰まった前編の放送をぜひお楽しみください。
【ソース】
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1137224
https://www.miyazaki-city.tourism.or.jp/feature/hajimete
https://koyu.miyazaki.jp/4046/
https://waccel.com/column/waccelwriter_20230904/
https://www.city.miyakonojo.miyazaki.jp/site/kanko/30871.html
https://ajitabi.jp/professional/35668.html
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