“人生の最後 だれと一緒に?”熟年世代のパートナー探しに密着
2025年6月10日放送のNHK『クローズアップ現代』では、「人生の最後 だれと一緒に?」というテーマで、熟年世代が新たなパートナーを探す姿に密着しました。40代以上を対象にした婚活バスツアーやマッチングアプリの活用、結婚相談所の利用など、多様な出会いの場が広がるなか、出演者たちはシニア世代の恋愛や結婚のリアルについて語りました。また、ロマンス詐欺や再婚後の家庭内トラブルなどの課題も取り上げられ、人生100年時代における新たなパートナーシップの形を深く掘り下げた内容でした。
【あさイチ】熟年婚活&恋愛のリアル!バスツアー・マッチングアプリ・変化する価値観とは|2025年4月16日放送
熟年婚活バスツアーでの出会い
番組では、40代以上限定の婚活バスツアーに参加したみさきさん(仮名・45歳)の様子が紹介されました。彼女は20代で離婚し、1人で娘を育ててきましたが、娘が独立したことで「これからは自分の人生を大切にしたい」と考えるようになり、初めて婚活イベントに参加しました。
バスツアーでは、参加者同士が10分ごとに席を替えて1対1で会話する形式が取られ、みさきさんは50代の男性と趣味の話で盛り上がりました。結果的にカップルが成立し、人生の新たなステージに向けた一歩を踏み出すことになりました。
このようなバスツアーは申し込みが殺到し、キャンセル待ちが出るほどの人気となっており、熟年世代にとっての出会いの場として注目されています。
一人暮らしに限界を感じた61歳男性の挑戦
続いて紹介されたのは、去年から婚活を始めた加藤一郎さん(仮名・61歳)。長年、一軒家で1人暮らしをしてきましたが、「老後に1人でいることへの不安」が強くなり、結婚相談所に登録しました。加藤さんはプロフィールに自身の資産額も記載し、経済的な安心感を伝えようとしましたが、なかなか結果には結びつきません。
3回目の婚活パーティーでは、54歳から62歳の男女18人が参加。加藤さんは結婚願望を素直に伝えましたが、女性たちからは曖昧な反応が多く、うまくいかない様子も見られました。それでも最後には、50代の女性と連絡先を交換することができ、少しずつ前進する姿が描かれました。
シニア向けマッチングアプリの進化
シニア層の出会いを支える新たなツールとして、40代以上を対象としたマッチングアプリも登場しています。これらのアプリは、文字サイズが大きく、操作が簡単なデザインになっており、スマートフォン操作に慣れていない人でも利用しやすいように作られています。
また、自撮り写真が苦手な人のためにAIがサポートしてくれる機能もあり、写真登録のハードルを下げています。番組では具体的なアプリ名は明かされませんでしたが、熟年層を意識した設計が今後さらに広がっていくことが示唆されました。
芸能人と専門家が語るパートナーシップ
ゲストとして出演した女優の夏木マリさんは、自身が59歳で結婚した体験を振り返り、「人生の後半に豊かな時間を求めることはすばらしいこと」と語りました。
社会学者の山田昌弘さんは、「人生100年時代」と言われる現代において、熟年世代がパートナーを探すことは自然な流れだと解説しました。現在の60代は、バブル期に青春を過ごし恋愛が盛んだった世代であることから、「もう一度恋をしたい」と考える人が多いことにも触れられました。
再婚後に起きた家庭内トラブル
59歳の水原さん(仮名)は2年前に結婚相談所で知り合った女性と再婚し、前妻との子どもと3人での同居を始めました。しかし、子どもが再婚相手の作った食事に手を付けないという問題が発生しました。
原因は、水原さんが再婚について子どもに事前に相談していなかったことにありました。番組では、こうした家族間の気持ちのすり合わせの重要性が強調されていました。
熟年世代を狙うロマンス詐欺の脅威
番組後半では、近年急増しているロマンス詐欺についても取り上げられました。被害者の約8割が40代以上であり、被害額もここ1年で倍増しているとのことです。
50代の男性はマッチングアプリで知り合った「奈美」と名乗る人物から親しみのあるメッセージを受け取り、過去の苦労話に同情した末に、投資話を持ちかけられました。そして、指定された口座に20万円を入金した後に連絡が途絶えたという被害が紹介されました。
アプリ運営会社ではプロフィール確認や不審なやり取りの監視を強化しているものの、直接会っていない段階で金銭の話が出たら要注意という呼びかけがありました。少しでも不安を感じたら、必ず周囲に相談することが大切です。
60代カップルが選んだ“別居婚”という選択
番組の締めくくりでは、去年結婚した60代カップル、恵一さん(仮名・69歳)と里美さん(仮名・67歳)が紹介されました。お互いに子どもはいないものの、それぞれが奈良と神戸で生活しており、どこに住むかが大きな課題でした。
話し合いの結果、別々に暮らしながら関係を築く「別居婚」というスタイルを選択。さらに、健康問題にも向き合い、里美さんが発見した恵一さんの背中の腫瘍も病院で診てもらい、今後は年に一度の健康診断を約束しました。
また、再婚に際して最も心配だったのが子どもたちの反応でしたが、早い段階で相談を行ったことで大きなトラブルはなく、結婚から1年後の「母の日」には里美さんが3人の子どもたちからバラの花を贈られるという温かいエピソードが紹介されました。
人生100年時代、どう生き、誰と生きるか
今回の放送では、シニア世代が直面する現実と、その中で見つける新しいパートナーシップの形が丁寧に描かれました。バスツアーやマッチングアプリ、別居婚といった選択肢が広がる一方で、家族や健康、詐欺といった課題も避けて通れません。
番組に登場したカップルたちは、それぞれの課題を乗り越えるために「話し合い」「思いやり」「共有」を大切にしていました。これからの時代、「結婚」や「家族」の形はもっと自由になっていくのかもしれません。人生の後半をどう生き、誰とともに歩むか。その問いは、すべての人にとって等しく大切なテーマです。
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