卵がぎっしり!旬のイイダコ〜香川・備讃瀬戸〜|2025年2月23日放送
イイダコは1月から3月にかけて旬を迎える小さなタコで、特にメスはごはん粒のような卵をたくさん持っています。この特徴から「飯蛸(イイダコ)」と呼ばれ、古くから親しまれています。香川県と岡山県の間に広がる瀬戸内海の備讃瀬戸では、新鮮なイイダコを獲るために、漁師たちが特別な網や漁のタイミングなどを熟練の技で工夫しています。さらに、近年は世界で初めてイイダコの完全養殖にも成功し、資源の持続的な確保に向けた取り組みも進められています。この番組では、イイダコの魅力を余すことなく伝える内容となっています。
イイダコの特徴と生態
- 体長:最大で30cmほどの小型のタコ
- 生息地:北海道南部以南の日本沿岸や朝鮮半島南部、中国沿岸の浅い海
- 生息環境:波の穏やかな内湾の砂泥底や岩礁域に生息し、昼間は石の隙間やアマモ場、貝殻や空き瓶などを隠れ家にする
- 食性:夜行性で、甲殻類や貝類、多毛類を捕食
このようにイイダコは、比較的浅い海に生息し、環境の変化に敏感な生き物です。そのため、生息環境の変化が漁獲量に大きく影響を与えることがわかっています。
備讃瀬戸のイイダコ漁
香川県と岡山県の間に広がる備讃瀬戸は、瀬戸内海でも特に漁業が盛んな地域で、イイダコ漁が冬の風物詩となっています。漁師たちは、長年の経験と独自の漁法を駆使して新鮮なイイダコを獲っています。
- イイダコ壺漁:イイダコが狭い場所を好む習性を利用し、海底に小さな壺や筒状の容器を設置し、そこに入ったイイダコを捕獲する方法
- 漁のタイミング:イイダコは夜行性であるため、漁師たちは夜明け前や夕方以降に漁を行い、潮の流れや月の明るさを考慮して最適な時間を見極める
- 環境への配慮:壺漁は海底を傷つけず、他の生物への影響も少ない持続可能な漁法とされ、漁獲量の制限や禁漁期間を設けるなど資源保護にも取り組んでいる
このように、イイダコ漁は伝統的な技術と環境への配慮が融合した方法で行われています。
イイダコの完全養殖への取り組み
近年、イイダコの漁獲量は減少しています。香川県のデータによると、2002年には約210トンだった漁獲量が、2023年には約1.7トンと120分の1にまで激減しています。この背景には、海洋環境の変化やイイダコの餌となる二枚貝の減少、さらにはマダイやハモといった捕食者の増加などが関係しています。また、底引き網漁やレジャー釣りによる過剰な捕獲も影響を与えていると考えられています。
このような状況を受け、香川県水産試験場では、イイダコの資源を回復させるために研究を進めています。特に注目されるのが、世界で初めて成功したイイダコの完全養殖です。
- 完全養殖とは?:人工的に孵化させたイイダコを親まで育て、その親が産んだ卵から再び孵化させることを指す
- 成功の背景:2024年7月、香川県水産試験場と中讃地区底曳網協議会が協力し、完全養殖で育てた約200匹の稚ダコと、天然の親から生まれた約1,500匹の稚ダコを宇多津町沖に放流
この取り組みにより、天然のイイダコに依存しない持続可能な生産が期待されています。しかし、完全養殖にはまだ多くの課題が残っています。
- 稚ダコが餌を食べない問題:孵化した稚ダコが餌を摂取せずに死亡するケースが多発
- 適切な餌の開発が必要:稚ダコが成長できる餌の種類や与え方の改良が求められる
- 資源管理との両立:漁業者や釣り愛好家との協力が不可欠で、漁獲制限や釣り期間の設定など地域全体での取り組みが必要
このように、完全養殖技術の発展はイイダコ資源の持続的な利用に向けた大きな一歩ですが、さらなる研究と協力が必要となっています。
イイダコを使った絶品アレンジ料理
イイダコは、昔から煮物や天ぷら、おでんの具材として親しまれていますが、それ以外にもさまざまな料理に活用できます。
- チュクミ(韓国風イイダコ炒め):イイダコを野菜と一緒に甘辛いたれで炒めた料理。ピリ辛の味付けが食欲をそそり、ごはんが進む一品
- イイダコの柔らか煮:砂糖、酒、しょうゆのシンプルな味付けでじっくり煮込み、タコの旨味を引き出す
- イイダコのガーリックバター炒め:バターとにんにくで風味豊かに炒め、ワインのお供にもぴったり
- イイダコのアヒージョ:オリーブオイルとにんにくで煮込み、パンに浸して食べると絶品
このように、イイダコはシンプルな調理法からアレンジ料理まで幅広く活用できる食材です。特に旬の時期に食べるイイダコは、卵がぎっしり詰まっていて、格別の美味しさがあります。
まとめ
イイダコは、瀬戸内海の豊かな海の恵みを象徴する存在です。その持続的な利用と資源の回復のためには、研究者、漁業者、そして地域の人々が一体となって取り組むことが重要です。今後も、イイダコの完全養殖技術の向上や資源管理の強化が進められ、再び豊富なイイダコが食卓に並ぶ日が来ることを期待しています。
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