使命は子供の命を守ること!国内シェア60%を誇る東大阪の自転車用チャイルドシート工場に潜入|2025年4月4日放送
2025年4月4日放送のNHK「探検ファクトリー」では、大阪・東大阪市の水走地区にある国内シェア60%を誇る自転車用チャイルドシート工場が特集されました。番組では、長年自転車用パーツを手がけてきたオージーケー技研株式会社の製造現場に密着し、「子供の命を守る」という大きな使命を胸に製品づくりに取り組む職人たちの姿が紹介されました。後部用・前部用はもちろん、双子用、牽引式まで、あらゆるニーズに応える多彩なラインナップと、命を預かるものだからこそのこだわりが、番組を通じて丁寧に描かれていました。
ものづくりのまち東大阪にあるトップシェア工場
今回取材されたオージーケー技研は、大阪府東大阪市の水走(みずはい)地区にある老舗メーカーです。もともとは1948年に創業し、自転車用グリップやヘルメットの製造を手がけてきましたが、2000年代初頭から本格的にチャイルドシートの製造へ参入しました。バブル崩壊後、日本国内の自転車メーカーの発注が中国など海外に流れていくなか、同社は生き残りをかけて自社製品を立ち上げ、技術力と品質を武器にチャイルドシート市場で地位を築きました。今では国内シェア60%を占める業界トップ企業として知られています。
工場は本社と水走工場に分かれており、本社工場ではグリップやパーツの成形と検査、水走工場ではチャイルドシートの生産や組み立てが行われています。1日で最大約1500台が生産される高い生産力を持ち、全国の子育て家庭に安全で使いやすい製品を届けています。
製品開発に込められた工夫と挑戦
工場では、保護者の声をもとにした製品開発が活発に行われています。たとえば、シートベルトを嫌がる子供のために、安全バーで体を支えるジェットコースター式のチャイルドシートが開発されました。また、前後乗せだけでなく、双子対応型や牽引式タイプなど、多様な家族構成に対応した設計も進められています。
特に番組で注目されたのが、安全性を高めるヘッドレストの導入です。頭部を守るクッションを標準装備したことが大きな話題となり、年間売上が5倍にまで跳ね上がったという実績も紹介されました。このように、常に利用者目線で進化を続ける製品群は、時代やニーズに柔軟に対応しています。
チャイルドシート製造の工程を一から紹介
チャイルドシートの製造は、素材の選定から始まり、成形、組み立て、検査といった多段階の工程を経て完成します。素材にはPP(ポリプロピレン)、ABS、ポリカーボネートなどの高機能樹脂が用いられており、部品ごとに適した材料が使い分けられています。
● 主な工程の流れ
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樹脂原料の仕分けと投入(6つのタンクで管理)
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金型に注入し冷却・成形
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成形後のバリ取りや検品作業
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衝撃吸収クッションの製造と貼り合わせ(EVA素材や発泡スチロール)
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150種類以上のモデルに対応した手作業の組み立て
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重さによる部品漏れチェック
番組では、クイズ形式で「部品忘れを防ぐために何をチェックしているか?」という場面があり、正解は「完成品の重さ」でした。設定された重さに誤差があると、赤いランプが点灯し組立不備を即時に確認できる仕組みが採用されています。
機械化ではなく、人の手で守られる品質
特に印象的だったのが、組み立て工程のすべてが職人による手作業であるという点です。150種類以上の異なるモデルに対応するため、機械での自動化は難しく、職人の経験と勘が頼りとなります。組み立て担当者たちは、完成品のイメージを共有しながら、パーツを一つひとつ丁寧に組み上げていく様子が描かれました。
ネジの数を減らして扱いやすさを向上させる工夫など、使う人のことを第一に考えた細かな改善も日々進められています。
安全性を確保するための試験体制
完成したチャイルドシートは、社内の品質検査室で厳しい試験が行われます。試験内容は次の通りです。
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振動試験:20kgの重りを乗せ、20万回揺らして耐久性を検査
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転倒試験:コンクリートに倒して破損の有無をチェック
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耐候性試験:紫外線・湿気・雨風などによる劣化の確認
これらの試験は、SGマーク(製品安全協会認定)取得に必要な基準を大きく上回る厳しさで行われています。実際、転倒試験でもチャイルドシートにはほとんど傷がつかず、非常に高い安全性を持っていることが証明されました。
社員のアイデアが商品になる文化
オージーケー技研では、社員のアイデアが製品になる機会も多くあります。番組では、過去に「ベビーカー兼チャイルドシート」というユニークな製品を開発し、100台作ったものの、1台も売れなかったというエピソードも紹介されました。こうした失敗も受け入れ、次につなげる企業風土が、常に新しい価値を生み出す原動力になっていることが伝わってきました。
命を守る製品に込められた誇りと責任
番組の最後では、「子供の安全だけでなく、未来を守る」というメッセージが伝えられました。チャイルドシートは単なる道具ではなく、家族の安心を支える命の盾とも言える存在です。その製品一つひとつが、職人の手を通じて形づくられ、数々の厳しいチェックを経て世に送り出されています。
オージーケー技研のように、使う人の声に耳を傾け、安全性と品質に一切妥協せずものづくりを続ける企業があるからこそ、私たちは安心して子供を乗せることができます。番組を通じて、見えない努力と情熱が詰まったチャイルドシートの真の価値を改めて知ることができました。
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