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NHK【ダーウィンが来た!】オランウータンの“仲間との学び”に密着!ジャングルスクール第2弾|2025年4月27日

ドキュメント

ジャングルスクールいのちの学校 仲間と学べ!オランウータン

2025年4月27日にNHK総合で放送された『ダーウィンが来た!』では、「ジャングルスクールいのちの学校 仲間と学べ!オランウータン」と題して、インドネシア・カリマンタン島にあるオランウータンのための特別な学校を特集しました。親を失った孤児たちが仲間と学びながら成長していく姿に、たくさんの感動が詰まった内容となりました。

第1弾はこちら

自ら学び!仲間からも学ぶオランウータンたち

今回の舞台は、インドネシア・カリマンタン島に広がる熱帯雨林、その中にある「ニャルメンテン オランウータン レスキュー&リハビリテーションセンター」です。ここでは、森林破壊や密猟によって親を失った約350匹の幼いオランウータンたちが保護され、未来に向かって学びを続けています。この学校の目的は、ただ保護するだけでなく、自分の力で森で生き抜けるよう育てること。そして最終的には、故郷である森に帰すことを目指しています。

前回の放送では、木登りや食べ物の探し方など、基本的な生存スキルの授業に密着しました。今回の第2弾では、さらに一歩進んで、仲間との関わり合いを通じて自ら学び取る姿が紹介されました。オランウータンたちが自分で考え、感じ取りながら生きる力を身につけていく様子が描かれました。

・木登りや食べ物探しは、オランウータンにとって命をつなぐ重要な技術です。学校では、ヘビのおもちゃを使って天敵を疑似体験させる授業も行われました。先生たちが迫真の演技で脅かすと、怯えたオランウータンたちは一斉に木の上へ逃げました。この体験から、ヘビが危険な存在であることを本能的に学びます
・授業は年齢ごとに細かく分かれています。赤ちゃんクラスでは、先生たちが抱っこしたり、手を取りながらサポートしますが、成長するにつれて少しずつ手助けを減らし、自力で考えて行動する力を伸ばしていきます。この段階的な育て方が、将来野生に戻るためには不可欠なのです。

1時間目のテーマは、「道具を使う」こと。森で生きるためには、自然にあるものを使って問題を解決する知恵が必要です。
・授業では、硬い実の中にある白い部分をどう取り出すかが課題に。木の棒を使ったり、地面に落ちている尖った枝を使ったりして、工夫しながら取り出そうとする姿が見られました
・また、授業の終わりには先生たちが大きな葉っぱを配り、あるオランウータンがその葉っぱを頭にのせました。それを見た他のオランウータンたちも次々に真似をしました。野生では葉っぱを傘に使うことがあり、自然な行動として広がっていったのです

2時間目は、「食べ物の発見」。森で自分の力で食べ物を見つけることは、野生復帰のための大きなステップです。
・あるオランウータンは、木の幹に群がる小さなシロアリを見つけ、指で器用に取り出して食べる姿を見せました。シロアリは貴重なタンパク源です。
・また、別のオランウータンは偶然蜂の巣を発見。怖がりながらも幼虫を取り出して口に運び、食べられることを学びました。自然の中で挑戦しながら学ぶ姿はとてもたくましいものでした

ただし、仲間と一緒に学ぶ環境では、トラブルもつきものです。
・ある授業中、棒を持ったオランウータンが、近くにいた小さなオランウータンを叩いてしまう場面もありました。もともと単独で行動することが多いオランウータンにとって、仲間との距離感をつかむことは大きな課題です
・こうした小さなトラブルもまた、自然界では避けて通れない大事な学びの一つとなっています。

3時間目は、「ケンカを避ける」ための学び。仲間同士の小競り合いを防ぐ方法を身につける授業です。
・遊び道具のカップを巡って小さなトラブルが発生した際、オランウータンたちは口から「チューッ」という不快のサインを出して気持ちを伝えようとします。争わずに感情を伝えるこの方法は、社会的なコミュニケーション力を育てる大事なスキルです。
・自然界では、無駄な争いを避けることが生き残るための重要な知恵。ジャングルスクールでも、こうした力を育てるための環境が整えられています。

カリマンタン島の森は、土壌が栄養に乏しく、木々も多くの実をつけることができません。そのため、オランウータンたちは群れを作らずに単独で行動するのが基本です。広い範囲を自由に移動することで、限られた食料資源を確保し、体力を温存するという生活スタイルが求められます。

しかし、数年に一度だけ訪れる「一斉結実」の年には話が変わります。
・森のさまざまな植物が一斉に実をつけるこの時期は、食べ物が豊富にあります。
・オランウータンたちもこのチャンスを生かし、自然と集団行動をとるようになります。若いメスがベテランの母親について行き、豊かな食べ物の場所を学ぶ姿も見られます。これも自然界で生き延びるための大切な知恵の継承です。

ジャングルスクールでは、こうした自然のリズムを体で覚えながら、オランウータンたちは一歩一歩、野生への道を歩んでいきます。仲間と学び合う経験は、孤独な森の暮らしにおいても心の支えとなる大切な財産になるのです。

幼なじみの固い絆と、それぞれの生き方

ジャングルスクールでは、これまでに500匹以上のオランウータンたちを森へと帰すことに成功してきました。命をつなぎ、自然に戻る支援を続けるこの学校の取り組みは、まさに希望そのものです。しかし、すべての生徒が森に帰れるわけではありません。中には、どうしても自然の中で生き抜くことが難しい事情を抱えるオランウータンたちもいます。

・シェルトン(12歳)は、両目が見えず、周囲の様子を目で確認することができません。視覚に頼れない彼は、森の中での生活が極めて危険なものになってしまいます。
・一方、コプラル(13歳)は、幼い頃に事故で両腕を失いました。木登りや食べ物探しといった基本的な生存行動が困難になり、野生復帰は現実的ではありません。

それでも、ふたりは特別な絆で結ばれています。
・シェルトンとコプラルは、赤ちゃんの頃からジャングルスクールで共に育った幼なじみ。
・コプラルは毎日のようにシェルトンのもとへ通い、体を寄せ合ったり、顔を寄せ合ったりしながら、静かに寄り添う時間を過ごしています
・言葉はなくても、心で通じ合う強い絆がそこにはあります。障害があっても、孤独ではない――そう思わせてくれる温かな光景です。

このふたりの運命の背景には、悲しい現実があります。
・カリマンタン島では、アブラヤシ農園の拡大により、大規模な森林伐採が進んでいます。
・パーム油は、私たちが日常使う食品や洗剤、化粧品など、さまざまな製品に利用されており、その需要のために、島の原生林の7割がすでに失われたとされています。
・森を失ったオランウータンたちは、食べ物を求めて人間の生活圏に現れ、そこで命を落とすケースも後を絶ちません。
・また、子どもをペット目的で密猟するために、親を殺されるという痛ましい事件も多発しています。

シェルトンやコプラルが負った傷も、こうした人間の活動によって生まれた悲劇の結果です。本来なら森で自由に暮らしていたはずの命が、人間の手によって傷つき、未来を奪われてしまったのです。

それでも、彼らは前を向いて生きています。
・たとえ森へ帰ることができなくても、ジャングルスクールでは、彼らが安心して暮らせる環境を整え、仲間と共に過ごす日々を支えています
・そしてシェルトンとコプラルの絆は、命のたくましさと、助け合う力の尊さを私たちに教えてくれます。

ジャングルスクールは、ただ生き物を保護する施設ではありません。
傷ついた命も、仲間と支え合いながら、新たな生き方を模索できる場所。そしてその存在は、人間が壊してしまった自然を、少しでも取り戻そうとする小さな光でもあるのです。

最終クラスでの大ゲンカと、成長する姿

ジャングルスクールの最終クラスでは、卒業を目指すオランウータンたちがより自然に近い環境で自立に向けた訓練を続けています。森に暮らす彼らには、人の手助けがほとんどありません。雨季の厳しい環境の中でも、自らの力で生き抜かなければならないのです。

・生徒たちは、増水した川に囲まれた森で、限られた食べ物を自分で探しながら生活しています。最低限の餌が1日1回運ばれてきますが、それだけに頼らず、果物を見つけ、枝を伝い、水場で食料を探すなど、野生に近い行動が求められます
・先生たちは、ボートで森に向かい、生徒たちの様子を遠くからそっと見守ります。卒業できるかどうかは、この森での行動にかかっているのです。

特に注目されていたのが、ケシー(13歳)の成長でした。
・ケシーは左腕の手首から先を失っており、水場や森の中での移動、食べ物探しに大きなハンディキャップを抱えていました。
・それでも、ケシーは諦めずに挑戦を続け、水の中でも器用にバランスを取りながら果実を取るなど、不自由な体で懸命に生き抜く姿を見せてくれました

しかし、自然界は甘くありません。
・ある日、年上の気性の荒いメスに襲われる事件が発生しました。驚いたケシーは必死に逃げましたが、それ以来、仲間が近くにいるだけで警戒するようになり、食べ物にもなかなか近づけなくなってしまいました
・ケシーにとって仲間との距離感を保ちながら生きることは、体のハンディに加えて大きな課題だったのです。

それでもケシーは、少しずつ少しずつ、自分のペースで乗り越えていきました。
・半年間にわたる努力の末、乾季が訪れるころには、ケシーは再びエサ場に近づくようになりました。
・エサ台に堂々と近づき、周囲に怖いメスがいても怯まずに、自分の食べ物をしっかり確保する姿が見られたのです
・あの怖かったメスも、今ではケシーを追い払うことなく、静かに見守っていました。ケシーはついに、自然界の中でうまく生き抜くための力を身につけたのです

一方、学校には新たな希望も訪れていました。
・ある日、学校に3か月の赤ちゃんオランウータンが保護されてきました。
・この子は、村人がペットとして違法に飼っていたところを保護された個体で、まだ歯も生えていないほど幼い赤ちゃんでした。
・最初の野外授業では、先生たちにそっと抱かれながら、初めて森の木に触れる体験をしました。おそるおそる葉っぱに手を伸ばす姿には、本能の芽生えを感じさせるものがありました

ケシーのように苦しみながらも成長する者、新たに学び始める赤ちゃん――
ジャングルスクールでは、さまざまな命がそれぞれのペースで未来へ歩き出しています。
そして、それぞれの物語は、人が奪った森を、人の手で取り戻していこうとする小さな奇跡でもあるのです。

いのちの学校、仲間と歩む未来へ

「人が奪った未来を、人と一緒に取り戻す」。ジャングルスクールは、ただ保護するだけの場所ではありません。仲間と学び、支え合いながら、オランウータンたち自身の力で“生きる力”を取り戻していく場所です。

過酷な経験を経て、それでも前を向いて生きようとするオランウータンたち。彼らのたくましい姿に、私たちもまた自然と命への向き合い方を改めて考えさせられる放送回となりました。

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