ぶどうに象にレコード!?世界と日本の“意外なつながり”が見える
2025年5月1日に放送された『コンテナ全部開けちゃいました!〜春の横浜港編〜』(NHK総合)は、横浜港を舞台に、世界各国から届いたコンテナの中身を実際に開けてみることで、日本と世界の“今”を発見する人気番組です。今回の放送では、食材・観賞植物・インテリア・音楽といった多様な分野にわたって、「まさかこんなモノまで!?」という驚きの積み荷が登場。案内人の下野紘さんとともに、出演の千葉雄大さんとSHELLYさんがその魅力に迫りました。27分という放送時間の中で、物流・貿易・文化の交差点としての横浜港の実力と、現代の国際社会との深いつながりを再確認できる内容でした。
春の横浜港は“生活を動かす窓口”
横浜港は、国内でも最大級の貿易港のひとつであり、年間約300万トンのコンテナ貨物を取り扱う全国2位の規模を誇っています。今回番組で紹介されたのは、そんな巨大港に届いたコンテナの中でも、特に春ならではの季節感や国際色を感じられる積み荷たちです。港の景色と共に映るコンテナは、ただの貨物箱ではなく、世界各地の産地や文化、気候、技術が詰まった“小さな地球”のような存在であることを改めて感じさせてくれました。
オーストラリアのコンテナから出てきたのは“旬のぶどう”
最初に開けたのは、オーストラリアから届いたリーファーコンテナ。このコンテナは温度を-30℃〜+30℃に保つことができる冷凍・冷蔵仕様のもので、今回は0℃に設定されていました。スタジオでは「秋の味覚?」と予想され、芋や柿などの話が挙がりましたが、実際に入っていたのは「ぶどう」でした。
このぶどうは、オーストラリアのロビンベールという地域で生産されたもので、皮が薄く、種がないものが多いため、日本でも非常に人気が高まっています。輸出が本格的に始まったのは2014年からで、それまではチチュウカイミバエという害虫のために日本への輸出が禁止されていました。しかし、低温処理によって害虫を死滅させる技術が確立され、多くの品種が輸出可能に。現在では130種類以上のぶどうが日本に届けられているそうです。
番組では特に「スイートサファイア」という細長い形をした黒ぶどうが紹介され、冷たいままでも甘く、香りも強いことが特徴とされていました。オーストラリアの生産者も登場し、コンテナの中で冷却されたまま運ばれることで、新鮮な状態のまま日本に届けられる仕組みを詳しく説明しました。
イタリアの“搾りたて”が横浜港に届いた
続いてのコンテナは、イタリアから届いたもので、扉には「左側のドアを開けないように」という注意書きが貼られていました。中に入っていたのはなんと20トンものオリーブオイル。港別の輸入量を見ても、横浜港が日本最多の35.9%を占めています。
このオリーブオイルは巨大な袋状の容器に入れられており、慎重に扱わないと中身が流れ出てしまう可能性があるため、特殊な取り扱いが必要です。また、光や空気に触れると酸化してしまうデリケートな商品でもあるため、完全遮光・温度管理下での輸送が求められます。
イタリアでの収穫は11月〜2月に行われるため、春に届くオイルはまさに搾りたての新物。この時期ならではの風味豊かなオイルが、日本のレストランや家庭の食卓へと運ばれていく様子が紹介されました。
スペインからやってきた“枯木”の正体
スペイン・アルヘシラス港から届いたコンテナの中には、温度10℃で管理された巨大なオリーブの古木が入っていました。これは観賞用に輸入されたもので、樹齢100年以上の幹の形に個性がある木が選ばれて輸送されています。
この木々は植物検疫のため、すべての葉を切り落として輸入されます。コンテナ内では休眠状態に保たれ、4月頃に農園へ植え替えられ、気候に慣れさせて1年後に新しい葉が芽吹くのだそうです。英国チェルシーフラワーショーで12回金賞受賞歴のある石原和幸さんも登場し、日本におけるオリーブ古木の需要の高まりについて説明しました。日本ではオリーブ栽培の歴史が浅く、こうした輸入木が「洋風の盆栽」としておしゃれなシンボルツリーになっているそうです。
インドから届いた“神聖な象の像”
インド・ムンドラ港から届いたコンテナの中には、高さ1.8m、重さ100kg、価格160万円の象の置物が入っていました。この置物はインテリアとして人気ですが、色鮮やかに装飾されている理由には文化的な背景がありました。
インドでは象は神聖な存在とされており、祭りの際には本物の象が頭から鼻にかけて飾りを付けて登場します。その象を象った置物は、幸運を招く存在として家に飾られる風習があるといいます。このように、単なる装飾品ではなく、伝統と信仰が込められた意味深い輸入品であることがわかります。
ドイツへと向かう“音の記憶”レコード
最後に紹介されたのは、日本からドイツ・ハンブルク港に輸出されるコンテナ。中身はアナログレコードでした。今、世界中でレコード人気が再燃しており、アメリカやイギリスではCDの売上を上回る勢いだそうです。
特に注目されているのが、日本のアニメ音楽や和ジャズ。日本のレコードショップには、こうしたジャンルを探す海外の客が増えており、サブスクにはない“アナログならではの音”や“おしゃれなジャケットデザイン”が評価されています。日本国内では中古品として扱われるレコードが、ヨーロッパでは高級アイテムとして再び命を吹き込まれているのが印象的でした。
おわりに
今回の『コンテナ全部開けちゃいました!春の横浜港編』では、オーストラリア、イタリア、スペイン、インド、そして日本発ドイツ行きの輸送品まで、5つの異なる国と地域を舞台に、物流と文化の交差点が丁寧に紹介されました。単なるモノのやり取りではなく、そこには人の思いや知恵、そして文化が詰まっています。こうして私たちの暮らしを支える舞台裏をのぞくことで、日常の見方が少し変わってくるのかもしれません。
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