“5キロ2000円”の衝撃!どうなるコメ価格と日本農業の未来
2025年6月9日(月)放送のNHK『クローズアップ現代』では、「“5キロ2000円”で店頭に並んだ政府の備蓄米」をきっかけに、コメ価格の今後や日本農業のゆくえに迫ります。随意契約によって卸された備蓄米が、市場や消費者、農家に与える影響とはどのようなものなのでしょうか。高騰するコメ価格を抑える起爆剤になるのか、それとも一時的な現象に過ぎないのか——。この特集では、現在進行中の流通や販売の現場、さらに生産現場で起きている新米獲得競争の実態なども交えて、コメ価格と農業政策の今を深掘りします。
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
【クローズアップ現代】止まらぬコメ価格高騰!備蓄米放出で価格は下がるのか?政府の対策と今後の見通し|2025年3月12日放送
政府の備蓄米が低価格で放出 その背景と反響
今回注目されているのは、政府が放出した2022年産の備蓄米です。一般的には“古古米”と呼ばれ、通常は備蓄用として保管されるもので、賞味期限が近づいた場合は飼料用などにまわされることもあります。ところが今回は、随意契約によって卸され、イオンやイトーヨーカドーなど一部の大手スーパーで一般向けに販売されました。しかも価格は5キロ税込2160円と、通常の半額程度で提供されたのです。
この価格設定は、現在高騰しているコメ市場の中で極めて異例です。現在、一般的な5キロのコメは平均で4285円前後となっており、それと比べても非常に安い価格となります。その結果、販売初日から行列ができ、一部店舗では数時間で完売となるなど、消費者の注目度は非常に高い状況です。
味や品質についても、心配されたほどの違和感はなく、想像以上に良好な評価が広がっています。「古米でも問題ない」「においも気にならず十分おいしい」といった声もあり、今後の販売の拡大にも期待が寄せられています。
流通現場では価格の混乱と工夫が同時に進行
この備蓄米の販売は、卸売業者や小売業者にとっても大きな試練となっています。
現場では次のような反応や工夫が見られています。
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通常の国産米との価格差が大きく、販促方法を見直す動きが出ている
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備蓄米は“特価品”として明確に区分され、通常商品の価値を守る取り組みも進んでいる
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一部店舗では「混ぜ炊き用」「調理用」といった用途別提案で差別化を図っている
つまり、価格差による誤解や混乱を避けるために、売り場での工夫が必要とされているのです。価格を重視する層と、味やブランドにこだわる層とのバランスをどう取るかが、今後の販売戦略のカギになります。
また、通常米を扱う農家や契約農家からは、安価な備蓄米の影響で「自分たちのコメが売れなくなるのでは」と不安の声も出始めています。販売戦略と生産現場の連携が求められる状況です。
生産現場では新米争奪が過熱 価格交渉は厳しさ増す
一方、生産者側では、新米の確保をめぐる争奪戦が激しさを増しています。近年は肥料や資材費が高騰しており、農家の経営を圧迫しています。そのため、農家はできるだけ高く売りたいと考えていますが、買い手側は備蓄米の登場によって価格交渉に慎重になっており、現場でのやりとりが非常に難航しています。
JA(農協)は依然として玄米60キログラムあたり2万7000円の価格維持を掲げています。これがある種の価格の支えにはなっていますが、価格と流通量のバランス調整は極めて繊細な問題となっています。備蓄米によって市場全体の価格が大きく下がるようなことがあれば、農家の収入が減り、離農が進む懸念もあります。
農家にとっては、備蓄米の販売が一時的なものであればよいのですが、今後も継続的に販売されるようであれば、生産意欲の低下にもつながりかねません。
農地の集約化と担い手不足の深刻な現状
農林水産省は、こうした状況をふまえ、農業全体の構造改革を進めています。特に重視されているのが、農地の集約化と担い手の確保です。農地バンク(農地中間管理機構)を通じて、点在する農地を効率よく集約し、担い手の若手農業者に渡す取り組みが続いています。
しかし、実際にはまだ課題が多く、特に中山間地域では思うように農地の集積が進んでいません。政府は2023年度までに農地の担い手集積率を80%にするという目標を立てていましたが、2020年度末の時点での集積率は58.0%にとどまっています。
高齢化が進み、後継者も見つかりにくい地域では、農地が使われないまま放置されるケースも増え、農業全体の生産性低下につながるおそれがあります。今後は、補助金や制度だけでなく、地域ごとに合った支援体制が求められています。
備蓄米だけでは変えられない農業の根本課題
今回の備蓄米の放出は、消費者にとっては歓迎される動きかもしれませんが、それだけで農業の根本的な問題を解決することはできません。物価高、労働力不足、気候変動、輸入食料への依存、農家の減少といった課題が、今もなお深刻なままです。
番組では、これらの課題を解決するために、10年後の農業を見すえた長期的な政策のあり方についても取り上げられる見込みです。たとえば、ドローンやAIを使ったスマート農業の導入支援、農業高校や大学との連携による若者の育成、地元企業や地域との協力などが検討されています。
今の日本農業に必要なのは、短期的な価格対策と長期的な構造改革の両輪を進めることです。安心してお米が買える価格帯を守ると同時に、安心して農業を続けられる仕組みも作っていくことが求められています。
放送の内容と異なる場合があります。
放送終了後には、すべてのエピソードを正確に反映した記事に更新予定です。
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