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NHK【クローズアップ現代】備蓄米は救世主か?コメ価格の行方と農業の未来|2025年6月9日放送

クローズアップ現代

コメ価格はどうなる?備蓄米の影響と農業の未来に迫る最新報告

2025年6月9日に放送された「クローズアップ現代」では、食卓の主役ともいえる「お米」をめぐる最新の価格動向と、その背後にある国の政策や現場の声に焦点が当てられました。今回の特集では、政府が進める備蓄米の放出とその流通方法がどのように市場に影響しているか、さらに全国各地の農家が直面する課題、そしてこれからの農業の形についてまで幅広く取り上げられました。

【クローズアップ現代】止まらぬコメ価格高騰!備蓄米放出で価格は下がるのか?政府の対策と今後の見通し|2025年3月12日放送

備蓄米の販売がスタート 小売や流通の現場に混乱も

今月5日から、政府が保有する備蓄米の一部が随意契約によって大手コンビニをはじめとする小売業者に販売され始めました。政府は今回、まず30トンの販売を計画しており、今後さらに流通を拡大させる見通しです。

この備蓄米を扱う企業の一部は、自社の精米工場で即日精米・出荷できる体制を整えていますが、実際には納入時期や量が不明確なまま話が進んでおり、現場では不安が広がっています。

・随意契約での取引は、仕入れの予測が難しく、在庫管理も手探り状態
・中小の業者にとっては10トン単位の仕入れが負担になっている
・準備万全でも、政府からの連絡が直前になるケースが多い

こうした動きの中で、卸売業者からは「高値で仕入れた銘柄米の価格を今さら下げられない」という声も聞かれ、スーパーなど店頭での価格競争にも不安が広がっています。一方で、大阪の小売店では備蓄米の投入により仕入れ価格が安定していく可能性を期待する声もありました。しかし、実際に農家に確認したところ、今年のコメの価格は昨年より4割高くなるという見通しが示され、楽観できる状況ではないことがわかりました。

鍵を握るのは“入札米” まだ流通していない現状

コメの生産と流通に詳しい西川邦夫氏は、「供給量が増えれば価格は安定する」としつつも、別の課題があると指摘しました。それは、すでに入札で確保されている備蓄米がまだ流通に回っていないことです。入札米と随意契約米の両方が市場に流れない限り、根本的な供給不足の解消にはつながらないというのが専門家の見方です。

また、販売開始までのスピードが早すぎたという声もあり、地域や業種によっては対応が間に合っていない現場もあります。

・特に町のお米屋さんでは仕入れ条件が厳しい
・10トン単位での取引は中小業者には負担が大きい
・販売までのプロセスにもう少し段階的な支援が必要

小売側の新しい取り組みと政策への提案

番組では、ディスカウントストアなどを展開する企業の吉田直樹社長による取り組みも紹介されました。この会社では1万5000トンの備蓄米を調達し、今月から販売を開始しています。吉田社長は、小泉進次郎農水大臣に小売業者が集荷業者と直接取引を行い、自社で精米などを管理する方式を提案しました。これにより、販売価格の安定化と消費者への還元が期待されています。

この方法では、精米業者などの中間コストを抑えられる可能性があり、小売主導で価格調整が可能になる新しいモデルとして注目されています。

農地の集約と農家の高齢化という根本課題

後半では、コメ作りの現場が抱える構造的な問題にも焦点が当てられました。福井県の平泉寺地区では、100ヘクタールの農地を約60戸の農家が耕していますが、その多くが分散した小さな区画であるため、生産効率が上がらず、農地の集約が急がれています。

しかし、農家の半数以上が70代という状況の中で、自分の土地を手放したくないという思いが根強く残っているのが現実です。

・分散された農地では機械化や省力化が難しい
・高齢化が進む中で担い手不足が深刻化
・耕作放棄地の増加も懸念されている

こうした中で注目されたのが、福井県小浜市の事例です。ここでは農業法人が中心となって農地の集約を進めており、国の目指すモデルケースの一つとされています。

秋田県の大潟村では、1万ヘクタールの広大な農地で50年以上にわたってコメ作りを続ける法人が登場。しかし、この5年間で農家の数は4分の1にまで減少しており、深刻な人手不足が明らかになっています。

法人代表の涌井徹さんは、「初期投資ゼロで農業を始められ、収穫物で返済する」という新しい仕組みを提唱。国や県に対しても、このモデルの導入を求めています。

少人数で支える持続可能な農業へ

解説委員の佐藤庸介氏は、今後の日本の農業について「少人数で生産量を維持・向上させる」という考え方を示しました。これまで日本の米作りは供給過剰を避けることが中心でしたが、今後はむしろ安定供給に向けた体制強化が求められる時代に入ったといえます。

今回の特集では、単なる価格の上げ下げにとどまらず、備蓄米政策の運用の難しさ、農業の仕組み、農家の現実、そして次世代への引き継ぎ方まで深く掘り下げられていました。コメを取り巻く問題は、消費者・生産者・行政が一体となって考えるべき大きなテーマであり、これからの日本の食の安全保障にも関わる重要な課題であることが伝わってきました。

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