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【クローズアップ現代】ロシア経済はなぜ制裁下でも成長?“死の繁栄”の実態と今後の行方を独占取材|2025年2月5日放送

ドキュメント

制裁下のロシアで何が起きているのか?

2025年2月5日放送の【クローズアップ現代】では、「制裁下のロシア 実は“好景気”?“死の経済”の実態に迫る」というテーマで、ロシア経済の現状を深掘りしました。

ウクライナ侵攻から3年が経過し、ロシアは欧米諸国を中心に世界最大規模の経済制裁を受けています。しかし、その影響で経済が停滞するどころか、2023年のロシアのGDP成長率は3.8%と、先進国を上回る成長を見せています。この驚きの成長の背景にあるのが、「死の経済」とも呼ばれる軍事支出の拡大です。

ロシア政府が莫大な資金を投じ、軍需産業が活性化することで雇用が生まれ、市民の消費活動も活発化。住宅購入を支援する政策や兵士への高額報酬が市民生活の向上につながり、一見すると景気は好調に見えます。しかし、その実態は軍事による異常な経済成長であり、経済制裁が機能していないどころか、戦争を支える財源となっているのが現実です。

軍事支出がもたらす異常な経済成長

ロシア経済を支えているのは、年間18兆円にものぼる軍事支出です。各地の軍需工場は24時間フル稼働し、軍事関連の雇用が急増。この影響でロシアの平均賃金は1.5倍に増加し、市民の購買意欲が高まりました。

  • 自動車市場の急回復
    • 欧米メーカーの撤退後、中国メーカーが市場を席巻し、ロシア国内での自動車販売は3年間で2倍に増加
    • モスクワ市内の販売店では、新車を購入する家族の姿が増えている。
  • 飲食業界の活性化
    • モスクワの和食レストランでは、一皿2,000円のカリフォルニアロールが人気。
    • 市民の可処分所得が増え、外食産業も活況を呈している。
  • 住宅市場の拡大
    • ロシア政府が年間7,000億円を住宅ローン補助に充て、住宅購入のハードルを引き下げ。
    • 金利を16%→5%に引き下げたことで、月々の返済額が大幅減少
    • 高層マンションの建設が進み、都市部の住宅市場が活発化。

このように、軍事支出が引き金となり、ロシア国内では一見すると「好景気」とも言える状況が生まれています。しかし、その裏側には深刻な問題が潜んでいます。

兵士募集のための高額報酬―「死の経済」の現実

ロシア政府は、戦争の継続に必要な兵士を確保するため、驚くべき高額報酬を提示しています。

  • 年俸810万円(ロシアの平均月収の5年分)を支給
  • 入隊時の一時金が450万円超(地域によって変動)
  • 戦死した場合、遺族に2,000万円の補償金+年金・光熱費補助

この結果、ロシアでは1日1,000人が志願兵として採用されていると政府が発表。特に、貧困率の高い地域ほど、兵士として志願する若者が増えているのが実態です。

ロシアのサハ共和国出身のアンドレイ・アモノフさん(現在は国外へ逃亡)は、貧困に苦しむ中で入隊を決意。当時の一時金は約45万円でしたが、それでも「思いがけない大金だった」と話しています。戦死した兵士の遺族には多額の補償金が支払われるため、「戦争によって家族が救われる」という歪んだ価値観が生まれつつあります。

ロシア経済学者のウラジスラフ・イノゼムツェフ氏は、「命の対価として高額報酬が支払われる状況は、まさに“死の経済”そのもの」と指摘し、ロシア社会のいびつな構造を問題視しています。

欧米の制裁を逃れるロシアの適応力

ロシアは欧米からの制裁を受けながらも、驚異的な適応能力を見せています。特に、中国との経済関係を強化し、貿易総額は過去最高を記録しました。

  • ロシアと中国の貿易拡大
    • 農業用機械や電子部品などを輸入し、中国依存度が急上昇。
    • 一部の銀行が制裁を警戒し取引を渋る中、新たな送金ルートを確立。
  • 影の船団による石油輸出
    • フィンランド沿岸警備隊が監視を強化する中、ロシア産石油の輸送ルートが明らかに。
    • 「影の船団」と呼ばれる500隻以上の船舶が制裁を回避しながら石油を運搬。
    • ロシアは影の船団を通じて年間13兆円の収入を得ているとされる。

このように、ロシアは制裁を回避するための様々な手段を講じ、軍事資金を確保し続けています。

今後のロシア経済と国際社会の対応

ロシアに制裁を科している国や地域は45か国に上りますが、制裁の抜け道を完全に封じることは難しいのが現状です。
服部倫卓氏は、「3年間の制裁はロシアに一定の影響を与えたが、プーチン大統領の行動を変えさせるには至っていない」と指摘。
バイデン政権は「最後の1年で本気の制裁を強化する」と表明していますが、G7内の足並みの乱れも見え始めており、ロシアへの圧力がどこまで強まるのかは不透明です。

まとめ

今回の放送では、ロシア経済の現状と“死の経済”の実態が明らかになりました。

  • 制裁を受けながらもGDPは3.8%成長
  • 軍事支出が景気を押し上げ、雇用と消費が拡大
  • 兵士募集に高額報酬を投じ、貧困層の入隊が増加
  • ロシアと中国の貿易関係が制裁の抜け道に
  • 影の船団を使った石油輸出で年間13兆円の収益

今後、欧米の制裁がどこまで効果を発揮するのか、ロシアがどのように適応していくのか、引き続き注視する必要があります。

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