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NHK【ドキュメント72時間】津軽の夜に灯る「鹿内そば屋」|五所川原の立ち食いそば屋密着記|2025年6月13日放送

ドキュメント72時間

津軽・夜だけ開くプレハブのそば屋に密着

青森県・津軽地方にある、夜の数時間だけ営業する不思議なそば屋。2025年6月13日(金)放送のNHK「ドキュメント72時間」では、そんな独特な店「鹿内そば屋(通称:梵珠そば)」にカメラを据え、帰省客が増える大型連休のころに訪れる人々の姿を映し出します。店は狭く、立ち食いスタイル。しかし、なぜか多くの人がその場所を目指し、夜な夜な集まります。今回は、放送前情報をもとに、鹿内そば屋の基本情報と、その背景にある人々のドラマを紹介します。

夜の街角にぽつんとたたずむ「鹿内そば屋」

舞台となるのは、五所川原市中央1丁目にある鹿内そば屋(通称:梵珠そば)です。店舗といっても、一般的な建物ではなく、改造されたワゴン車を利用した簡易店舗で、まるで工事現場の詰所のような外観です。入口は開けっ放しで、中には小さな調理スペースとカウンターだけ。座席はなく、すべて立ったまま食べるスタイルです。

営業は毎晩午後8時30分から翌朝3時までの数時間だけで、日曜日は定休日。五所川原駅からは徒歩10分ほどで、ビッグエコーの隣にひっそりとたたずんでいます。専用の駐車場はありませんが、近隣にはコインパーキングが点在しており、車でも来店は可能です。

見た目は本当に目立たない店ですが、夜になると明かりが灯り、ふわっとそばつゆの香りがただよい始めます。常連客が静かに集まり、会話は少なくとも、温かい料理と空気が、そこに確かにあります。

メニューはシンプル、でも長年の愛され味

鹿内そば屋のメニューはとても少なく、そば・うどん・おでんのみ。けれども、それだけで十分。どの料理もやさしい味つけで、深夜でも胃にやさしいのが特徴です。

  • そば(温)…350円

  • うどん(温)…350円

  • おでん各種…1本100円前後

価格は40年以上ほとんど変わっていないとのことで、訪れる人にとっては驚きの安さです。今でも1コインでしっかり食事ができることが、この店のすごさ。毎日同じ時間に、同じメニューを、変わらない笑顔で提供し続ける店主の存在が、訪れる人々に安心感を与えています。

味はどれもあっさりしていて、そばやうどんのつゆは香り高く、しみじみとした美味しさ。おでんは大根や玉子、こんにゃくなど定番具材が並び、しっかりと味がしみています。

5月2日(金)から5月5日(月)までの店の様子と人々の姿

撮影初日の5月2日、プレハブそば屋の営業は日が暮れた後に始まりました。そばにはこの地域特有の製法が用いられており、蕎麦の実の芯の部分だけを使った素朴で深い味わいが特徴です。最初に訪れたのは地元の米農家の夫婦で、土地の食材と文化をよく知る人たちが一番乗りでした。開店から1時間も経たずに、次々と客が集まってきました。お店は立ち食いスタイルで席数が限られていますが、常連や帰省客、学生たちでにぎわいを見せました。

・理容師の仕事を終えた家族連れが訪れ、温かいそばを囲んで過ごす姿が見られた
・高校の同級生で6年ぶりに偶然再会した男性2人が、そばを食べながら思い出話を交わしていた
・30年来通っているという常連の男性が、変わらぬ味を求めて足を運んでいた
・帰省していた若者が同級生に連れられて初めてこの店を訪れた
・仕事を終えたばかりのタクシー運転手がほっと一息つくために立ち寄った
・大学生のグループが夕食代わりに訪れ、地元の味に感動していた

この日だけでもさまざまな立場の人たちが集まり、それぞれが自分の時間を持ちながら、共通の場所としてこのそば屋を選んでいることが伝わってきました。にぎわう店内は、地域の人と人をつなぐ、まるで交差点のような役割を果たしていました。

翌5月3日は4連休の初日で、観光客や帰省客が増える中、店主の鹿内ふさえさんが夕方に姿を現しました。35歳のときに始めたこの仕事を、以前は屋台で続けていたというふさえさん。プレハブに移ってからは少しだけ環境が落ち着き、常連も新しい客も集いやすい雰囲気になっています。この日は地元の若い世代も目立ち、連休らしいにぎやかな雰囲気となりました。

・税理士として働く男性が、夜の空き時間にふらりと寄った
・中学校の先生をしているという男性が、地元の味を懐かしみながら食事を楽しんだ
・市役所勤務の公務員男性が、職場帰りに一杯のそばを求めて訪れた
・地元の焼き鳥店の店主も、自分の店の閉店後にこのそば屋で一息ついていた

ふさえさんの作るそばには、どこか心を和ませる力がありました。飾り気のないその味が、働く人たちの疲れをやさしく癒しているようでした。

5月4日にはふさえさんが早くから仕込みに入ったものの、この日は体を休めるために店には立たずに帰宅しました。しかし、ふさえさんがいなくても店は静かに稼働し続けました。訪れたのは、いつものように地元に根付いた人たちです。

・りんご農家の家族が、収穫の合間に立ち寄って食事を楽しんだ
・娘を遠方に送り出したばかりのシングルマザーが、静かなひとときを過ごしていた
・前日も訪れていた焼き鳥店の男性が、変わらずこの店に顔を出していた

特別な催しや装飾は何もなく、そばを食べるだけの場所でありながら、そこにある人の温度が訪れる人々を引き寄せているようでした。言葉は少なくても、静かな共鳴が交わされる時間が流れていました。

そして最終日の5月5日。ふさえさんは再び店に立ち、常連や初めての客を迎えました。取材中、彼女は「お客さんも大好き」と語っていました。その短い言葉には、商売という枠を超えて人と人との関係を育んできた歩みがにじんでいました。長年、夜のこの場所を灯し続けたふさえさんの姿は、ただの料理人ではなく、地域の一部を構成するひとりとしての重みを感じさせます。

この小さなプレハブの店には、看板も音楽もありません。ただ、そばの湯気とお客の気配だけが漂う空間です。それでも多くの人がこの場所に通い、また戻ってくるのは、そこに自分の時間を委ねられる安心感があるからです。日々を支える食事と人のつながりを感じられる場所として、このそば屋は今も静かに地域の中にあり続けています。

そば屋というより、夜の「灯り」としての存在

鹿内そば屋は、ただそばを提供するだけの場所ではありません。深夜でもどこかに「人の灯り」があるというだけで、安心する人がいるということを、番組は教えてくれるかもしれません。にぎやかではないけれど、静かににぎわっている場所。観光名所でもないけれど、心に残る場所。

「ドキュメント72時間」が描くのは、そんな当たり前で特別な3日間です。誰にとってもふるさとは一つの場所ではなく、「戻ってこられる理由がある場所」。それが、この鹿内そば屋なのかもしれません。

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