後醍醐天皇と南朝の真実に迫る
2025年6月11日(水)22時から放送されるNHK総合『歴史探偵』では、動乱の南北朝時代を生んだ重要人物・後醍醐天皇に迫ります。島流しにされながらも新時代を切り開いた彼の波乱の人生、そしてその後も続いた南朝の執念の物語が紹介される予定です。放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
鎌倉幕府に挑んだ後醍醐天皇の決意と流罪
後醍醐天皇は、鎌倉時代末期に即位した第96代天皇で、天皇による政治=親政の実現を強く願っていました。当時の政治は武家中心で、朝廷は実質的な力を持っていませんでした。彼はその状況を変えるべく動き出し、1331年には元弘の乱を起こしますが失敗。幕府に捕らえられ、隠岐島に流されることになります。
しかし、ここで終わらなかったのが後醍醐天皇のすごさです。1333年、名和長年や新田義貞の協力、さらには足利尊氏の離反も加わり、ついに鎌倉幕府は滅亡します。ここから、後醍醐天皇は「建武の新政」を始め、武家ではなく朝廷が政治の中心となる新しい時代を切り開こうとしました。
建武の新政の挫折と南朝の誕生
建武の新政は理想に満ちていましたが、現実とのギャップが大きく、特に恩賞の配分などで武士たちの不満が高まります。中でも、武士たちから信頼を集めていた足利尊氏との対立が深刻化し、ついに政権は崩壊してしまいます。
足利尊氏は京都で新たに光明天皇を立てて北朝を創設。それに対抗して後醍醐天皇は、1336年に奈良県吉野に逃れ、南朝を開きました。こうして、日本は二つの朝廷が並び立つ南北朝時代に突入します。この対立は半世紀以上にわたって続きました。
後醍醐天皇自身は1339年に吉野で亡くなりますが、その意志は子どもたちにしっかりと引き継がれていきます。
各地に広がった南朝の戦い―皇子たちの使命
後醍醐天皇の子どもたちは、南朝の正統性を全国に示すため、それぞれ地方に派遣されました。これは、各地で北朝と戦いながら南朝の勢力を支えるための重要な戦略でした。
・恒良親王は、新田義貞とともに北陸で活動しましたが、戦局の悪化により捕らえられ、命を落としました
・宗良親王は関東に渡り、武士たちと連携しながら戦いましたが、厳しい戦況の中で長期にわたる苦戦を強いられました
・義良親王は奥州(東北)で北畠親房や北畠顕家とともに活動し、その後、後村上天皇として即位します
・懐良親王は征西将軍として九州に渡り、現地の武士団と協力しながら20年以上も戦い抜きました
それぞれの皇子たちは、南朝の理想を胸に、自らの命をかけて戦場を駆け回ったのです。
懐良親王が築いた「九州南朝王国」
とくに注目されるのが、懐良親王の九州での活躍です。彼は1336年に征西将軍に任じられて九州へ向かい、菊池氏の支援を得ながら活動を開始します。1348年には肥後国(熊本県)菊池市に征西府を設置。その後の1359年、筑後川の戦いで足利軍に勝利し、大宰府を制圧しました。
この勝利によって、九州全土に南朝の影響力が一気に広がり、「九州南朝王国」とも呼ばれる勢力が出来上がります。さらに、懐良親王は明との外交にも成功し、「日本国王良懐」として冊封され、国際的な承認も得ました。これは、室町幕府よりも先に明との正式な外交ルートを築いたことを意味します。
1371年には今川了俊が室町幕府から派遣され、翌年大宰府が陥落。懐良親王は筑後国矢部(福岡県八女市)に退き、1383年にその地で亡くなりました。懐良親王の征西府は20年以上にわたって機能し、南朝の希望の光として輝き続けました。
南北朝統一後も続いた「後南朝」とその秘儀
1392年、後亀山天皇が北朝の後小松天皇に譲位し、表向きには南北朝の統一が果たされます。しかし、南朝の精神は消えませんでした。南朝の皇族や支持者たちは吉野の奥地に拠点を残し、そこから「後南朝」として活動を続けました。
1443年には、「禁闕の変」と呼ばれる事件が起こります。南朝の残党とされる金蔵主らが京都御所を襲撃し、三種の神器のうち剣と神璽を奪取します。これにより、金蔵主は「尊義王」と称して即位。後南朝の初代天皇となったとされます。
その子とされる尊秀王(そんしゅうおう)は、奈良県川上村を拠点に活動し、地元では「自天王」とも呼ばれました。1457年、赤松家の家臣に討たれましたが、その首と神璽は郷士たちによって守られ、金剛寺に手厚く葬られました。
その尊秀王を今も偲ぶ儀式が「御朝拝式」です。1459年から現在まで毎年2月5日に行われており、令和元年には第562回を迎えました。この儀式では、尊秀王の遺品とされる兜などが収められた宝物殿が年に一度だけ開帳され、地元の人々「筋目」が儀式を担い、伝統を守り続けています。
この御朝拝式は、奈良県の無形民俗文化財に指定され、一般の見学も可能です。まさに、後醍醐天皇の志が今も静かに息づいている証といえます。
放送の内容と異なる場合があります。放送後に改めて詳細情報を反映予定です。
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