紅葉の秘密・サビの語源・ドキドキゴロゴロの謎
2024年10月11日放送(2025年2月28日再放送)の「チコちゃんに叱られる!」(NHK総合)では、秋の紅葉がなぜ起こるのか、曲の一番盛り上がる部分を「サビ」と呼ぶ理由、日本語の「ドキドキ」「ゴロゴロ」といった繰り返し言葉の仕組みについて取り上げました。普段何気なく見たり聞いたりしていることにも、深い理由や歴史があることが分かる内容でした。それぞれのテーマについて、番組の内容を詳しく紹介します。
なんで秋になると紅葉するの?
秋になると、木々の葉が赤や黄色に色づいていきます。この美しい紅葉には、木が生き抜くための戦略が隠されています。紅葉の仕組みを知ることで、自然の不思議さや木の生命力を感じることができます。
・葉が緑色なのは「クロロフィル」があるから
木の葉が春から夏にかけて緑色なのは、「クロロフィル」という物質が含まれているためです。クロロフィルは光を吸収して、木が成長するためのエネルギーを作る大切な役割をしています。
・紫外線から葉を守る「カテキン」
葉の中には「カテキン」という無色透明な成分も含まれています。カテキンは紫外線を吸収し、クロロフィルが傷つかないように守る役割を持っています。ただし、カテキンの寿命は約半年。秋になるとカテキンが減少し、葉の変化が始まります。
・赤く染まる理由は「アントシアニン」
秋になると、日照時間が短くなり、気温も下がります。すると、カテキンが変化し、「アントシアニン」という赤い色素が作られます。これが葉が赤くなる理由です。アントシアニンは、紫外線を吸収することで葉を守る働きをしており、木にとって大切な物質です。
・クロロフィルが壊れると葉が黄色くなる
葉が黄色くなる場合は、クロロフィルが分解されることが関係しています。葉の中にはもともと黄色い色素(カロテノイド)も含まれていますが、夏の間はクロロフィルが優勢で黄色は目立ちません。しかし、秋になってクロロフィルが分解されると、カロテノイドの黄色が目立つようになり、黄色く色づくのです。
・クロロフィルが持て余すエネルギーが危険になる
太陽の光が当たり続けると、クロロフィルはエネルギーを作り続けます。しかし、秋になり気温が下がると、木はエネルギーを使い切れず、クロロフィルの働きが鈍くなります。その結果、「スーパーオキシド」という有害物質が発生し、葉の細胞を傷つけてしまいます。そこで、このスーパーオキシドを抑えるためにアントシアニンが働き、紅葉が進んでいきます。
・木は冬に向けて栄養を回収する
葉のクロロフィルが分解されると、一部は「アミノ酸」となり、木の幹に回収されます。このアミノ酸は冬の間、木が生きるためのエネルギーとして蓄えられ、春になるとタンパク質へと変化し、新しい葉を作る材料になります。
・役目を終えた葉は落葉する
紅葉が終わると、葉は自然と木から離れて落葉します。これは木が水分を失わないようにするための仕組みです。冬は気温が低くなり、土の水分が凍ることもあります。葉をつけたままだと、木が水をうまく吸収できず、枯れてしまうことがあります。そのため、木は葉を落とすことで冬を乗り越え、新しい春を迎える準備をしているのです。
紅葉は単なる色の変化ではなく、木が冬に向けてエネルギーを蓄え、生き延びるための重要なプロセスなのです。
なんで曲の一番盛り上がるところを「サビ」っていうの?
音楽の中で最も印象に残りやすい部分が「サビ」と呼ばれる理由は、実ははっきりと分かっていません。日本語の中でも、語源が不明な言葉は珍しいですが、「サビ」はそのひとつとされています。番組では、専門家が考える3つの説を紹介していました。
・「錆び声説」
「サビ」という言葉は、明治時代の端唄(はうた)という伝統音楽で使われた「錆び声」からきたのではないか、という説です。
- 錆び声とは、枯れたような渋みのある独特な歌声のことを指します。
- 端唄では、特に感情を込めて歌う部分が「錆び声」とされていました。
- そのため、曲の中でも特に印象的で感情が高まる部分を「サビ」と呼ぶようになったのではないかと考えられています。
- 歌詞の抑揚やメロディーの変化が目立つ部分だったことから、「サビ=目立つ箇所」というイメージが定着した可能性があります。
・「わび・さびの寂び説」
日本の伝統的な美意識である「わび・さび」の「寂び(さび)」が由来ではないか、という説です。
- 「わび・さび」は、日本特有の価値観で、静けさや経年変化の美しさを指します。
- 「寂び」という言葉には、時間の経過によって美しさが深まるという意味があります。
- 曲の中で、サビは「盛り上がる部分」ですが、逆にそれがあるからこそ、それ以外の部分が引き立つとも言えます。
- この「対比の美しさ」が、日本の伝統的な「わび・さび」に通じることから、サビと呼ばれるようになったのではないかとも考えられています。
・「わさび説」
わさびは、食べるとツーンとした辛さで強いインパクトを与えます。この「わさびの辛さが効いてくる部分」から転じて、曲の中で最も印象的な部分を「サビ」と呼ぶようになった、という説です。
- わさびは、料理の中でアクセントとなる部分です。
- 曲の中で一番盛り上がる部分も、全体の流れの中でアクセントとなることから、名前が似た「サビ」と呼ばれるようになったのではないかと言われています。
- 実際に、言葉の響きも似ており、親しみやすい言葉として広まった可能性があります。
また、音楽の中で「サビ」が重要な役割を果たしている理由も考えられます。
・サビは、曲の中で最も耳に残りやすく、リスナーに印象を与える部分です。
・ポップスやロックの曲では、サビが繰り返されることが多く、歌詞やメロディーが覚えやすくなるように作られています。
・Aメロ・Bメロがあるからこそ、サビの部分が際立ち、より感情が伝わりやすくなります。
・サビのメロディーや歌詞は、その曲の「顔」とも言える重要な要素であり、作曲者も一番力を入れる部分です。
このように、音楽の中でサビが果たす役割はとても大きいのですが、なぜ「サビ」と呼ばれるようになったのかは、いまだにはっきりとした結論が出ていません。ただ、「サビ」という言葉が日本独自の表現として定着していることは確かであり、私たちはこれからも「サビ」のある曲に心を動かされ続けるのかもしれません。
なんで「ドキドキ」「ゴロゴロ」って繰り返すの?
日本語には「ワクワク」「キラキラ」「モチモチ」など、同じ音を繰り返す言葉がたくさんあります。こうした言葉は「オノマトペ」と呼ばれ、日本語の中でとても重要な役割を果たしています。オノマトペには、擬音語(実際の音を表す言葉)と擬態語(動作や感情を表す言葉)の2種類があり、それぞれに意味や使われ方の特徴があります。
・オノマトペの歴史は古い
オノマトペは、日本最古の書物である「古事記」にも登場しています。たとえば、「さらさら流れる水」や「ざわざわする森」などの表現が使われており、昔から自然の音や動きを表すのに適した表現として用いられていました。
- 「今昔物語」などの古い書物にも、「きらきら」「さらさら」といったオノマトペが多く記録されています。
- 日本語の特徴として、リズムや音の響きを重視する傾向があるため、オノマトペが豊富に発展しました。
・なぜ同じ音を2回繰り返すのか?
オノマトペには、「ドキドキ」や「ゴロゴロ」のように同じ音を繰り返すものが多くあります。これは、「言葉の経済性」が関係しています。
- 言葉の経済性とは、言葉が使われるうちに短く、分かりやすくなるという法則のことです。
- たとえば、「おかず」という言葉は、「数々取りそろえる」という意味の言葉が短縮されて生まれたものとされています。
- オノマトペも、1回だけだと意味が伝わりにくいため、「ドキ」「ゴロ」ではなく「ドキドキ」「ゴロゴロ」と2回繰り返すことで、より意味を強調し、わかりやすくするという役割があります。
・4モーラ(拍)のリズムが関係している
日本語は「4モーラ(拍)」のリズムを好む傾向があり、それがオノマトペの繰り返しと関係しています。
- 例えば、「リモコン(リモートコントローラー)」「コンビニ(コンビニエンスストア)」など、日本語では4音で区切ると覚えやすくなるという特徴があります。
- オノマトペの多くも、「ドキドキ」「キラキラ」「ワクワク」と4音で構成されており、リズム感が良いため、話し言葉として自然に使いやすいのです。
- さらに、4モーラの言葉は耳に残りやすく、リズムが良いため、日本人にとって「心地よい響き」として受け入れられています。
・繰り返しには「継続」の意味がある
オノマトペを繰り返すことで、その動作や状態が継続していることを強調する役割があります。
- 例えば、「ドキドキ」は、心臓が1回だけ鼓動するのではなく、緊張や興奮によって連続して鼓動していることを表します。
- 「ゴロゴロ」は、雷が一度だけ鳴るのではなく、しばらくの間続いている様子を表します。
- 繰り返さない単語と比べると、「ワク(1回)」より「ワクワク(何度も)」の方が、継続的な動作をイメージしやすくなります。
・オノマトペは日本語に深く根付いている
日本語には数えきれないほどのオノマトペが存在し、日常生活の中で頻繁に使われています。
- 人の感情:「ワクワク」「イライラ」「モヤモヤ」
- 動作:「バタバタ」「ソロソロ」「ズンズン」
- 音:「ザーザー」「チリンチリン」「ドーン」
- 状態:「ツルツル」「フワフワ」「カチカチ」
- これらのオノマトペは、短い言葉で豊かな表現を生み出せるため、日本語の魅力のひとつとなっています。
このように、オノマトペの繰り返しには、日本語のリズム感、言葉の経済性、継続を表す意味など、さまざまな要素が関係しているのです。昔から使われてきた表現だからこそ、今でも自然に会話の中に溶け込み、使われ続けているのですね。
まとめ
今回の「チコちゃんに叱られる!」では、紅葉の仕組み、音楽の「サビ」の語源、日本語のオノマトペの特徴について解説されました。どれも身近なテーマですが、詳しく知るととても奥が深いことが分かります。これから秋の紅葉を眺めたり、音楽を聴いたりするときには、今回学んだことを思い出してみてください。
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