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【映像の世紀バタフライエフェクト】1929年ウォール街暴落と世界恐慌の真実|2025年4月28日放送

映像の世紀バタフライエフェクト

大恐慌 欲望と破滅の1929年

2025年4月28日放送のNHK総合『映像の世紀バタフライエフェクト』では、世界大恐慌の引き金となった1929年の株価暴落と、それに翻弄された人々の運命を描きます。アメリカが「永遠の成長」に酔いしれていた時代、発明王エジソンの祝賀会からわずか3日後に暗転が訪れ、栄光に包まれていた街と人々は一気に破滅へと転がり落ちました。番組は当時のリアルな映像や証言を通して、「欲望の果てに待つ崩壊」の姿を明らかにします。

栄光と狂乱に包まれた1920年代のアメリカ

第一次世界大戦の戦火を避けることができたアメリカは、戦後にかけて空前の好景気を迎えました。この時代、都市部では高層ビル「摩天楼」が次々と建設され、街並みが垂直に伸びていく景色はまさにアメリカの成長の象徴とされました。エネルギー産業や自動車産業の発展により、生活の利便性は急激に向上。フォードのT型自動車や家庭用冷蔵庫、洗濯機などの普及が進み、かつては一部の富裕層のものであった製品が、次第に庶民の家庭にも広がっていきます。

  • 都市の暮らしは華やかさを増し、ジャズが街角に流れ、ダンスホールでは人々が自由を謳歌していました。

  • 女性たちはボブカットに短いスカートを身にまとい、社会進出も進み、「新しい女性像(モダンガール)」が話題となりました。

  • ブロードウェイはエンタメの聖地となり、夜ごとショーが繰り広げられ、観客は煌びやかなステージに熱狂していました。

この時代、株式投資はごく一部の富裕層だけのものではなくなり、一般の労働者や主婦、学生までが株を買うようになっていきます。そのきっかけをつくったのが、トーマス・エジソンが発明した「ティッカー」でした。これは、株価の変動を印字してリアルタイムで伝える機械で、駅の構内や理髪店、バー、ナイトクラブなど、日常のあらゆる場所に設置され、人々の興奮をさらにあおりました。

ティッカーに映る株価が上昇するたびに、人々はその数字に希望を託し、「誰もが金持ちになれる時代」が来たと本気で信じられていたのです。借金をしてまで株を買う「信用買い」が一般化し、株はもはや投資ではなく「夢を買う道具」になっていきました。

そんな時代の象徴ともいえる人物が、若き天才作家F・スコット・フィッツジェラルドでした。彼はミネソタの田舎町からニューヨークに出てきて、そこで見た贅沢な暮らしと人間の欲望を鋭く描き出しました。彼の代表作『グレート・ギャツビー』は、1920年代の虚飾と哀愁を見事にとらえた作品として、多くの人々に読まれました。

  • フィッツジェラルド夫妻は社交界でも有名な存在で、夜ごとのパーティーに明け暮れ、豪華な衣装に身を包んでいたと記録されています。

  • 彼の作品は「ジャズ・エイジ」という言葉そのものを象徴するものとされ、当時の空気を最もよく伝える文学とされています。

しかし、その裏にはすでに「行きすぎた楽観」が潜んでいました。栄光と自由を謳歌する1920年代のアメリカは、一歩ずつ破滅に向かって進んでいたのです。

株熱に浮かされた街とエンタメ業界の栄光

1920年代後半のウォール街は、まさに狂騒の中心地でした。「信用買い」と呼ばれる仕組みが普及し、わずか1割の証拠金で10倍もの金額の株を購入できるようになると、リスクを顧みずに株取引に参入する人が続出しました。株価は上がる一方だと信じられ、借金をしてまで投資に熱を上げる光景は、街中の至る所で見られるようになりました。

  • 床屋、給仕、靴磨きの少年に至るまで、「どの株が儲かるか」を語り合う異様な熱気に包まれていました。

  • 株取引はもはや富裕層だけのものではなく、大衆の「一攫千金」への夢となっていました。

  • 新聞には毎日のように「株価高騰」の見出しが踊り、人々はますます株式市場に熱中しました。

こうした経済の活況は、エンターテインメント業界にも大きな影響を与えます。ニューヨーク・ブロードウェイでは、史上空前の黄金時代が到来し、「ジーグフェルド・フォリーズ」に代表される豪華絢爛なレビューショーが次々と上演されました。舞台演出家フローレンツ・ジーグフェルドは、その中心的人物でした。

  • ジーグフェルドは舞台のセットに億単位の資金を投じ、きらびやかな衣装と巨大な舞台装置を惜しみなく用いました。

  • 彼はショーの成功によって莫大な収入を得ると同時に、その資金をさらに株式投資に回し、さらなる豪華な演出を追い求めました。

  • ジーグフェルドの興行は大人気を博し、「夢の世界」を演出するブロードウェイの象徴となりました。

しかし、その一方で、冷静に市場の本質を見抜いた人物も存在しました。伝説の相場師ジョセフ・P・ケネディです。彼は大衆の熱狂ぶりを観察し、靴磨きの少年までもが株の話をするようになったことに危機感を抱きます。

  • ケネディは「素人までもが株に群がったら、バブルの終わりは近い」と確信しました。

  • 1929年9月、彼は保有していた株をすべて売却し、暴落に巻き込まれることなく巨万の富を築き上げました。

  • その後、ウォール街で悪名高い相場師として名を馳せたケネディは、後に政界にも進出していきます。

このように、誰もが浮かれきった中で、冷静に身を引いた少数派だけが、破滅を免れることができたのでした。華やかな街とショービジネスの裏では、確実に崩壊へのカウントダウンが始まっていたのです。

崩壊の序章──株価暴落とその余波

1929年9月3日、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は史上最高値の381ドルに達しました。街は「景気は永遠に続く」と信じる熱狂に包まれ、誰もがさらなる高みを夢見ていました。しかし、この栄光は長くは続きませんでした。

  • イギリスの実業家クラレンス・ハトリーの逮捕をきっかけに、イギリス経済に不安が広がり、資金がアメリカから流出し始めました。

  • イングランド銀行の金利引き上げも追い打ちをかけ、アメリカ国内の資金繰りを圧迫しました。

  • 9月後半から、ダウ平均株価はじわじわと不気味に下がりはじめました。

それでも人々は「一時的な下落」と楽観視していました。しかし、ついに1929年10月24日、暗黒の木曜日を迎えます。ゼネラル・モーターズ株に大量の売り注文が入ったのを皮切りに、連鎖的に株の売りが始まりました。

  • 取引開始直後から売り注文が殺到し、取引所はパニックに陥りました。

  • 銀行団が巨額の資金を投じて株価を支えようと試みましたが、焼け石に水でした。

  • トーマス・エジソンの発明した「ティッカー」も機能不全に陥り、リアルタイムで株価を更新できなくなりました。

  • 人々は正確な情報を得られないまま、恐怖に駆られて株を手放し、市場はさらに混乱していきました。

このわずか数日間で、株式市場から500億ドルもの資金が消滅しました。信用取引に頼っていた多くの人々は、急激な株価下落によって借金地獄に突き落とされ、資産を失っただけでなく、生活そのものを失いました。

舞台演出家フローレンツ・ジーグフェルドもこの暴落に巻き込まれました。

  • 彼は株式投資に傾注していたため、たった数日で300万ドルもの大損失を被りました。

  • 豪華な生活を支えていた資金源を失い、誇りだった豪邸も手放さざるを得ませんでした。

  • 妻ビリー・バークと娘は、生活のためにハリウッドへと移り住むことになります。

ジーグフェルド本人は、すべてを失った後も抵当に入った屋敷にひっそりと留まり、かつての栄光を思いながら暮らしました。そして、わずか数年後の1932年、彼は失意のうちに静かに世を去りました。

株価暴落は単なる経済指標の下落ではなく、無数の人生を一夜にして根底から覆す破壊力を持っていたのです。街のきらめきも、人々の笑顔も、この日を境に消え去りました。

人生の明暗を分けた3人の運命

大恐慌によって、多くの人々の運命は大きく変わりました。その中でも特に、ジョセフ・P・ケネディ、F・スコット・フィッツジェラルド、フローレンツ・ジーグフェルドの3人は、それぞれまったく異なる道をたどることになります。

まず、ジョセフ・P・ケネディは、株式市場の崩壊を見事に乗り越えた数少ない人物でした。市場が過熱していることをいち早く察知し、暴落直前に全ての株を売り抜けたケネディは、莫大な資金を手にします。

  • その後、ケネディはルーズベルト大統領から信任され、証券取引委員会(SEC)の初代委員長に就任しました。

  • 悪辣な相場師として名を馳せた過去を持ちながらも、市場の健全化に尽力し、名声を高めました。

  • 引退後は、息子ジョン・F・ケネディを大統領に押し上げるために惜しみない支援を行い、ケネディ家はアメリカ政治の頂点に立つことになります。

一方、フィッツジェラルドは、大恐慌を境に運命を暗転させます。栄華を極めた1920年代とは打って変わって、時代は行動派の文学を求めるようになり、アーネスト・ヘミングウェイがもてはやされるようになりました。

  • フィッツジェラルドはフランスに渡り、ヘミングウェイと交流を持ちますが、次第にその才能の差を痛感するようになります。

  • アルコール依存症と妻ゼルダの精神疾患にも悩まされ、経済的にも精神的にも追い詰められていきました。

  • 1940年、フィッツジェラルドは44歳の若さで心臓発作により亡くなります。晩年はほとんど顧みられることもなく、かつての輝きは見る影もありませんでした。

そして、フローレンツ・ジーグフェルド。彼もまた、大恐慌による市場崩壊に巻き込まれ、栄光のすべてを失った一人です。

  • 巨額の借金を抱えたジーグフェルドは、かつての豪邸を手放し、孤独と病に苦しむ生活を送ることになります。

  • 1932年、彼は静かにこの世を去りました。

  • ジーグフェルドの死は、単なる一人の舞台人の終焉ではなく、あのきらびやかなブロードウェイ黄金時代そのものの終わりを象徴するものでした。

このように、たった数年の間に明暗を大きく分けた3人の運命は、時代の波に飲み込まれることの恐ろしさを私たちに伝えています。富と名声を手にした者、時代に取り残された者、そして夢にすべてを賭けて散った者。それぞれの生き様が、1929年という年の重みを今に語り継いでいます。

終わりに

今回の『映像の世紀バタフライエフェクト』では、「欲望と破滅の連鎖」が引き起こした大恐慌の真実を、3人の人物の軌跡と共に映し出します。時代に翻弄された者、勝ち抜いた者、その両方の姿から、現代の私たちが学ぶべきことが多く詰まっています。

【放送情報】
2025年4月28日(月)22:00〜22:45
NHK総合『映像の世紀バタフライエフェクト』選・大恐慌 欲望と破滅の1929年

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