大福・もちアイスの秘密兵器!包あん機の発明に迫る
2025年6月7日に放送されたNHK総合「探検ファクトリー」では、福井県坂井市にある包あん機(ほうあんき)の工場を訪れ、和菓子や菓子パン、もちアイスなどを支える“中身を包む技術”の裏側を紹介しました。今回の主役は、1時間に3600個もの大福を包むことができる機械と、それを開発した発明王たちです。職人技を再現するための工夫や、先代社長のユニークな発想が光る内容となりました。
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包あん機の仕組みと工夫
今回番組が訪れたのは、福井県坂井市にある包あん機の専門工場です。最初に案内されたのは、実際に機械が組み立てられている作業現場でした。この工場では年間200〜300台もの包あん機を製造しており、主に大福を包む機械として使われています。
包あん機の基本的な構造には、あんや生地を入れる「ホッパー」と、材料を機械内部へスムーズに送り込む「スクリュー」があります。このスクリューの部分には、ただ材料を押し出すだけでなく、生地やあんを傷つけないようにやさしく送るという繊細な役割があります。そのため、スクリューの形状には細かな工夫がされており、たとえば材料がスムーズに流れるようにカーブをつけるなど、摩擦や圧力をできるだけ減らす設計が施されています。
開発チームが目指しているのは、「スクリューそのものがなくても動くような機構」です。これは、生地に一切のストレスをかけずに包むための理想形であり、そうした理想に近づくために日々改良が重ねられています。
驚くべきエピソードとして、先代社長が「フィラー」の形状を考案したとき、ヒントになったのが四つ葉のクローバーだったという話も紹介されました。自然の形を観察する力や直感が、新しい技術の形につながるという発想は、ものづくりの原点ともいえるでしょう。
この工場では、包あん機の設計から試作、製造に至るまでをわずか3人の開発メンバーで行っています。
・少人数ながら一人ひとりが多様な工程に対応できる
・開発者と現場の距離が近く、フィードバックがすぐに反映される
・常にユーザーの声を聞きながら改良が進められている
こうした体制だからこそ、スピーディーかつ柔軟な開発が可能となっており、最新型ではシート状の生地であんを包む技術にも対応したモデルを完成させています。これにより、大福だけでなく、和洋さまざまな菓子製品に対応できるようになってきているのです。
一見シンプルに見える包あん機ですが、その内部には職人の技術を再現するための高度な工夫と情熱が詰まっていることが、現場の様子から伝わってきました。日々の進化はこうした現場から生まれており、日本の“おいしい”を支える技術力の高さを改めて実感できる内容でした。
この会社では、包あん機の開発をわずか3人で担当しているとのことです。そんな少人数体制でありながらも、最新モデルではシート状の生地であんを包む技術にまで進化を遂げており、日々の改良が絶えず続けられています。
1時間に約3600個という大量生産を可能にする包あん機は、現在では国内だけでなく世界十数か国で活用されているとのことで、福井の技術が世界中のお菓子づくりを支えていることがわかります。
機械化の原点は“人手不足”への挑戦
この会社のものづくりの歩みは、もともと和菓子に使われる木型の製作から始まりました。創業当初は、職人の手仕事を支える伝統的な道具を作る立場でしたが、約50年前に転機が訪れます。ある日、先代社長のもとに「人手が足りない。手作業ではもう限界だ」と悩む和菓子店の職人から相談が寄せられたのです。
この言葉をきっかけに、社長は機械化による解決に挑戦を始めました。最初に取り組んだのは、「蒸す・練る・切る」といった和菓子づくりの基本工程を代替するための機械でした。機械化が進むことで、作業効率が上がるだけでなく、職人の手による技術をなるべく損なわない品質の保持が可能となり、多くの和菓子店にとって画期的な助けとなりました。
こうした基礎技術の積み重ねが、現在の包あん機の誕生と進化につながっていきます。単にあんを包むだけでなく、形・重さ・スピードなど、和菓子職人が長年培ってきた感覚をいかに機械で再現するかという課題に真正面から向き合ってきた姿勢が、技術力の高さを支えているのです。
さらに、社長は菓子メーカーとの共同開発にも積極的に取り組んでいます。その代表的な成果が、「もちアイス」の製造技術の確立です。もちアイスは、やわらかいもち生地で冷たいアイスを包むという非常に難易度の高い工程を含んでいます。
・生地が破れないように包む
・アイスが溶けないうちに成形する
・一定の形と大きさを保つ
これらすべての課題をクリアするために必要だったのが、長年培った包あん技術の応用力でした。人の手では均一に包むのが難しい工程を、精密な機械によって実現したこの成功は、今や日本だけでなく海外にも広がる“もちスイーツ”の広がりを支える土台となっています。
このように、現場の困りごとに耳を傾け、課題解決のための技術を形にするという創業以来の姿勢が、今の包あん機の開発力と信頼につながっていることが番組を通して伝わってきました。人の代わりではなく、人の技を継承し、さらに進化させる。その心が、日本の機械技術に深く息づいているのです。
羽二重餅と東尋坊の地から世界へ
今回訪れた工場のある福井県坂井市は、観光地として知られる東尋坊のある場所でもあり、和菓子の名産「羽二重餅」の地元でもあります。和菓子文化の根強い地域だからこそ、機械の進化もまた深く根を下ろしていることがうかがえました。
発明のきっかけも、和菓子店の悩みに耳を傾け、現場の課題を自分の技術でどうにかしたいという強い思いから始まっています。創業当初から「必要とされる機械をつくる」という姿勢を大切にしてきたからこそ、今の包あん機があるのだと感じさせる内容でした。
番組を通じて、目には見えにくいけれども食の裏側を支える技術者たちの情熱と工夫、そして日本のものづくりの力を知ることができました。包あん機は、大福やもちアイスといった身近なお菓子を、いつでもおいしく届けてくれる「縁の下の力持ち」だったのです。
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