警察署の金色の紋章は焼き物だった
警察署の正面で光る金色の紋章を見ると、重い金属を加工して作っているように感じます。しかし、福井市の工場で作られている紋章は、意外にもセラミックス製の焼き物です。
『探検ファクトリー(金色に輝く警察の紋章工場 高度な技と芸術センス)(2026年8月5日)』では、2025年6月21日に放送された回を再放送し、長く美しさを保つ警察紋章の製造現場を紹介します。見慣れたマークの裏にある、職人の手仕事と素材選びを詳しく見ていきましょう。
この記事でわかること
- 警察紋章を作る福井市の工場
- 紋章が焼き物で作られる理由
- 金色に仕上がるまでの製造工程
- 価格や個人購入で確認したい注意点
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警察の紋章を作る工場は福井市の廣部硬器
番組で紹介される警察紋章の工場は、福井県福井市に本社を置く株式会社廣部硬器(ひろべこうき)です。
廣部硬器は1956年創業の会社で、警察や消防の建物に設置される紋章をはじめ、学校の校章、シンボルマーク、家紋、寺紋、文字、レリーフなど、立体的なセラミックス製品を手がけています。
会社の大きな特徴は、一般的な茶わんや皿を量産する陶磁器メーカーではなく、建物に取り付ける大型の焼き物を得意としていることです。
「茶わんを作らないやきもの屋」という独自の道を選び、複雑な形を立体的に再現する技術を磨いてきました。
警察署の紋章は、建物の正面という目立つ場所に設置されます。遠くから見ても形が崩れて見えず、近くで見ても品格がある仕上がりが求められます。
さらに、完成した紋章は雨、風、雪、日差しにさらされ続けます。単にきれいなだけではなく、屋外で長期間使える耐久性も必要です。
初めて知ると少し驚きますが、警察紋章は飾りというより、建物の顔になる特注の工業製品と考えた方がわかりやすいでしょう。
警察紋章は「ダイヤスタイト」というセラミックス製
廣部硬器が手がけるセラミックス造形品は、ダイヤスタイトと呼ばれています。
警察署の金色の紋章を見ると、金属を鋳造したものだと思う人が多いのではないでしょうか。実際には、廣部硬器の代表的な警察・消防紋章は、セラミックスの性質と職人の加工技術を組み合わせて作られています。
セラミックスは、原料を成形して高温で焼き固める素材です。身近な例では陶磁器やタイルがありますが、素材の配合や焼き方によって、建築物に使える強さや耐候性を持たせることができます。
警察紋章に焼き物を使う大きな理由は、屋外で起こりやすい腐食や変色を抑えやすいことです。
金属は丈夫な印象がありますが、設置場所や表面処理によっては、さびや色の変化が起こります。木や樹脂も、紫外線、湿気、寒暖差などの影響を受けます。
これに対して、適切に焼成されたセラミックスは、雨や塩分、気温の変化などに耐えやすく、外観を長く保つ素材として利用できます。
ただし、「焼き物だから絶対に壊れない」という意味ではありません。強くぶつけたり、硬い物でたたいたりすれば、欠けたり割れたりする可能性があります。
個人的には、ここがいちばん大事だと感じます。セラミックスの強みは何をしても壊れないことではなく、正しく設置した状態で、天候による劣化を抑えやすいことです。
警察の紋章は桜の形をした「旭日章」
警察の建物や帽子などで見かける紋章は、一般に旭日章と呼ばれています。
中央から光が広がるような形と、花びらを思わせる複雑な輪郭が特徴です。遠くから見ると整った金色のマークですが、立体物として作る場合は、細かな凹凸や角度を正確に整えなければなりません。
左右や上下のバランスが少し違うだけでも、正面から見たときにゆがんでいるように感じられます。
また、陶磁器の原料は、乾燥や焼成によって縮みます。そのため、完成時の大きさをそのまま型にすればよいわけではありません。
どの程度縮むのかを計算し、完成寸法から逆算して原型や型を作る必要があります。大型になるほど、部分ごとの乾き方や温度差も管理しなければなりません。
たしかにこれは気になります。完成品だけを見ると均一な工業製品に見えますが、実際には素材の動きを読みながら形を整える、陶芸に近い感覚も求められます。
番組タイトルにある「高度な技と芸術センス」とは、単に手先が器用という意味ではありません。
設計図どおりの寸法に仕上げる技術と、光の当たり方まで考えて立体感を整える感覚の両方が必要なのです。
警察紋章が完成するまでの製造工程
警察紋章は、原料を型に入れて焼けばすぐ完成するものではありません。
製品の大きさや形、取り付け方法によって細部は異なりますが、セラミックス製の立体紋章は、おおむね次のような工程を経て作られます。
・原型や石膏型を準備する
・泥状に調整した原料を型へ流し込む
・型から外せる状態まで固める
・乾燥させる
・表面や輪郭を手作業で整える
・釉薬などを施して高温で焼成する
・金色にするための材料を塗布する
・再び焼成して仕上げる
型を使うと、どれも同じ形になるように思えます。しかし、型から出した時点では細かなつなぎ目や凹凸が残ることがあります。
そこで職人が表面を確認し、削ったり、埋めたりしながら形を整えます。特に、旭日章のように細かな線や立体的な花びらが並ぶ形は、均一に見せるための修正が欠かせません。
さらに難しいのが乾燥です。
表面だけが急に乾くと、内部との水分差によってひびや変形が起こる可能性があります。大型品では、場所によって厚みや乾き方も変わるため、急がず状態を見ながら進めなければなりません。
焼成では、非常に高い温度で素地を焼き締めます。温度が上がればよいという単純なものではなく、加熱する速さ、最高温度、冷ます速さまで管理する必要があります。
見た目の華やかさに目が向きがちですが、実際には金色にする前の乾燥と本体の焼成が、完成度を左右する重要な工程です。
金色の部分は塗装ではなく純金焼成で仕上げる
警察紋章の金色は、一般的な屋外用ペンキを塗っただけの仕上げではありません。
廣部硬器では、独自の純金焼成方法を使い、セラミックスの表面を金色に仕上げています。同社は、警察本部や東京消防庁指定の紋章を代表製品として挙げています。
純金焼成では、金を含んだ材料を表面に施し、再び窯で焼くことで金色を定着させます。
焼く前に金色の材料を均一に付けるだけでなく、焼成後にムラなく見える厚さや吹き付け方を考えなければなりません。
平らな板であれば比較的均一に塗りやすいものの、警察紋章には細かな溝や盛り上がりがあります。
吹き付ける角度や量がわずかに違うだけでも、奥まった部分と手前の部分で色の見え方が変わる可能性があります。
ここには、機械だけでは調整しにくい職人の感覚が生かされています。
金色の紋章は、近くで見るためだけのものではありません。建物の高い場所に設置され、離れた場所から見上げられることもあります。
そのため、すべてを平らにするのではなく、光を受けたときに形がはっきり見える立体感も重要です。
個人的には、金を使っていること以上に、屋外で見たときに最もきれいに見える形まで考えている点に職人仕事の奥深さを感じます。
金色が長期間保たれやすい理由
警察紋章が長く金色を保ちやすい理由は、本体のセラミックスと、焼成によって定着させる金色の仕上げを組み合わせているためです。
屋外に設置する製品では、次のような環境への対応が求められます。
・雨や湿気
・強い日差しや紫外線
・夏と冬の温度差
・雪や凍結
・海に近い地域の塩分
・排気ガスや空気中の汚れ
表面だけを一般的な塗料で仕上げた場合、時間の経過とともに退色、はがれ、ひび割れなどが起こることがあります。
一方、セラミックス本体はさびず、金色の部分も焼成によって仕上げられます。これにより、屋外でも外観を維持しやすくなります。
もちろん、設置された環境や経過年数によって汚れ方は異なります。
交通量が多い場所、海に近い場所、鳥のふんや落ち葉が付きやすい場所などでは、表面に汚れが付着することもあります。
そのため、「色あせにくい」と「手入れが一切いらない」は同じではありません。
建物の管理者が交換や清掃を検討するときは、色だけでなく、ひび、欠け、固定金具の状態も確認する必要があります。
実際に選ぶなら、素材の耐久性だけでなく、設置方法と点検のしやすさまで確認したいところです。
警察以外に消防紋章や校章も作っている
廣部硬器の技術は、警察紋章だけに使われているわけではありません。
消防紋章、消防団のマーク、学校の校章、シンボルマーク、校名文字、家紋、寺紋、陶板、レリーフなどにも活用されています。
これらに共通するのは、建物の外側に長期間設置される可能性があることです。
学校の校章や寺院の紋は、建物を象徴する大切な印です。簡単に交換するものではないため、流行に左右されない見た目と、長く使える耐久性が求められます。
また、昔から残っている紋や文字では、元の図案が紙に描かれているだけだったり、古い現物を参考に再現したりする場合も考えられます。
平面の図案を立体物にするときは、線をどの程度盛り上げるか、縁をどの角度にするかによって印象が変わります。
ここで必要になるのが、単なる複製ではない立体造形のセンスです。
機械で正確に削る技術が進んでも、建物の大きさや設置位置に合う見え方を判断するには、人の目が欠かせません。
警察紋章の製造で蓄積された経験が、学校、消防、寺院など、全国のさまざまな建物に生かされていることがわかります。
警察紋章は個人でも購入できる?
廣部硬器では、個人からの購入相談も受け付けています。
ただし、警察や消防の紋章を、個人住宅や店舗の屋外壁面、玄関などに飾ることは控えるよう案内されています。
警察署や消防署と間違われるような場所に掲示すると、訪れた人を混乱させる可能性があるためです。
購入できることと、好きな場所に自由に掲示できることは別に考える必要があります。
室内での展示や収集目的など、具体的な用途がある場合も、注文前に設置場所や使用方法を伝えて確認した方が安心です。
価格については、公式サイトに一律の金額は掲載されていません。
製品の種類、大きさ、色、数量、取り付け方法、型の有無などによって条件が変わるため、個別の見積もりが必要です。
特に確認したいのは、次の項目です。
・希望する紋章の種類
・完成時の縦横サイズ
・屋内用か屋外用か
・壁面への取り付け方法
・既存の型が使えるか
・必要な数量
・希望する納期
大型の焼き物は、注文を受けてすぐに発送できる既製品とは違います。
原型や型から新しく作る場合は、成形、乾燥、修正、複数回の焼成に時間がかかります。家紋や寺紋では、型から製作する場合の目安として最短約1.5か月、大きな製品では半年以上かかる場合があると案内されています。警察紋章についても、具体的な納期は注文内容ごとの確認が必要です。
急いで必要になってから相談するのではなく、設置予定日から余裕を持って問い合わせることが大切です。
工場見学や製品を確認したいときの注意点
廣部硬器の本社は、福井県福井市深谷町にあります。
ただし、製造工場は一般の観光施設とは異なります。営業時間内であっても、予約なしで自由に製造現場へ入れるとは限りません。
見学や訪問を希望する場合は、事前に次の点を確認してください。
・一般向けの工場見学を受け付けているか
・見学できる日時
・人数制限の有無
・写真や動画を撮影できるか
・子どもの参加条件
・駐車場や公共交通機関での行き方
・製造工程を実際に見られるか
工場では大型製品を運んだり、高温になる窯を使用したりします。安全管理や製品情報の保護などから、見学できる場所が限られる可能性があります。
テレビで紹介された直後は、問い合わせが増えることも考えられます。突然訪問するのではなく、公式サイトの最新案内を確認し、電話やメールで相談するのが確実です。
会社の製品に興味を持った場合は、警察紋章だけでなく、校章、家紋、寺紋、表札やタイルなど、一般の生活に近いセラミックス製品にも目を向けてみると、技術の使われ方を理解しやすくなります。
廣部硬器の警察紋章からわかる日本のものづくり
警察署の前を通っても、紋章の材質や作り方まで考える機会はほとんどありません。
しかし、金色の紋章には、型作り、成形、乾燥、修正、焼成、金色の仕上げ、検品といった多くの工程があります。
さらに、設計図どおりに作る正確さだけでなく、離れた場所から見たときのバランスや光の反射まで考える必要があります。
廣部硬器が手がける警察紋章は、工業製品の精度と焼き物の手仕事が組み合わされた製品です。
焼き物と聞くと、茶わんや皿を思い浮かべがちです。ところが、素材の特性を生かせば、建物の象徴となる大型の紋章にも使えます。
決まった形を繰り返し作るだけではなく、警察、消防、学校、寺院など、それぞれの注文に合わせて形や大きさを調整する点にも価値があります。
個人的には、普段何気なく見ていた警察紋章が、福井の職人によって1つずつ整えられていると知るだけでも、建物の見え方が少し変わるように感じます。
次に警察署や消防署の前を通ったときは、紋章の立体感、金色の光り方、建物との大きさのバランスにも注目してみてください。
参考リンク
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