具志堅用高と沖縄一族の壮絶な歴史をたどる
2025年5月16日(金)22:30〜NHK総合で放送される『時をかけるテレビ』では、池上彰さんが案内役を務めるなか、1979年放送のNHK特集『わが沖縄―具志堅用高とその一族―』を取り上げます。今回のテーマは、沖縄の誇りでもあるボクシング界の英雄・具志堅用高さんとその家族の物語。具志堅さん本人もスタジオに登場する特別回で、歴史の中を生き抜いた一族の歩みを通して、沖縄の過去と現在、そして未来へのメッセージが描かれる内容となりそうです。
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
沖縄出身の世界チャンピオン・具志堅用高の生い立ち
具志堅用高さんは、沖縄県出身として初めてボクシング世界チャンピオンになった人物です。1976年にWBA世界ライトフライ級王座を獲得し、その後13度の防衛に成功。1970年代から1980年代にかけての日本ボクシング界を代表する存在となり、国民的人気を誇るアスリートとして活躍しました。その明るく親しみやすいキャラクターとともに、今もなお多くの人々の記憶に残り続けています。
しかし、具志堅さんの成功の裏には、沖縄の歴史と一族の波乱に満ちた歩みが深く関わっていました。具志堅さんの家系は、かつて琉球王朝に仕えていた由緒ある家柄であり、祖先は王府の役人として仕えていたとされています。ところが、明治政府による「琉球処分」により、状況は大きく変化します。
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1879年、明治政府は琉球王国を廃止し、沖縄県として編入(廃藩置県)
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王朝に仕えていた士族たちは職を失い、「没落士族」として生活が困窮
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具志堅家も例外ではなく、那覇から離島や農村部へと一族は散り散りに
こうした政治的な変化は、一族の暮らしを大きく揺さぶりました。士族であった誇りを保ちながらも、現実的には出稼ぎや農作業で生活を支えなければならない日々が続きます。
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一族の多くは本土への出稼ぎや沖縄本島内での移住を経験
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戦時中には沖縄戦による被害や避難生活を余儀なくされた
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終戦後は米軍統治下での再出発を図るも、貧困と混乱の中での暮らし
そうした中で育った具志堅さんは、那覇市で生まれ、沖縄水産高校に進学しボクシングを始めました。沖縄の厳しい社会状況のなかで、彼は次第に頭角を現し、全日本高校選手権を制した後にプロへ転向します。
具志堅さんの勝利は、単なるスポーツの成果ではなく、沖縄の人々の誇りを取り戻す象徴となりました。彼の背後には、琉球から続く歴史を受け継ぎながらも時代の荒波を生き抜いた一族の姿があり、その存在が彼の強さと支えの根源であったことは間違いありません。沖縄の地に根差したその物語は、一人のボクサーの生い立ちを超え、沖縄という地域そのものの歩みを語る一章として、多くの人の心に深く刻まれています。
「わが沖縄―具志堅用高とその一族―」の内容
1979年にNHKが放送したドキュメンタリー番組『わが沖縄―具志堅用高とその一族―』は、具志堅用高さんが9度目の世界タイトル防衛に挑む姿と、その背景にある一族の壮絶な歴史を描いた貴重な記録映像です。ただのスポーツ番組ではなく、沖縄の歴史を個人と家族の視点から浮き彫りにした作品として高い評価を受けました。
番組では、具志堅さんの挑戦を中心に、彼を支える家族とその祖先たちの足跡が丹念に追われています。構成の背景には、明治以降の激動の時代を生き抜いた沖縄の人々の姿がしっかりと描かれています。
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1879年、琉球王国が廃止され、沖縄県として編入される(琉球処分)
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それにより、具志堅一族も含む多くの士族が生活の基盤を失い、没落
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生計を立てるため、一族の多くが本土へ出稼ぎ労働に赴く
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1945年の沖縄戦では、住居を失い、疎開や避難生活を余儀なくされる
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終戦後は米軍の占領統治下で再出発を図り、生活の再建に奮闘
こうした歴史的な背景のなかでも、具志堅家は家族の絆を守りながら生きてきました。そして1970年代、具志堅用高さんがプロボクサーとして世界の舞台に立ち、9度目の防衛戦に挑む姿は、ただの勝負を超えて「沖縄の誇り」を背負った戦いとして描かれます。
彼の試合を前にして、家族や親戚、地元の住民たちが心を一つにして祈る様子が記録されています。応援には単なる勝利への期待だけでなく、「自分たちの歩み」や「沖縄の魂」を重ねるような思いがありました。
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具志堅さんの勝利が沖縄の人々にとっての希望であったこと
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彼の活躍が郷土への誇りやアイデンティティの回復に繋がったこと
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敗戦と占領を経験した世代の記憶を越え、次世代に勇気を与える存在だったこと
番組全体を通して伝わってくるのは、個人の成功は決して一人で築けるものではなく、一族の歴史と地域の支えがあってこそという強いメッセージです。この作品は、具志堅用高という一人の偉大なスポーツマンを通して、沖縄の近代史を家族の物語として描いた稀有なドキュメンタリーとして、今なお多くの人の心に残っています。
今回の放送では何が描かれるか?
今回の『時をかけるテレビ』では、この1979年の貴重な番組映像を紐解きながら、池上彰さんがその背景にある歴史や社会的意味を解説します。そして、スタジオには具志堅用高さん本人が登場。今あらためて当時を振り返り、当時語られなかった思いや、現在の沖縄についての考えも聞ける内容になると期待されます。
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なぜ具志堅一族は没落し、それでも希望をつなげたのか
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戦争と占領の記憶が今にどう影響しているのか
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沖縄の誇りを背負って戦った具志堅さんの思いとは
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1979年当時と2025年現在の沖縄をどう見るか
こうした視点から、「過去から未来へ受け継ぐべき沖縄の姿」が描かれる予定です。
戦後80年を迎える沖縄に向けて
2025年は、沖縄戦終結から80年の節目の年でもあります。このタイミングで具志堅用高さんとその一族の軌跡を再び取り上げる意義は非常に大きく、一族の苦労と連帯の歴史を通じて、沖縄が歩んできた複雑で壮絶な道のりをあらためて知るきっかけになります。
この番組は、沖縄にルーツがある人だけでなく、全国の視聴者にとっても「地域の歴史を個人の人生から学ぶ」良い機会となることでしょう。
放送日時:2025年5月16日(金)22:30~23:30
放送局:NHK総合
出演者:池上彰、具志堅用高
紹介番組:1979年放送「わが沖縄―具志堅用高とその一族―」
放送後、詳しい内容が分かり次第、最新の情報を更新します。
内容が実際と異なる場合があります。ご了承ください。
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