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NHK【ドキュメント72時間】のぞき坂の人間ドラマに密着|東京・豊島区の急坂で出会う春の始まりと3日間の物語|2025年5月23日放送

ドキュメント72時間

のぞき坂に生きる人々の春

東京都豊島区にある“のぞき坂”。見上げるとまるで壁のような、そして見下ろすと吸い込まれそうな急勾配の坂道が舞台になります。5月23日放送の『ドキュメント72時間』では、この“のぞき坂”で、春の3日間を懸命に生きる人々の姿が描かれました。新年度が始まる4月、桜が舞うこの坂を行き交うさまざまな人たちに密着し、日常の中にある小さなドラマを見つめます。

のぞき坂とはどんな坂?

のぞき坂は、東京都豊島区高田2丁目にある非常に急な坂道で、最大勾配は13度、傾斜率で約23%という、東京23区内でも屈指の急勾配を誇る坂です。自動車が通行可能な坂としては都内でも特に珍しい存在で、まるでジェットコースターのような傾斜が印象的です。

名前の由来は、坂の上から下を「のぞき込まないと見えない」ほど急な斜面であることから、「のぞき坂」と呼ばれるようになりました。坂の下から見上げると、まるで垂直の壁のように感じられる迫力があり、上から見下ろせば、まっすぐ下へ吸い込まれるような感覚になるため、初めて訪れる人はその急さに驚きます。

この坂があるのは、関口台地から神田川沿いの低地へと続く地形の変化の途中に位置しており、自然の地形がそのまま生かされた坂道です。舗装はコンクリートで整えられており、表面にはドーナツ型の滑り止めのくぼみが等間隔に配置されていて、歩行者が安全に登り降りできるよう配慮されています。

実際に坂を歩いてみると、その設計に多くの工夫があることがわかります。

  • 歩道が車道とは分離されており、細いながらも安全に歩ける構造

  • 途中に数段の段差や休憩スペースが設けられていて、上り切るのがきつい人も少し息を整えることができる

  • 周囲には住宅が並び、生活道として使われている様子がうかがえる

  • 電柱や電線が密集している風景も独特の雰囲気を醸し出しており、都市の中にありながらどこか懐かしい印象を与える

この坂は日常的に使われているだけでなく、アニメの舞台にも登場したことから“聖地巡礼”の場所としても知られています。春には桜が咲き、自然と都市風景が調和した美しい眺めを楽しむこともできます。

のぞき坂はただの坂ではなく、生活の一部であり、文化や景観の一部として愛されている存在です。歩くだけで、坂の持つ歴史や地形、日常の空気感まで感じ取ることができる、東京の中でも特別な坂道のひとつといえます。

3日間にわたるのぞき坂の記録

番組の取材は4月9日午前10時に始まりました。東京都豊島区の「のぞき坂」は、大正時代に整備された由緒ある坂道で、今では地元の小学生が通学に使う日常の道として活用されています。取材初日は、日常生活の一部として坂を利用する住民の姿が目立ちました。

18時38分、坂を走っていたのは小学校教師の男性。日課のように坂を駆け上がっていた姿が印象的でした。
深夜0時過ぎには国家公務員の男性が登場。仕事を終えた静かな時間帯に、疲れた体を引きずるように坂を上っていく様子が静寂のなかに浮かび上がりました。

翌10日の早朝5時には、活動的な人々が次々と現れました。プログラマーの男性は、坂を自転車で登ることが日課で、トレーニングの一環として利用していることが明かされました。また、中国出身の男性は、アニメ「冴えない彼女の育てかた」の聖地巡礼として坂を訪れ、感慨深そうに写真を撮っていました。

午前11時には、坂を力強く走るキックボクサーの男性の姿が映りました。試合前の調整として坂を活用しているとのことです。
・同時刻、スーツ姿の会社経営者の男性が、ゆっくりと坂を登っていました。心筋梗塞を2度経験しており、健康のバロメーターとして坂を意識的に登っていると語っていました。
・さらに、サバイバルゲームが趣味の女性も登場し、のぞき坂を生活の中で楽しんでいる姿が描かれました。

11日の午前6時には、通勤や通学に向かう人々が映され、朝の坂道が活気に満ちている様子が伝えられました。この中で特に印象的だったのは、舞台「千と千尋の神隠し」を中国で上演する女性の存在です。彼女は、のぞき坂の起伏ある地形に人生を重ね、平坦ではない道こそが価値あるものだと語っていました。

夕方18時52分には、雨の中を走る小学校教師の男性が再び登場。雨に濡れながらも迷いなく坂を駆け抜ける姿に、日常の強さがにじんでいました。
夜22時には、44歳で初めて正規の高校教師になった女性が登場。亡き母との約束を胸に教師になった彼女は、坂道を一歩ずつ踏みしめながら、人生の歩みを重ねているように見えました。

最終日の12日午前5時、坂には写真撮影のために訪れた観光客の姿もありました。番組スタッフが、通りかかった女性から撮影を頼まれる場面があり、この場所が地域の中で人と人との出会いを生む場でもあることが伝わりました。

のぞき坂は、ただの急な坂道ではありません。そこを歩く人々の暮らしや背景、思いが交差する場所であり、ひとりひとりの物語が刻まれています。
・登っていく人
・走って下る人
・カメラを構える人
・静かに立ち止まる人
時間帯によってその表情は変わり、朝は希望、昼は活動、夜は癒やしと、それぞれの風景が坂道を彩っていました。

「ドキュメント72時間」は、そんな日常の断片を丁寧にすくい取り、坂を舞台にした人間模様を映し出しました。何気ない場所にこそドラマがある。その気づきが、視聴者の胸にも静かに届いたことでしょう。

歴史ある石畳と現代の暮らしが交差するのぞき坂。坂道に刻まれた一歩一歩が、登る人の背中をそっと押してくれるような場所でした。放送を見て、実際に訪れてみたいと思う人が増えるのも当然かもしれません。この坂を登ったとき、きっと誰かの物語を追体験することになるでしょう。

アクセスと注意点

のぞき坂へは、東京メトロ副都心線「雑司が谷駅」から徒歩3分ほどで到着します。また、都電荒川線「学習院下停留場」や「鬼子母神前停留場」からも近く、アクセスのしやすさも魅力です。

ただし、坂の勾配は非常に急なため、特に雨の日や雪の日には注意が必要です。滑りにくい靴で訪れることをおすすめします。また、日中でも坂の途中は交通量があるため、写真撮影などをする場合は、安全を十分に確保してください。

まとめ:小さな坂に大きな人生がつまっている

のぞき坂は、一見すればただの急坂に見えるかもしれません。しかし、その道を通る人にはそれぞれの生活、歴史、そして日々の想いが詰まっています。番組を通じて、その姿が静かに、そして丁寧に描かれていくことでしょう。

都市のなかに残る、ささやかだけれども確かな“物語の舞台”としてのぞき坂が再び注目されるきっかけになるかもしれません。

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