八王子スーパー強盗殺人事件、30年目の真実に迫る【未解決事件 File.01(後編)】
あの日、何が起きたのか――。1995年7月30日夜、東京都八王子市のスーパーで3人の女性が命を奪われた『スーパー ナンペイ大和田店強盗殺人事件』。
この事件は、日本の「安全神話」を根底から揺るがせた未解決事件として、今もなお語り継がれています。
2025年10月11日放送の『未解決事件 File.01(後編)』では、カナダと中国を巻き込む国際捜査の裏側、そして30年目の新証言が描かれます。
この記事では、放送前の時点でわかっている情報をもとに、事件の全貌と社会に残した爪痕を整理し、「なぜこの事件が今も注目されるのか」を探ります。放送後には新情報を追記予定です。
【未解決事件 [新]File.01(前編)】八王子スーパー強盗殺人事件 ナンペイ大和田店“金庫の謎”と新証言に迫る|2025年10月4日
事件の概要と社会への衝撃
1995年7月30日午後9時15分ごろ、スーパー ナンペイ大和田店の2階事務所で、閉店作業をしていた女性3人が何者かに銃撃され死亡しました。
犠牲者は、稲垣則子さん(47歳)、矢吹恵さん(17歳)、前田寛美さん(16歳)。
稲垣さんはパート従業員として勤務、2人の高校生はアルバイトとしてレジ業務などを担当していました。
彼女たちは至近距離から頭部を撃たれており、即死状態。現場には複数の薬きょうが落ちていたものの、指紋や犯人特定につながる物証は見つかりませんでした。
さらに不可解だったのは、金品が一切奪われていなかったこと。
現場の金庫には約40万円が残され、荒らされた形跡もない。つまり「強盗」を装いながら、実際には目的が別にあった可能性が高かったのです。
この“動機の不明瞭さ”が、事件をより深い闇に引きずり込みました。
警視庁は当初から延べ10万人を超える大規模捜査を展開しましたが、確定的な証拠はつかめず、犯人像も絞り込めないまま時間だけが過ぎていきました。
その後、2009年に殺人罪の時効が撤廃されたことで、法的には今も捜査が継続中。しかし、真相は見えないままです。
この事件が社会に与えた衝撃は計り知れません。
当時の日本は「安全で平和な国」と信じられており、銃による殺人事件は極めて稀でした。
“普通の女性たち”が働く場所で突然命を奪われた――この事実が、人々に深い不安と恐怖を植え付けたのです。
マスコミは連日トップニュースとして報じ、地域ではスーパーの閉店時間が早まるなど、生活にも影響を及ぼしました。
後編で焦点となる“カナダと中国”の線
後編で中心となるのは、事件が国際的な捜査線へと広がった経緯です。
事件発生から10年以上経った頃、中国・大連の刑務所に収監されていた日本人死刑囚が、取調べの中でこう語ったといいます。
「八王子の事件のことを知っている」――。
この一言から、捜査は新たな展開を迎えました。
情報源の信ぴょう性を確認するため、日本の警察はカナダ当局と連携し、国際的な協力体制を構築。
その背景には、トロント在住の中国人男性が「実行犯を知っている」と供述したことがあり、日加両国の警察当局が慎重に接触を進めていました。
しかし、捜査は想像以上に複雑なものでした。
海外にいる被疑者を日本で取り調べるには、身柄引き渡し条約や外交上の手続きが必要です。
カナダの裁判所は一度、男性の引き渡しを認めましたが、被疑者側の控訴により手続きが長期化。
その間にも、証言の信頼性や事件との関連をめぐって捜査の方向性は二転三転しました。
一方で、中国国内の関係者にも接触が図られ、現地公安当局との情報交換も進められたといいます。
しかし、国ごとに異なる司法制度の壁や、外交上の配慮が絡み合い、真相に迫るまでには至りませんでした。
この“カナダと中国を結ぶ線”は、捜査の新たな希望であると同時に、国際捜査の限界を突きつける象徴でもありました。
世界がつながる時代だからこそ、犯罪もまた国境を越える。
その中で「正義」をどう実現するのかという問いが、事件の背景に深く横たわっているのです。
被害者と遺族が歩んだ30年
この事件を忘れさせなかったのは、被害者の家族や仲間たちの存在でした。
特に高校生だった矢吹恵さんと前田寛美さんの家族は、「娘たちの無念を晴らしたい」という思いで30年間を生きてきました。
矢吹さんの両親は、事件後も欠かさず命日の7月30日に現場を訪れ、花を手向けています。
2009年、殺人罪の時効廃止が実現した際には、「娘たちの死が無駄にならなかった」と涙ながらに語りました。
また、桜美林高校では同級生や教員有志が「銃器根絶を考える会」を立ち上げ、文化祭で銃犯罪の展示や追悼礼拝を実施。
高校生2人の存在を通して、「命の尊さを伝え続ける」活動が今も続いています。
一方、社会全体では風化との闘いが続いています。
時の経過とともに、事件を知らない世代が増え、報道も減少。
それでも、遺族たちは「誰かが見てくれている限り、事件は終わらない」と信じ、警察への情報提供を呼びかけています。
30年という歳月は、悲しみを癒すには短く、真実を待つには長い時間です。
それでも、彼女たちの存在を忘れずに語り続けることが、今を生きる私たちの責任なのかもしれません。
新証言とその意味(放送後追記予定)
今回の後編では、取材班がついにたどり着いた「30年目の新証言」が紹介されるといいます。
それが誰の口から語られるのか、どんな事実を裏付けるのかは、放送当日まで明かされていません。
ただひとつ確かなのは、NHKの『未解決事件』シリーズが常に“事実と記録”を重視し、警察の資料・関係者の証言・現場映像をもとに構成されているということです。
放送後には、その証言の意味と社会への影響を追記し、事件が私たちに問い続ける「正義とは何か」を掘り下げていく予定です。
事件が問いかけるもの
この事件は単なる犯罪ではありません。
「なぜ、日常の中で人が命を奪われたのか」
「なぜ、真相が30年経ってもわからないのか」
これらの問いは、私たち自身の社会の在り方を映し出す鏡です。
事件を風化させないこと、それは“犯人を捕まえる”だけでなく、“命の意味を考え続ける”ということ。
未解決事件を記録する番組は、失われた命の重みを社会が再び見つめ直すきっかけを与えてくれます。
そして、正義を求める声がある限り、この事件は「終わらない物語」として生き続けるのです。
まとめ
この記事のポイントは以下の3つです。
・1995年の『八王子スーパー強盗殺人事件』は、金品も奪われない異例の未解決事件。
・後編では、カナダ・中国をまたぐ国際捜査と新証言が明らかになる予定。
・遺族たちの30年の歩みが、正義と記憶を守る社会の姿勢を問いかけている。
30年という長い時間の中で、人々の記憶は薄れても、真実を求める意志は消えていません。
『未解決事件 File.01(後編)』は、過去と現在、そして未来をつなぐ“記憶のリレー”として、私たちに問いを投げかけます。
出典:NHK総合『未解決事件 File.01(後編)八王子スーパー強盗殺人事件』(2025年10月11日放送予定)
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/NX9R73Q4V3/
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