都会に森!?福岡の“生きもの調査隊”が見つけた奇跡
「都会の真ん中に、まるで森みたいなビルがある」——そんな話を聞いたら、信じられますか?
今回の『ダーウィンが来た!』(2025年11月2日放送)は、九州初上陸スペシャルとして福岡の生きもの調査隊が登場しました。舞台は、ビル街のど真ん中にそびえるアクロス福岡。その屋上から地上にかけて広がる“アクロス山”で、思いがけない生態系が息づいているのです。さらに、博多湾に注ぐ多々良川では、世界でわずか7000羽ほどしかいないクロツラヘラサギの群れを発見。
この記事では、番組で紹介されたエピソードを詳しくたどりながら、「人と自然の共生」というテーマをじっくり掘り下げます。
アクロス山はどうやって“都会の森”になったのか
福岡の中心・天神に建つアクロス福岡。外壁を覆う緑は一見ただの装飾に見えますが、実はここに150種以上の植物が根付き、鳥や昆虫の暮らす“都市型の森”が広がっています。
建設当初、壁面に植えられたのはわずか76種類の苗木。しかし、あえて落ち葉や枝を片付けず、自然のサイクルを保つよう設計した結果、30年の時を経て本物の森に成長しました。地中にはミミズやダンゴムシが暮らし、上空ではオオルリやアオバトが飛び交う。まるで山奥の渓流沿いのような環境が、街のど真ん中に生まれたのです。
調査に参加したのは九州大学生物研究部と環境調査の専門家たち。彼らは夜明け前からビルを登り、生息する鳥や虫を丁寧に観察。地面の土や落ち葉を手に取り、「この土はすでに自然林の状態に近い」と驚きの声を上げていました。
猛禽類の“狩り場”に変わったアクロス山
アクロス山の頂上付近では、驚くべき発見もありました。地面に散らばる羽毛。これはオオタカやハイタカなどの猛禽類が獲物を捕らえた証拠。都会の中で彼らが狩りをしていることを示しています。
猛禽類は獲物の羽を抜いてから食べるため、現場には羽が散乱するのです。専門家は「この場所が完全に自然の連鎖の一部になっている」と分析。人工の森が、命の循環を取り戻していることがわかりました。
さらに、アクロス山には人工の水場が点在し、そこではキジバトやシロハラが水を飲む姿も。建物全体が生きものたちの“シェアハウス”のようになっているのです。
設計を手がけた竹中工務店によると、この森は当初から「年月を経て自然と変化していく」ことを目的に作られました。結果、都市の中で気温を下げる効果も確認され、猛暑対策のモデルケースとしても注目されています。
絶滅危惧種クロツラヘラサギがやってくる福岡の河口
福岡市の東部を流れる多々良川の河口部では、さらに貴重な出会いがありました。そこに現れたのは、世界中で約7000羽しか確認されていないクロツラヘラサギ。
しゃもじのような平たい嘴を左右に振りながら、水中の小魚やエビを探す姿はユーモラス。嘴がうっすら赤いのは、まだ幼い個体の証拠です。
彼らは夏に朝鮮半島で繁殖し、冬になると日本や中国、台湾へ渡る渡り鳥。福岡にはそのうち約150羽が飛来します。日本でこれだけの数が観察できる場所は数少なく、貴重な冬の風物詩となっています。
クロツラヘラサギが福岡に集まる理由の一つが、この多々良川の「汽水域」。海水と淡水が混ざるこの環境は、プランクトンや小魚が豊富で、彼らの餌場として理想的なのです。地域では地元住民や小学生たちが観察会を開き、野鳥保護の活動も広がっています。
福岡が見せる“共生”という未来のヒント
福岡の事例は、日本の都市がこれから進むべき方向を示しています。
ビルを“緑化”するだけでなく、生きもののために設計する。
地面の落ち葉を“ゴミ”ではなく“資源”として扱う。
人が自然を制御するのではなく、“共に生きる仕組み”をつくる。
アクロス福岡や多々良川の取り組みは、その理想の形を体現しています。
番組では、調査隊の若者たちが「人が手を加えても、こんなに豊かな自然が戻るんだ」と感動していました。その表情からは、都市と自然の未来が交差する希望が感じられました。
まとめ:都市の中に“もう一つの自然”を見つけよう
この記事のポイントを整理します。
・アクロス福岡の“アクロス山”は、30年で本物の森に成長し、150種以上の植物が生息
・オオタカやオオルリなど野鳥が住み着き、命の連鎖が成立
・多々良川では絶滅危惧種クロツラヘラサギが150羽飛来し、人と自然の共存が進む
都市の中で自然が息づく――それは特別な奇跡ではなく、人の工夫と時間の積み重ねで生まれるもの。
もし福岡を訪れる機会があれば、ぜひアクロス山の緑や多々良川の河口を歩いてみてください。
ビル風の中で鳥の声を聞いた瞬間、きっとあなたも感じるはずです。
“自然は、ここにも生きている”と。
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